5.5:幕間
醜い者の噺
この世界の王さまの神殿、その最新部
噎せ返るほどの薔薇の香りと風にのって届く花びら
あぁ、あの美しい方が鳴いている
そう思った。
私が罪人になる前、美しい者と私は確かに心を寄せ合い
幸せな時を過ごしたこともあった。
ただ、側に居るだけで、満たされる事もあるのだと知り、醜い容貌で産まれた事で美しい方と一緒に並べないと泣いた私に、優しく涙を拭ってくれたのも美しい方だった。
本当に、思い返してみれば美しい方は優しい方であった。
ただの一度も、私の容貌に対して醜いとは仰られない。
ただ、其方が居てくれて良かったと。そのままずっと心も共に一緒に居られたらどれほど良かっただろう。
何かを深く望んだ訳ではなく、ただすれ違ってしまった。
そうして私は罪人となり美しい方は狂者となり
まるで鏡を隔てたかの様に世界がねじ曲がってしまった。
一番近くにいたはずの私は気がつけば一番遠い所にいて、今はもう何も届かない。
鳥籠の中にまで入って来た花弁が、美しい方の叫びの様に思えた。
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王様の噺
もう一度、やり直す事は出来ないだろうか?
そう思い願ってしまう、何度でも。
昔のあの子たちはそう言っていた。
其方は、其方たちが知らないところで何度も出会い、運命のカルマに焼き尽くされる。何度も、何度も。我が終わり、始まってその間に生まれては、消えていく。
一番古い神と呼ばれるべき者たちは、ただ生きる為に生まれ幸せになる為に死んでいく。我は其方達を助けることは叶わない。
何時だって間に合わない。
今回もまた間に合わないのであろう。
アレが狂い、あの子が死ぬ。何度でも同じ運命を辿っている二つの魂。
どれだけ、歴代の王たちがあの子を生きながらえさせようとして
何度、歴代の王たちがアレを愛したとしてもあの子たちはお互いしか見えていないのだから。しかし、それもまた歴代の王たちにとって羨ましいものでもあった。
王は一人で生まれ、一人で消えてゆく存在だから。
王の魂は巡る者ではなく、湧きいでるもの。
どこからか常に酸素が供給される様に、常に海に海水が供給される様に。
それでも、自分たちの役目を知ってもなお、狂う事が無い事こそ王である証だと
知っている。




