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6話 イケメンに迫られたときの対処法

 車の中でスマホを確認したら母からメッセージが来ていた。

「お母さんたち、あと一時間位で帰ってこられるって。一緒に夕食を食べましょう、だって」

「いいね、ここからなら俺たちも三十分位で帰れるんじゃないかな? あと少しだけここで話してから帰ろうか」

 私も母にメッセージを送る。

「『今、竈門神社にいるので私たちも夕食に間に合うように帰ります』っと、これでよし」

 家に帰る前に遼太に伝えておきたいことがある。

「あのね……リョータ。今日、約束を果たしに来てくれてありがとう」

 泣きはらした顔を見られるのが恥ずかしくて私はうつむいたまま礼を言う。

「でもどうして今日だったの?」

「今朝、伯母さんからお袋に電話があったんだよ。『梨花が最近年上の同僚から言い寄られているんだけどあまりその気じゃないみたいだ。でも年賀状をみたら三日に会うことになっている……大丈夫なんだろうか?』って。お袋たちは一緒に初詣に行くんだから直接会った時に話せるのにわざわざ電話してくるっておかしいだろ?」

「確かに……」

「お袋まで『梨花ちゃん、心配だわ。遼太、すぐに姉さんちに送ってちょうだい』って言いだしてさ、普段は自分で運転する癖に」

 それってつまり……?

「俺に聞かせる気だったってことだろ?……ま、お袋たちは俺たちよりも俺たちの気持ちに気が付いていたってことじゃないの? それまでしょっちゅう一緒にいたのに急に会わなくなったから心配していたのかもな?……それで慌てて駆け付けたってわけ」

……ってことは、私の気持ち、お母さんたちにバレバレだったってこと?

 高三のお正月に大泣きしたことで心配させてしまっていたんだろうか?

 それにしても……恥ずかしすぎる~!

「私達の前には、沢山のハードルがあるって思ってた」

「うーん、ひとまず最初のハードルはもう越えているかも?」

「はぁぁぁぁ、気が抜けた」

「大体リカ、さっき伯母さんに今竈門神社ですってメッセージ送ってたじゃん」

「そうだよ」

「それってけっこうバレバレだぜ」

 竈門神社は縁結びで有名な神社だ……。

「……私、やっぱりバカだ」

「そういうところもかわいいよ」

「…………」

 だ・か・ら! そういう事、真顔で言わないで!

 心臓がおかしくなっちゃうから!

 遼太はそんな私を見てニヤニヤしている。

 悔しいな、もうっ!

「ところでさ、お前、今日は俺の顔見てずっとドギマギしてるだろ?」

「だ、だって久しぶり過ぎて耐性が……」

「心配だな~リカ。イケメンに迫られてもちゃんと対処できるの?」

 遼太は大げさに天を仰いだ。キザめ!

「自分でイケメンっていう? 大丈夫だよ! 絶対に誘いには乗らない」

「でも、断り切れなくてイケメンの佐藤先生とデートする約束しちゃったんだろ?」

「う、それはそうだけどちゃんと断るよ。だから……もうダイジョーブ」

 遼太はしばらく何かを考えていた。

「よし、俺がイケメンに迫られたときの正しい対処法を実地で教えてやる」

「え? いや、いいよ」

 悪い予感しかしない。

「まずは簡単に男の車に乗らないこと」

 急に私の手を掴むと遼太の口元に持っていき指先に口づけられた。

 うきゃー!

「こんなことされてもほだされちゃいけないぞ」

 無理! ムリ、ムリだよ~!

 吐息がかかってくすぐったい。

「リカ、かわいいよ」

 チュッと手のひらにキスされる。

「甘い言葉にもだまされるなよ」

 なにこれ? 私めちゃくちゃ、からかわれてない?

「お前の対応次第ではお仕置きだからな」

「そ、そんなこと言われても! 恋愛初心者の私には無理だよ! リョータみたいにモテモテの人生を送ってきたわけじゃないんだから」

「それは、お前が気が付いていなかっただけ! 高橋だって三年間俺がガードしていたから近づいてこなかったんだから」

 ガード? 何それ? どゆこと?

「だから……俺がいつもお前に張り付いていたから男どもは近づいてこられなかったってこと。実際、大学や職場ではそれなりに声かけられたりしてただろ?」

「それはそうだけど……ん? 良く知ってるね」

 なんで遼太がそんなことを知っている?

「あー、一応ね、お袋と伯母さんに聞き込み?」

「だから叔母さんたちにばれてたんじゃん!」

「……気づかれたか」

 遼太めー!

「お父さんには変な事言ってないでしょうね!」

「さすがに、伯父さんには言えないよ……」

「よかった」

「爺さんの法事の時に一緒に飲んで『まずは一人前になれ』と熱く語られはしたけどね……」

 それって、どうなの? ばれてるの? ばれてないの?

 私、マジで恥ずか死ぬ。

「ああ、家に帰りたくない」

「お前ね……はい、アウト、それは男の前で簡単に言ってはいけない言葉でしょ!」

「…………」

「俺だから良かったものの、ホントにリカはいけない子だね」

「……ゴメンナサイ」

「これはお仕置き決定だな」

 遼太は私の肩を掴むとグッとシートに押し付けた。

「リョータ……怖いよ……」

「そういうかわいい顔してもダメ」

 顔が凄く近い。息がかかりそう。

 鼓動がうるさい。

 全身が心臓になったみたい……。

 遼太の伏せた瞳が色っぽい。

 ちょっ、これ以上はもうムリ! 見ていられない!

 私は、しずかに目を閉じた。

 上唇に柔らかいものが触れた。私の体は、ビクッと反応する。

 一度離れた唇がまたそっと私の唇をふさいだ。


 リョータ……大好き。


 あれ? イケメンに迫られたときの対処法を教えてやるって言っときながら、今まさにイケメンに迫られてない? 私。

 ヤバイ、これ、どうしたらいいのよ?

 この状況、どう対処するのが正しいの?

 このさき遼太に翻弄される予感しかしないよ~!


 だ、誰かー!

 私に正解を、教えてください~!



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