王子 視点
王子 視点に変更します。
椎名真広
カフェの王子なんて言われてるけど
女にキャーキャー言われるのは苦手だ。
本当は調理の勉強がしたくてこのバイトを選んだのに、「俺目当ての客がいるから」みたいな理由でずっと接客しかさせてもらえない。
だから、仕事はテキトーでよく外を眺めていた。
優子はよく店の前を通るから一方的になら知っていた。
見かけるたびにに違う男を連れているから、けっこうお盛んな女だなって思ってた。
まぁ、キレイはキレイだけど化粧が濃いし、ギスギスした感じで俺のタイプではなかった。
でも、見かけると目で追ってしまうのは
きっと俺の母親に似てるからだろう。
男をコロコロ変える、1人の男で満足できない淫乱女。
なんて、ちょっと言い過ぎか。
そんな事を心の中で思いながらカフェの前を通る優子を目で追った。
その時、彼女と同じ制服の女子高生に声をかけられた。
「あの子友達だから紹介してあげようか?」
「もうすぐ夏休みだからみんなで遊ぼ?」
俺は笑顔を作って断ろうとしたけど、
「女子高生と遊びたーい」と言ってた友達の事を思い出して彼女の誘いを受けた。
だから、あの日も顔だけ出してすぐに帰るつもりだった。
優心の家は俺の家とすごく近かったからヒカリに頼まれ、迎えに行った。
新築の家。
手入れされた庭先の花。
そこで、夕涼みをする中年男性。
父親かと思い、軽く会釈をしたがあからさまに無視をされた。
まぁ、きっといろんな男が迎えにきたりするからお父様としてはいい気分ではないかと、少し同情した気分になり、無視をされても別に苛立ったりはしなかった。
すぐに優心が玄関から出てきた。
優心は父親に「いってきます」と言ったが無視をされていた。
俺の所まで小走りで走ってきた優心はイメージが違った。なんだかおどおどしてるように見えた。
身長だってこんなに小柄な子だったっけ?
化粧っ気もないし。
車に乗せて、プールへ向っている時も言葉少なく、緊張しているようにも見えた。