1:太陽の神殿と鳥籠
ブログに掲載していたモノを加筆修正しています。
ボーイズラブと表記がございます、苦手な方はご遠慮ください。
それは太陽を司る神殿の最深部にある。
八本の支柱、ドーム型になった天上からは常に穏やかで暖かな光が降り注ぎ
八面有る窓には美しいステンドグラスがはめ込まれている。
その広い空間の中央に、大理石で出来た鳥籠の様な空間に私はいる。
衣擦れの音がした。
「久しいな」
ひと月ぶりのこの世界の王様は、太陽の様な笑みを浮かべていた。
「お久しゅうございます」
私はその場で跪くと頭を下げた。
「頭をお上げ、何か足りない物はないかぇ?」
美しい陽の光をした金の髪
輝く海の色をした目、綺麗な綺麗なこの世界の王様。
「いいえ、もう十分に親切にさせていただいております」
「そうか、其方は何も言わぬからな…嘘も真も」
世界の王様は片膝を着く様にしゃがみ込むと、片手を差し、私の手を持ち上げた。
そしてそのまま立ち上がり、自然と私もつられて立ち上がった。
太陽の様に笑うこの世界の王様と、その後ろでは跪く姿勢をした美しい側近が、私を鋭い瞳で睨みつけている。
醜い者は王様に相応しく無い。とその眼は語っていた。
「私はこの世界の大罪人でございます。真実はその前に何の意味もなさないでしょう」
私は微笑んだ。
「そうか」
「ただ、残念に思う事もあるのです」
「残念?」
「私はいつだって捕らえられ、幽閉され。
空の高さは知っているけれど世界の広さは何一つ知らないのだと」
私はいつだってそう、醜い容姿にお似合いの暗く淀んだ世界に身を置いている。
光と自由からは縁が無い世界で生き、それらは何時でも私から遠い。
「王様の治めている世界を、私も自由に生きてみたいと、そう思わない事もなのですけれどね」
私がここから出られる事は、多分ない。
私は俯き小さく微笑んだ。
「…其方が犯した罪は、そこまで深い物なのか私には分からぬよ。
其方はアレのためにいつもいつも、様々なものに耐えていた。」
世界の王様はそういって、私の灰色の長い髪をそっとかきあげた。
「今は、本当に平穏な日々を過ごさせて頂いて…それが何よりの幸せです。
私の様な罪人がこの様な待遇で良いのでしょうか?」
「いいのよ…其方はここに隠れていれば良い。アレから」
王様はまた太陽の様に笑った。
でも、私は知っている。
この王様は月の様に冷たくもあると言う事を。
「アレはガラスの様に生きておるよ。其方が居なくなってから」
「そう、ですか」
世界の王様は私の髪から手を離すと、笑顔を消した真摯な眼差しを持って
「お前はアレに、アレを殺す様に命じられたのだろう」
そう言った。