6:醜い者
読みにくい文章ですみません。もう少しおつきあい下さい。
我の神殿である太陽の神殿に帰ると,一番に出迎えてくれたのは
この世界の罪人になってしまった醜い者であった。
神殿の者たちは醜いというその容貌も我にはそう思えぬ。
王という存在は美醜の感覚がない、その代わりに嘘偽りない真実だけが
二つの眼に映っている。
醜い者は寂しげな様相をしていることが多いがその瞳にはいつも幾億もの星がある。その星が瞬くのが美しいと思う。
「世界の王さま、何があったのです?」
「あぁ、この神殿まで薔薇が届いているのかぇ」
庭に広がる真っ赤な薔薇の花びらそちらに目をやれば醜い者も同じ方をみやる。
この先に美しい者の神殿がある。
「思い残す事はないかぇ?」
我は唐突に尋ねた。
「いいえ。」
そう目を伏せるのは、美しい者の片割れ、我には守る者が多くある。
例えばこの世界、この世界を司る者、この世界で生きるもの。
この世界で生きようとするものたち。
その中でも先代やその前の先先代やずっと前の者たちが気にかけている
二人がいる。
美しい方と醜い者
いつの時も美しい方は醜い者を求め、醜い者は次代の幸せを願いながら孤独のうちに消えて行く。そしてそれを追いかけるごとくまた、美しい方も消えて行く。
「今、ここで其方を死なせたく無い」
我の時代で死なせたくはないその人生を生きて味わってそうしなければ、魂は成長しないのだから。
「生きるのが苦しいかぇ?」
「これが私の罰なのでしょう」
「本当にそう思うか?」
「はい」
「痛いのも苦しいのも優しいのも怖いのも悲しいのも幸せなのも、生きておらねば感じ取る事が出来ぬ、我は、其方にもアレにも幸せになる為に死ぬのではない
生きて幸せになって欲しいと思っているのだよ」
「王様…」
「手をだしや、これを」
まんまるの形をした沢山の真珠たちが我の両手からこぼれ落ちる。
「アレから預かって来たのじゃ」
美しい者の片割れは両手で沢山の真珠を包むとそっと頬にあてた。
「あたたかいですね…」
「アレは其方を愛しておるのよ、とても深くな」
この神殿の最新部まで薔薇の花を届ける程に
「知っていました、あの方は優しい方でした。王様、確かに私たちの間にも暖かで優しい時間が流れていた時もあったのですよ」
「其方は確かに罪を犯したのかもしれぬ。だが、それは其方だけの罪ではない。
アレも、そして我も確かに罪を犯したのじゃ」
醜い者は驚いた様に顔を上げた
「生きるとは、そう言う事なのじゃ。皆等しく罪を犯す。それは神も何も変わらず
何もかわらないのじゃ」
ぽとり、と星を写す瞳から雫が零れた
「もう、ずっと、其方は悲しくて寂しかったのじゃ。罪を持つ者は一人であったからのぅ、しかしなもう1人ではないのじゃ。もう誰も悪くはない」
我はそうって涙を零す醜い者をそっと抱き寄せた。
初めから一人だった神様
それは世界の王様とまったく同じ事なのに
その神様には心があった。誰かを思い大切にする優しい心が。
美しい方と呼ばれた者とまったく同じ心があった。けれども神であるのに敬われることも、慕われることも神殿さえなかった。だから一人だった神様は星の下で眠った。するとこの世界はこの優しい神様を愛して慈しんでその証として瞳の中に星を捧げた。たった1人の神はいつの間にか自分が神であることも忘れて人々の中に紛れ込んだ。そうすればもう一人ではなくなるから。
「眠りなさい、醜い者よ。そして目覚めなければならぬ。運命を越えて行くために」
そうして、醜い者は我の足下に崩れ落ちた。