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Neoネくら魔's  作者: Reサクラ
勇者編
5/21

第4話 都会の公園

 突如、謎の声が聞こえた。しかもそれだけじゃなく、部屋の真ん中に赤い髪の少女が突っ立っていた。

 腰まで伸びる長い髪、貧相な身体をした幼い少女だった。俺よりも二つ三つは年下だろう。ずいぶんとはっきり声が聞こえたから、幻聴ってことはないとは思っていたが、まさか姿まで見えるとは。


 俺が眠りかけている間に、忍び込んできたのか? ――そんな気配はしなかった、というか今もこいつは姿と声はすれど、ほとんど気配がない。

 まるで幽霊みたいだ。


 長い髪も相まって、どことなく不気味に――ということもないか。髪の色が赤いからだろうか。向こうの世界じゃ、別に青とか緑とか、で赤もそんなに珍しい髪色じゃなかったけれど、こっちじゃコスプレだ。

 部屋にいきなり現れても、素直に驚けそうにない。


 だいたい異世界に転生してたんだぜ? そんでドラゴンとか退治してたのに、今更幽霊でビビれるかって。小学生じゃねえんだよ。

 俺は至って冷静に、対話を試みることにした。胸のサイズは――うん、ラプスよりは大きいな。会話ぐらいはしてやろうじゃないか。


「えっと、何だっけ」

「そこの勇者よ。信用しちゃダメだから」

 俺が聞き返すと、少女は素直にもう一度答えてくれる。

 信用するな? まあ、このまな板に信用はないな。きっと胸と一緒で情も薄いだろうしな。

「……わかった。信用しない」

「う、うん。なら良いの」

「……」

「えっと」

 俺が毛布を引っ張り出して、どこで眠ろうか考えていると、少女が気まずそうに手遊びする。


「まだ何かあるのか?」

「あの、それだけなの?」

「いや、俺の台詞だけど。もう用は済んだのか。それならそこ邪魔だから退いてくれないか。ベッドの近くで眠ると、このアホが落ちてきそうで怖い。もう少しそっちの方で眠りたいんだよね」

「え、ごめんなさい……」

 と頭を下げて少女が細い脚をどかす。裸足だった。来ている服は地味な修道服めいた何かだったが、スカートは思ったより短く、白い脚は月明かりだけが照らす暗い部屋でもなまめかしく見えた。


「って、それだけ!? もっと妾に何かないの!? せめてもっと驚くとかさ!」

 何故か少女がいきなり暴れ出す。いや、そっちのが驚くけど。あと妾って。そっちもちょっとアレだわ。

「だってほら! 突然出てきたんだよ? ねえねえ、興味薄くない?」

「……興味って言われても眠いからな。じゃあ、誰なんだお前? 勇者を信用すんなってこいつに恨みでもあんの?」

 面倒だな、と思いつつもこのまま部屋に居座られると困るから適当に話くらい合わせてやることにする。


「え、えっとね、妾は! あの、その勇者はっ!」

 嬉々としてしゃべる少女だが、口が追いつかないのか、しどろもどろになっている。

「あの、だから妾、その勇者……えっと、あのっ……もうっ! 何でいっぺんに質問するの! 一つずつでしょ! そういうのは普通一つずつだから!」


「……ああ、うん、悪い」

 何だ、こいつ。問答無用で部屋から追い出した方が良いのか。

 とは言え、幼い女の子相手に強く出るのもはばかられる。俺はいらいらを抑えながら。

「じゃあ一つずつ答えてくれよ」と言う。


「あのね! そうなの! だから、妾はこの勇者に復讐するの!」

「へぇ……」そっちから答えるのか、と思いつつ、とりあえず話を合わせる。「何されたの? 復讐ってハムレット(※1)じゃないんだから。殺されて、妻を奪われたわけでもないだろうに」

 と、それはハムレットじゃなくてハムレットの親父の方だったか。じゃあハムレットって何されたんだ? 親父が殺された以外、実際たいしたことされてなくないか? あれ、もしかしてハムレットって被害者面している割に、けっこう自業自得なんじゃないのか?


 ハムレットの話はさておき。


「殺されて、奪われて……? そうね、妾もそれに近いわね。そこの勇者に殺されて、半身を奪われたの」

「はあ? それって――」

 適当に言ったけれど、的を射ていたって言うのか。しかし殺されて半身を奪われたって物騒どころじゃないけれど、そんなやついたか? ラプスとは三年くらい一緒にいるけど、こいつがそんなことしていた覚えないけど――と頭の中で考えていると、ふと答えが過ぎった。


「お前、まさか」

「ふふ、、気づいたようね。そう、妾は――」

「昨日食ったエビフライ(※2)、なのか」


 確かに、殺したし、半身も奪っている。

 そうか、だから髪も赤いのか。エビなのか。あのやたら活きの良かった大物のエビ、それがこいつ。


「ち、違うっ!! 何よ、エビって!? 妾を何だと思っているのっ!?」

「けどまあシッポ以外全部食っちまったからな、半身っていうか八割は奪ってるんじゃないか」

「そこはどうでも良いわよ! 違うの、妾は魔王なの! 魔王! つい半日くらい前に、お主の身体を依り代のに復活した魔王なの! せっかくお主を助けてあげようと思ったのに、元の姿に戻してあげようと思ったのにっ!」


 少女は髪だけじゃなく、顔まで真っ赤にしてわめいた。

 魔王だって? そういえば、殺されたって言えば殺されたし、半身を奪われたってのは――。

「つまりあの時完全には倒せてなかったってことか」


 俺の身体を依り代に復活した魔王だったが、割とあっさりラプスの剣の前に倒れた。

 ――ように見えていたが実は完全にはやられてなかったのだろう。異世界に復活した魂は消滅していなかったってわけか。

 だからといって無傷というわけではなく大部分、つまり半身は失われ、残った何かは残留思念のごとく、依り代であった俺の身体に大量の魔力が残っていたように、コイツの魂の欠片みたいなもんが俺の身体にくっついていたってことか。


 なんか取り憑かれている気分だ。

 少女の姿をしているからぎりぎり許容できるが、もしおっさんとかが俺の身体に居座っていたとしたらとても耐えられないだろう。

 しかし魔王か、魔王ね。

 俺の身体を使って復活していたせいで、魔王がどんな姿か知らなかったけどこんなガキだったのか。すげえ弱そうだけど、ニセモノってこともないだろう。

 勇者がついてきて、魔王もついてきて、何がしたいのこいつら。逆に向こうの世界からは勇者と魔王が消えたわけだろ。それで良いのか? ――まあ、平和にはなりそうだから良いか。魔王はもちろん、アホ勇者もいない方が平和だ。


 ひとしきり思考を巡らせて、少女が魔王だってことを理解して、――そういえばあいつなんか大事なこと言ってなかったか? と思い出す。


「確か、元の姿に戻してって……って、あれ、あいつどこ言った?」


 ちょっと考え事が長すぎたらしい、目の前から赤髪の少女、魔王は消えていた。

 おそらく回復した魔力かなんかで、身体を造りだしていたと思われる。魔力が足りなくなってまた消失してしったまのか? そうなるとどうなるんだ、俺の身体のどっかに魂が残っているんだろうか。それともこの部屋のどっかか?

 そんなことを考えていると、遠くで声が聞こえた。


「バカーっ! バカーっ! もう知らないんだからっ!」


 外からだ。

 俺は部屋の窓から顔を突き出すと、夜の街をのろのろと走り去って行く赤髪の少女の後ろ姿が見えた。


「……何だ、あいつ」

 俺の発言のどこかに怒って部屋を飛び出したんだろうが、大声でアピールしているし、俺に追って来いと言っているようだ。

 面倒だな、すごく眠いし。

 しかし元の姿に戻る方法か。

 あいつが魔王なら、それを知っている可能性――あるいはあいつの力で元に戻れる可能性すらある。


 魔力と共に身体が消えて、俺の身体に魂が戻ってくる――とかなら良いんだけど、どっか知らん場所で消えて、そのままそこに魂も取り残されてしまえば、余計に面倒なことになる。最悪今度こそ成仏してしまうことだって考えられるからな。


「やっぱり追うしかないか……」


 女を追うのは男の仕事か。

 こっちの世界、元の姿だった頃覚えがないわけじゃない。

 彩もよく俺に怒って、どっか走り出してたな。俺一回も追いかけたことないけど。どうせ腹が減ったら戻ってくるんだよ、あいつは(※3)。


「幸い脚は遅そうだったから直ぐ追いつけるだろう」


 俺はぼやきながら、適当な薄手のコートだけ羽織って家をそっと出ることにした。


   ◆


 そういえば、季節は秋だったな。最近、夏と秋の境目ってのがはっきりしなくなってきたが、十月は多分秋だろう。十何年ぶりにこちらの世界に戻ってきて、当時の季節なんてすっかり忘れていた。

 一応コートを羽織ってきたは良いけど、けっこう寒いな。向こうの世界は割と暖かい地域が多かったしな。

 あとなんだろう、妙な寒さがある。

 田舎者が東京は寒いって言うけど、それなのかな。狭い道路、並んだ家々が独特の夜風を生み出しているような気がする。

 

 それに、街頭が所狭しと並んで、夜だってのに明るすぎる。戻ってきて思うけど、夜ってこんな明るかったのか。と呆れてしまう。節電どうこうの話もそうだし、子供が家に帰らなくてってのもこれだけ街が明るかったら夜だから帰ろうという気にもならなくて当然ではないのか。


 くそ、やだな。精神的に三十近いせいかちょっとおっさんめいた思考になってないか? いやそんなことないよな。性欲だってはんぱないし。――あれでも男の性欲の絶頂期って三十手前なんだっけ? え、女の方だったか? あれでも俺は男だけど今は女だから、性欲の絶頂期はどうなるんだ。えっと。


 と性欲について深い考察をしていたところ、最寄り駅までついてしまった。適当に追いかけていたせいで、道を違えたのか。でも明るい方に向かって来たんだけどな。

 虫みたなもんだから明るい方にいるだろ、って思ってたけど、あいつ魔王じゃん。もしかすると暗い方に行くのが正解だったのか? 東京で暗い場所ってどこだよ。逆に公園なんかが街頭の点灯時間決まってたりで、住宅街のすきまにある小さい公園とかけっこう暗いけど。

 うーん、ここら辺にどっかそういう公園あったかな。とりあえず駅からまた離れないとな。ここはどこも明るいし。


 来た道を戻ろうとするが、ちょっと視界の端にコンビニが映った。

 そりゃこっちの世界じゃ、コンビニなんて珍しくも何でもないのだけれど、向こうの世界には当然あるわけがない。


 何故あんな便利なものがないのか。魔法? そんなもんコンビニに比べたらザコだろ。魔法じゃ腹はふくれないだろ。スカートがめくれる? アホか、コンビニにはもっとエロいもんが売ってるだろうが(※4)!


 俺はこっちに戻ってきて、結局まだ白米を味わえていなかったことを思い出す。

 せっかくなら母さんのつくったカレーで――と思っていたけれど、気が利かない魔法のせいでライス抜きだったわけで。

 もう贅沢は言わず、コンビニのおにぎりでも良いから食いたい。


 コンビニおにぎりのお米って、家の炊きたてご飯とは全く別のおいしさがあるよな。なんだっけ、サラダ油入れて炊いてるから冷たくても美味いとか昔聞いたな。


 一応、自分の格好がおかしくないか確かめる。適当に持ってきたのは男もののモッズコートだった。ぺらぺらで薄いが、男女どちらが来てもそんなに違和感がないものだ。コートの下はまだ向こうの世界の服だけれど、そこまでおかしくないよな。じっくりと見られると、材質とかおかしいし、デザインもかなり古めかしいけど、それ以外は地味なシャツとパンツだ。

 だいたい俺は、今は美少女なんだ。多少変な服装だって許される、そうに違いない。

 と自分に言い聞かせつつも、俺はコートの前をしめてからコンビニへ入った。


 レジの前を横切って、おにぎりコーナーへ向かう。俺は五分くらい悩んでから、鮭とこんぶのおにぎりを選び、ペットボトルのホットのお茶と一緒にレジへ持って行った。


 店員は気怠そうに商品のバーコードを読み取って、「三百四十五円になります」と価格を告げた。

 眠そうな顔の店員はでもたつきながら商品をビニール袋に入れている。えっと三百四十五円な。すげえよな、こっちの世界じゃこんな安く米が食えるんだからな。

 三百四十五円。

 ――あれ、そういえば俺、財布なんて持ってきてたっけ。


「……お客様、三百四十五円になりますけど」

 店員はどことなく申し訳なさそうに言った。

「え、あの、ちょっと待って」

 俺は一縷の望みで、コートのポケットをあさる。小銭の一枚や二枚入っていないのか。けれど出てきたのはレシートが一枚と、あめ玉が一つ。


「お客様……」


 店員は俺を見ている。

 やぼったい兄ちゃんは多分大学生だろう。俺は美少女だし、ちょっと笑顔でお願いしたらタダにならないか? スマイルゼロ円とか言うだろ、ほら。スマイルでゼロ円にしてくれよ。

「あの……」

 違う、待って。お金、えっとこの募金箱のやつはダメか? 少し借りるだけだからさ。あのだから、そのちょっと、商品をやっぱり棚に戻してくるから許し――。


「ねえ、君。財布忘れたん? 貸してやろうか」


 男の声だ。俺が思わず振り向くと、背が高く肩幅のある制服姿の男がいた。

 どこかで見覚えがる。――と、着ている制服はこっちの俺のものと同じだ。

 ああ、そういえば同じクラスにこんな野郎がいた気がする。俺って男はほとんど覚えてなかったからな。えーっと、名前はなんだっけ? 確かコイツ、ガラが悪くて、いわゆる不良みたいな――。


「ほら、店員。これで会計して」とそいつは千円札を出した。

「え、ちょっと待てって!」

 俺の言葉に、店員の手が止まるものの、「良いから。ほら、後ろも並んでるだろ」と男が言うと、店員も面倒に思ったのか会計を済ませてしまった。


 受け取ったおつりを、ブレザーのポケットに突っ込むと、男は俺の腕をつかんでコンビニの外へ連れ出す。


「ほら」とおにぎりとお茶が入った袋を渡してくるので、俺は一応受け取る。


「外国人だよな? 日本語通じるっぽいけど」

 一応、肯く。

「財布忘れたの? それともドルしか持ってなかったわけ?」

「後で返すよ」

「へえ、じゃあ連絡先教えてくれるんだ? それとも君の泊まっているホテルか何かに連れてってくれんの?」

「え、それは……」

 どうしよう。連絡先って言われてもな。それに泊まっている場所って、俺の家にこいつ連れてくわけにはいかないぞ。だって、元の俺の家だし。

 こいつは多分クラスメイトだけど、俺の家を知っていることはないだろう。だけど、後々面倒な事になる可能性は十分あるし、何よりあの家では俺は間借り人。しかも元の両親のいるところにこんな男連れていけない。


 どうすっかな。魔法か?


「あれ、カズ。どうしたの、一人でナンパしたの?」

 コンビニの前の通りで突っ立っている俺と男のところに、もう一人の男が現れる。こっちも制服姿――当然男のことなど記憶にないのだけれどクラスメイトな気がする。


「うわすげー美人じゃん! 美少女! ねえねえ、君友達とかいないの? オレに紹介してよ」

「邪魔すんなって、今すげえ良い所なんだからよ」

 と二人はケラケラと話している。

 なんだか嫌な予感しかしない。


「あの……お友達も来たみたいだし、お、私、そろそろ……」

 そろりそろりと立ち去ろうとするが、カズとか呼ばれてた方がまた腕をつかんできた。くそ、男が軽々しく俺に何度も触ってきて。


「待ってって。さっきお金返してくれるって言ってたよね?」

「それは、返すよ。絶対」

 男の姿に戻ったら、教室で返してやるよ。うん。

「絶対ってさあ、そんな誰とも知らない相手に言われても困るっての。君の連絡先教えてよ。ラインやってんでしょ?」

「ごめん、スマホない」

 これは嘘じゃない、な。元の俺は持っているけど。どっちみち今は持っていないし。


「またまた、そんなつまんない嘘良いからさ」

「いや、本当に……」

 そろそろ魔法でこいつら二人とも――と思うが人通りがけっこうあるしな。夜って思っていたけど、さっきコンビニで見たらまだ九時過ぎだった。

 こいつらが制服で補導もされていないわけだ。

 こんな人通りの中で人間二人消し飛ばすと、かなり大問題になるだろう。


「あの、ちょっと場所変えませんか」

「お? 何、カラオケとか行く? それとも飯? ――あ、金ないんだっけ? 良いよ、まとめて貸してあげてもさ」

「カラオケならあそこにしようぜ、ちょっと遠いけど店員が激ユルで何してても注意されないぜ」

 何しててもって――カラオケで何する気だよ、こいつら。

「ああ、そんなんじゃなくてちょっと人気のない公園とか……」

「公園? 良いけどさ」

「お、そういう感じ? そっちの方が良いじゃん。けっこー好きなんだよね、外でって」

「つうかお前は帰れよ。オレが見つけた子だぞ」

「えーシケたこと言うなって。外国人だろ? 三人のが良いって」

 何が良いんだよ、おい。


 と思いつつも、二人を駅から離れた人気の少ない公園まで連れ出すことに成功した。


 さすがに無人ってことはなかったけれど、これだけ人が少なければ、ちょっと突然ガラの悪い男子高校生二人が爆発してもたいして騒ぎにもならないだろうな。


「バカ野郎、てめえはこの前の合コンでもオレが狙ってた子横取りしただろうが」

「だってよー外国人なら後ろもオーケーなわけだろ? それならほら、二人の方が」

 などと言い合いをしている二人。


 俺は今からこいつらを――。


 大丈夫、こんな外国人のいたいけな美少女に難癖つけて手を出そうって連中だ。渋井丸拓男みたいなもんだろ。始末した方が世のためになる。良し、せめて苦しまずに――。


「お、お主っ! まさか追ってくるのが遅いと思っていたら、妾を放って置いて他の男と遊んでいたのねっ!? さ、最低よっ!」


 明かりのないブランコで、一人物思いにふけっているやつがいるな――とは思っていたけれど、そいつは俺が探していた魔王だったらしい。俺に気づいて、眉をつり上げながら寄ってきた。

 つうか、本当に公園にいたのか。


「え、何、お友達?」

「ひゃっほー四人で楽しもうってことじゃん。ほらやっぱオレも来て正解だったろ?」


 とかアホなことを言う二人と魔王。

 さてね、どうしたものか(※5)。

※1 ハムレット

四大悲劇なんて呼ばれているから、てっきり可哀想な目に会っている上位四人の話なのかと思えば別にそんなこともない。単純に知名度とか出来とかでの四つなんだろう。単に悲劇ってだけならタイタス・アンドロニカスとかのがやばいからな。もう悲劇とかそういうレベルじゃない。むしろあれを何故舞台でやろうって思ったのか。あんなもん見に行ったらそっちの方が悲劇だ。


※2 エビフライ

もちろん向こうの世界での話だから、エビフライと言ってもちゃっとしたものじゃない。向こうで言うところのエビにみたいなもの、なんか赤くて殻があって脚がたくさんあるやつだ。海じゃなくて陸地の、岩陰とか草むらの中にいる。ん? それってもしかすとアレなんじゃないかって? やめろ、旅の途中だとマジでそういうもんしか食い物がない時があるんだよ。それくらい察してくれ。


※3 采賀彩(サイガ・アヤ)

ケンカすると、「もう知らないっ!」って直ぐにどこかへ行くけど、しばらくすると帰ってくる。「お腹空いたっ!」なら自分の家に帰れよ。とは言えないので、俺はよくチョコレートをあげた。中におもちゃがはいっている卵形のチョコとか、シールがついてくるやつとか。ああいうのってどっちがおまけなのかわかんないよな。まあ、彩はそんなん関係なくむしゃむしゃ食ってたから問題ないな。腹がいっぱいになるとケンカのこともすっかり忘れるし。あー、そろそろ今回のことも忘れてくれてるかな。


※4 エロいもん

スカートがめくれるのと、コンビニで売っているエロいもんってのは比べると前者の方が価値があるって言うやつもいると思う。まあ、売りもので紙媒体ってのと、生で見られるのってのでそういう価値観を見い出す連中がいるってのはわかるけど、俺は割と合理主義者だからな。別に奈良まで行って仏像見なくてもグーグルの画像検索で良くね? って思っちゃう派だし。あとパンチらよりプールで水着がっつり見る方が良くない? 上も下もだよ? これって賛同してくれるやつあんまいねーけど。


※5 どうしたものか

俺が元の世界で通っていた高校はそこそこの偏差値の高い私立高だったから、あんまり不良ってのはいなかった。そんなんでこの二人の男も悪目立ちしていて、俺の記憶に微かながらも残っていたわけだ。そうでなければ男子生徒とか覚えているわけもない。一応、何人かは、友達とまでは言えないけれど、ちょっとクラスメイト程度はいたけれども。そいつらは元気にやっているのかな。ってそんなことよりこいつらをどうするか。いや、こいつらより魔王をどうするかってのが大事か。

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