蛇の道は蛇
翌日、休日というものもあってか、朝から騒がしく住宅街の子供の声で起きてしまう。
「休日くらい寝させろよ……」
目覚めてしまったものは仕方ない、嫌々と起きて着替えを済ませる。
「はぁ………もうちょっと寝てたかったな……」
それでも早起きしてしまったので、学校の課題でもやろうと、鞄に手を伸ばす。
そして課題のプリントを取り出そうとし、とある事実に気がついてしまった。
「しまった……置き忘れてる」
一瞬、課題をやらないでおこうかと思ったが、成績に響くし何より目立つような行動はとりたくない。
憂鬱な気分になりながらも、取りに行くことにした。面倒だが後々のことを考えると取りに行った方が多少はマシだ。
鞄をそのまま担ぎ、昨日からある奇妙な扉を一瞥し、昨日はあれが夢じゃないことに落胆しつつ外へと向かう。
他人に扉自体を見てもらったわけではないので、何かしらストレスやなんやらが原因で幻覚を見てしまってるだけかもしれない。そんなことを思いつつも。
もちろん見に覚えはないので、そんなことあるはずないんだが。
学校に向かう途中、奇妙なものを見かけた。
それは、高層ビルを覆うようにびっしりと絡み合うように見たこともない植物が異様な雰囲気を醸し出し生えていた、いや見たこともないというのは語弊がある……昨日扉の先で見たものに心なしか似ているような気がしたからだ。
「なんだこれ……昨日まで無かったよな……」
不思議がって見ていたが、ここであることに気付く。
誰もこの植物を一瞥すらしないのだ。昨日のが見間違いでなければ、一夜にして何十階もある高層ビルに巻き付いているこれを。
他人や建物に興味がないとは言え、急に現れた珍しいものには誰かしら興味を示すはずだが……。
「……はぁ……」
盛大にため息をつき、自分が幻覚かなんか見てるのかと考える、疲れていないのに。どこかしら今の生活にストレスでも感じてるのだろうか、きっとそうだろう。
さっさと忘れ物を取りに行き、家へと帰る。
その間にもその植物は少しばかり成長し、花を咲かせていた。
自室につくなり、昨夜からしまい忘れてた布団の上に倒れ込む。
「なにが幻覚だ……怪しいクスリもやってねえし、ストレスなんて感じてねえぞ……」
ぶつぶつと悪態をつく。
相談する人も居ない、病院に行くわけにもいかないので、1人で結論づけた結果、幻覚ってことに落ち着いた、納得はいかないが。
「この扉から始まったのか……?ちくしょうが」
やる気のない動作で取っ手を掴む、すると昨日の一回以降開かなかった扉が簡単に開いてしまった。
力も入れてないし開くとも思ってなかったので半開きのところで、手を離してしまう。
「……幻覚なら幻覚で楽しむとするか」
念のため靴をはき、扉開け歩を進める。
広がっていたのは昨日見た世界……知らない森の中だ。
「……昨日のやついねえのか」
どうせなら昨日あった変な娘にでも聞こうかと思ったが、この幻覚はそこまで都合はよくないらしい。
「よう少年」
「……あ?」
声が聞こえた、が、周りを見渡しても声の主たる人物は見当たらない。
「……幻覚にくわえて幻聴か、クソ叔母共、クスリでも盛りやがったか……?」
声を無視して先へ進もうとすると上から何かが落ちてきた。
恐る恐る落ちてきた物を確認すると、それは一匹の蛇だった。
「ただの蛇かよ……脅かせるなよ」
「無視をするからじゃぞ少年」
…………
突然のことに一瞬頭が真っ白になったが、喋っているのは間違いなくこの蛇だ。
幻覚幻聴も度が過ぎるとこうなるんだな。
「あー……その様子じゃと龍騎士は何も言っとらんのか、全くヴァンパールの側近どもは役に立たんな……新参じゃから仕方ないかもしれんがの」
蛇なので表情はわかりかねるが、声で呆れていることがわかる、いきなりきて何なんだろうか。
「にしても人間とかいう脆弱な人間に継承させるのはいささか不服じゃがのう、わしらではどうにもならんからの」
「早く継承を済ませてください。リヴ様。」
唐突に後ろから声が聞こえ、振り向くとそこには昨日見た娘がそこにはいた。
「貴様……昨日は良くも……!」
「人間、私のほうを見ていていいのか?」
余裕そうにこちらを見ているかと思いきや僕の後ろを指差す。
「継承に集中したまえ」
そう声が聞こえた時には既に目の前が真っ暗になっていた。
真っ暗になる前視界の四隅に微かに牙がみえていたが、あれはもしや……。
一旦、この子のパートは終わりです……自己紹介させてあげられなくてごめんね…