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第一節 兆し

「えー、4X+Y=3とありますが、こちらの式に先程出したXの値を代入し……」




平々凡々中学、主人公と逃隠の教室の授業風景である。数学の授業。主人公は真面目に教師の言葉に耳を傾けている。その後ろの席、逃隠はがっつりと教科書を盾にするように熟睡している。


(なるほど、式を変形するのか……移項したり、式全体を四則演算……代入も間違えて入れないようにしないと……)


と、そこへ




「ブ――、ブ――、ブ――、」




「!」


「⁉」




主人公、逃隠の携帯が鳴る。ハッと気付く主人公。逃隠も目を覚ます。




「すみません!」




バッと手を上げる主人公。


「ん? 何だ、ツトム」


「ちょっと頭がボーっとして……風邪みたいなので早退します」


教師に嘘をつく主人公。


「あー、そうかそうか。しっかり休めよ」


すっかり騙される教師。


「失礼しまーす」


教室を出る主人公。




「ハイッ! ハイハイ!」




逃隠も手を上げる。


「何だ? サケル」


「俺モ体調が悪いんデ早退しまース」


あからさまにバレそうな嘘をつく逃隠。


「本当かぁー? サケル」




「あははははは!」




教室が少し賑やかになる。


「……まぁいい、信じてやる。気を付けて帰れよ」


「あざッス! 失礼しまッス!」


逃隠は教室を出る。


(……元気そうに見えるがなぁ……)


教師は少し疑問に思う。




 廊下を走る主人公。


「もしもし! ツトムです。今、教室を出ました。」


「ああ、ツトムか。ゾムビーが発生した。場所はY市T町2丁目の、とあるオフィス街だ。今、そちらへ車を向かわせている」


爆破からの、任務の電話だった。


「ハイ! 校門付近で待機します」


「ああ。じゃあ、また後でな」




「プー、プー、プー」




電話は切れた。




「ツトムゥ!」




後ろから逃隠が走ってきた。二人で階段を駆け下りる。


「ゾムビーが発生したのカ⁉」


「うん、T町のオフィス街でだって。移送用の車がこっちに来るから……」


走りながら会話を交わす逃隠と主人公。






――1時間後、T町2丁目、オフィス街にて。


「キキー……」


3台の車が道路の端に止まる。各車から、爆破、身体、逃隠、抜刀、狩人隊員、そして、主人公が姿を現す。


「この路地の奥、ゴミ箱が数個置いてある場所に発生したと、連絡があった。住民の避難は完了しているらしい。行くぞ!」


爆破が指示を出す。


「ラジャー!」


一同、応える。




「ザッ」


部隊が現場に到着する。




「ゾ?」


「ゾ?」


「ゾゾ?」




そこには3体のゾムビーが存在していた。ごみ箱を開け、カラスや猫の様にゴミをあさっている最中だったようだ。


「現れたな……」


爆破は言う。




「おぉっと」


「!」




誰かが爆破の肩に手をやる。


「ここは俺にお任せあれ……ってな!」


抜刀セツナだった。そのまま身を乗り出した抜刀は数歩歩き、ゾムビーと対峙する。


「ハッ」


右手で左腰から刀を抜く動作を行う抜刀。右腕には、光り輝く超能力の刀が。次に、抜刀は剣道で言う正眼の構えをとった。2秒後、真上に刀を振り上げる。


「だりゃっ!」


刀を振り下ろす抜刀。ゾムビーは縦に真っ二つになる。


「ズズズ」


崩れ落ちるゾムビー。






「ゾ!」


「⁉」






斜め後ろに居たゾムビーが抜刀に襲い掛かる。




「ゾムバァアア」




体液を吐き出してくるゾムビー。


「おっと!」


タンッと後ろに飛び、それを避ける抜刀。


「ジュウウウウ」


地面が溶け出す。


「うはぁ! 危ねぇ危ねぇ」




「バースト」


「ボボンッ!」




先程抜刀が真っ二つにしたゾムビーの死骸を爆破が爆破する。


「やれやれ、威勢がいいのは最初だけか? それに私に後掃除をさせるとは」


少し頭を掻きながら言う爆破。


「こぉんな狭い場所じゃあ、俺の刀を振り回せねぇっての! ってぇコトで、チェンジチェンジ! 選手交代な!」


振り向いて超能力の刀を消し、部隊の方へ歩く抜刀。ため息をつきながら言う爆破。


「フゥ――、仕方ないな。ツトム、行けるか?」


「ハイ! やります!」


主人公がゾムビー2体と対峙する。


「ゾ?」


「ゾ?」


「……行くぞ! リジェクトォオオオ‼」




「ドシャアアア」




ゾムビー達は2体とも、リジェクトの餌食となった。


(やった! 2体同時に倒せた。威力も上がってきているな)


主人公は笑みを溢す。


「お見事!」


称賛の言葉を口にする爆破。


(……今回は俺の出番は無し、か……)


(相変わらズ、やってくれるゼ! ツトム‼)


身体、逃隠がそれぞれに思う。


「よし! 後は周辺の探索だ! 他にゾムビーが発生していないか、隈なく探せ!」


爆破が指揮を飛ばす。――1時間半、周囲の探索が行われたが、他にゾムビーは発生していなかった。






「ご苦労! サケル! ツトム! 学校があったのにも関わらず、済まなかったな」


爆破は二人に言う。


「いいえ」


「余裕だゼ!」


照れ臭そうな主人公。自信満々の逃隠。


「それにセツナ! バイトの方は大丈夫だったのか?」


爆破が抜刀に問う。


「まぁ何とかなりますよ。もしもの時は狩人の方で雇って下せぇ」


抜刀は答える。


「そうだな。考えておく」


至って真剣な爆破。


「これからもこのチームでゾムビー達と戦っていく。各々、協力する姿勢を忘れないように! では、帰るぞ!」


爆破の言葉で、今回の任務は締めくくられた。






――狩人ラボ、会議室。爆破が男達の前で報告をしている。


「ここ1カ月間、抜刀セツナ隊員の加入もあったせいか、この狩人・関東支部は隊員の内、一人の犠牲者も出す事なく活動を続けられております」




「……順調だな」


「この調子を保ってほしいものだ」




感心の声が会議室に漏れる。




「しかし、気掛かりな事があります」




「⁉」




爆破の言葉に、静まり返る室内。


「例のゾムビーの細胞に似た性質の宝石が我々の手に渡ってから、ここK県でのゾムビー発生率がぐっと高まっています。他の九州支部や関西支部等のゾムビー発生事例の報告書を見ると、それは火を見るよりも明らかです」




「そんな事が……」


「あの宝石と何か関係があるのか……?」




ざわつき始める室内。




「今後更に、宝石についての研究を進めると同時に、ゾムビー発生との因果関係についても調査を行っていきます」






――爆破のオフィスルーム。爆破が、何か資料を手に取り、椅子に腰かけている。


(やはり、おかしい。他の支部と比べて、差が大きいところでは4倍近くまでゾムビー発生率が増してきている。前年度の関東支部と比べても2.5倍……。ゾムビーの能力を高める宝石……。その宝石をゾムビーは取り返そうとしている……? 何にせよ、あの宝石はゾムビー撲滅のカギとなってくるな……)

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