揺らぐ正義
中学校3年の時だった。
俺はある女の子の方が好きだった。その子は周りの女子と比べるには、あまりにも高尚で、気品に満ちていた。あまり男とは話さず、女子からも嫌われることはなかった。
座っているとき、子供のように足をフラフラさせているのを見て、可愛らしいと思いうが、ふとした時に見る横顔は、凛として大人びている。そんなつかみどころがなく、愛嬌のあるその子がとても好きだった。
中学の友達ともお別れの季節だった。寒さが溶け始めた頃、俺はその子に告白をした。
俺は滅多なことじゃ告白などしない。臆病なのか慎重なのか、よくわからないがあまり告白をしてこなかった。
告白したいと思えるほど、彼女が好きだった。
結果はダメだった。あまり会話を交わさなかったこともあるのだと思う。
でもなんだか、運命的な何かがもう一度彼女と僕を引き合わせてくれるような気がした。
かっちりとはまる2つのかけらみたいに、当たり前みたいに俺たちはまた出会うと思っている。
「大丈夫、まだいける。」
そう思い納得した。でも、
「お前じゃ無理だよ。」
そんな言葉が、どこからか聞こえた気がした。
その声は、あまりにも悪魔的で、狂気のような気がした。受け入れられない真実のようだった。
いまでも、運命を信じている。まるで、ある宗教を盲信するように。
俺は、辻野と自分を重ね合わせていた。熱狂的な恋は必ず叶うと思っていた。
だが、叶わなかった。俺も辻野も。
そして確信した。俺の恋は2度と実らないと。