転生3
目を開けるとそこは異世界だった。
特別なスキルのない私は、心のなかに立ち込めた暗雲が今にも豪雨となりそうな不安感と共にあった。
この世界で使える通貨も持っておらず、空腹を満たすために川の水をごくごくと飲む。
ふぅと袖で口を拭き、空を眺めた。
何をするにもまずは金だ。
職を探さねば、な。
職を探して街をふらふらと歩いている最中、街頭に貼られた一枚の求人票に目が止まった。
『勇者募集!!まだまだ足りていません!!』
この世界には『勇者』がたくさんいるらしい。
どうやら職種の一つのようだ。
幼い頃から育てることが理想なのだがそうは言っていられない。
急を要するクエストも増え、中途採用も一年を通して行われているということだ。
私は城に向かった。
衛兵は私を見るや「勇者の募集をご覧になって来られた方ですか?」と聞いてきた。
私は「そうだ」と答えた。
私はそのまま奥の担当者の元へと連れて行かれた。
担当者は私に簡単な自己紹介とこれまでの経歴について聞いてきたが、私はここで初めて勇者ではないことを告げた。
担当者は呆気にとられたが、私は求人票の問題点をつらつらと挙げた。
給与、勤務時間、休日、必要となるスキル、などなど、あの求人票からは何もわからない。
「私のジョブは社労士です。魅力的な職場にするため、まずは勇者関連の労務について就業規則などから整理していきませんか」
採用が決まった。