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第十三節 修学旅行、その2

「うオ――‼」


クロールで力強く泳ぐ逃隠。




「佐藤……モブ太……君?」


主人公が呟く。


「そう。キミの事をボクが知っているのは、ボクが2年の全クラスの名前と顔を、一致させるまでに覚えているからなんだ」


佐藤はそう話す。


「へぇ……凄いね」


少し焦る主人公。


「引いたかい? 引くよね? フツー。でもこれはボクの趣味なんだ。気にしないでくれたまえ」


佐藤は淡々と言う。


「はは、じゃあ、気にしないよ」


主人公は頭を掻きながら答えた。




「うおっ! 何だありゃ」


「で……でけぇ」




ビーチがざわつき始める。


「ん?」


主人公は騒がしくなってきた方向を見てみる。






「どどーん」






そこには、巨大な胸が。


「あれは……バレーボール……?」


主人公は錯乱する。


「おいおい、何を言っているんだよ、ツトム君。気を確かに。アレは人のものだよ。中学生らしからぬ巨乳を持った生徒が、この学校にも居たんだ」


佐藤は説明を始める。


「巨房キョホウミノリ……2年3組在中。身長158sm。スリーサイズ、上から87、58、86のEカップ。他の生徒の大概がキャミソール型の水着に対し、彼女だけ派手な黄色のビキニ。恐らく、サイズが合わなかったのであろう。やむなく、大人と同じデザインのモノを着るコトになったと推測される」


「く……詳しいんだね……」


ドン引きする主人公。


「まぁね。この瞬間こそが、今回の旅行の全て。ボクが待ち望んだモノ……」


そう言ってカバンから何か取り出す佐藤。高価そうな一眼レフだった。


「! それは……!」


驚愕する主人公。


「ん? これかい? カメラだよ、カ、メ、ラ。このシャッターチャンスを逃す手は無い……」




「パシャッ! パシャッ! パシャッ!」




盗撮を開始する佐藤。


(! 何やってるんだ⁉ このヒト!)


更に驚愕する主人公。今まで会った事の無い人種に、完全に困惑している。


「じゃっ、じゃあ僕は泳ぎたいからこの辺でさよならするよ……じゃあね!」


一言言って走り去る主人公。


(関わってはいけない。関わってはいけない。関わってはいけない)


数メートル離れてから振り向く主人公。佐藤は未だに撮影をしていた。


「ふぅ――」


ため息をつく主人公。ふと、巨房の方へ目が行く。


(で……でっかい……でも、尾坦子さんよりは……)


尾坦子の水着姿を想像する主人公。顔がにやける。すると、


「うっ」


下半身に違和感が……。


「や、ヤバい……クールダウン、クールダウンっと」


海に浸かる主人公。






――数10分後。


「うオ――‼」


クロールで力強く泳ぐ逃隠。主人公は座って海を眺めていた。




「よう、泳がないのか?」




友出の声が。振り返る主人公。


「コガレ君……ちょっと、海を見ていたいなって思って……」


「そっか……」


友出も、主人公の横に座る。


「いいもんだな……海が綺麗で、平和で……」


友出がそっと呟く。


「うん……でも、さっき他のクラスの人が言ってたんだ」


「何だ?」


主人公は話を始める。


「海が透き通って見えるのは、サンゴ礁等の自然が少なくなっている証拠なんだって。それで、自然が破壊されて、汚れでもしたら、ゾムビー達が出て来ちゃうんじゃないかって思うと……」


「……例の、あの化け物の事か?」


暫く主人公を見つめた、友出が言った。


「うん。あの化け物達は、湿った場所もなんだけど、汚れた場所も好むんだ。だから、倒す事に集中するだけじゃなくて、自然を守る事にも力を注がないといけないなって、そう思うんだ……」


主人公はそう返す。友出はふーっと息を吐いて、顔を上に上げてから言った。


「大変なんだな、色々と。……俺は自然とか、嫌いじゃねぇから……環境保護とか、協力してやってもいいぜ。募金とかくらいだけど」


「!」


少し驚く主人公。


「うん! ありがとう!」


微笑んで、元気よく言った。




「うオ――‼」


逃隠は、クロールで力強く泳ぐ。








――数時間後、在日アメリカ空軍基地近辺にて。主人公のクラス、4組の担任が話す。


「海で泳いで疲れているだろーが、修学旅行って名目だ、勉強もしなけりゃーな。ここで戦闘機の凄まじさを学んでもらうぞー」


逃隠が愚痴をこぼす。


「ケッ! 誰ダ? こんな日程組んだ奴ハ⁉ あんなに泳いだ後ダ! 疲れるに決まってるだろうガ。こんなモノ! こんなモノ!」


旅のしおりを何重にも破って微塵にする。


「まぁまぁ……(確かにちょっと疲れる日程組んでるなぁ、誰が考えたんだろう?)」


主人公は逃隠をなだめつつも、疑問に思う。






「ゴゴォオオオオオオオオオオオ‼‼‼」






爆音を鳴らしながら戦闘機が飛び立った。


「うひャー! びっくりさせるナー。せんセー、こんな音を聞いテ、何の勉強になるんですカー?」


逃隠が問う。


「んー? そうだなー、戦闘機はおっかないってコトを直に感じる勉強だ―」


担任は耳を塞ぎながら言った。


「説得力ねーんだヨー。エセ教師ィー」


「んー? 聞こえてるぞー、サケル?」




「ははははは」




逃隠と担任の会話を聞き、笑いだす2年4組。担任が話し出す。


「そうそう。ここは空軍だから、あんまり関係ないかもしれないが、在日米陸軍は、最近だとー、ゾムビーが発生した時に出動する事だってあるんだぞー」


主人公はハッとする。


(知らなかった……米軍も同じようにゾムビーを……でも、狩人だって、言わば軍隊。米軍も軍隊。米軍は歴史的背景から言って、人を殺していた事もあるけど、狩人だってゾムビーが対象なだけであって、同じように何かを殺す団体なんだよな……米軍も狩人も、戦争を起こすか起こさないかだけの違いで殆ど似たような部隊なのかも知れない……)


少し自分のやってきた事に、疑問を持ち始める主人公であった。






――夕方、旅館駐車場にて。


「はーい、注目。今日の日程はこんなところで終わりだ。各自、荷物をまとめて、自分の部屋に泊まるよーに! 部屋を散らかすなよー」


担任がメガホンで言う。


「よう、ツトム。一緒の部屋だな」


友出が主人公に話し掛ける。


「コガレ君!」


主人公はパァッと明るくなる。






――夜、主人公が泊まっている部屋。電気が消え、主人公、友出、生徒A、生徒Bが布団に入っている。


(寝れない……何故だろう……興奮しているわけでもないのに……)


中々寝付けない主人公。そこへ、




「ツトム、起きてるか?」




友出が話し掛けてきた。


「コガレ……君?」


答える主人公。


「寝付けねぇよな……トランプ、やろうぜ!」


「おっ、いいねぇ」


「やるか!」


友出の言葉に、生徒A、生徒Bもノッてきた。


「……うん!」


主人公も答える。






――4人は夜遅くまでトランプをして遊んだ。



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