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私だけのモノ

何も無い真っ暗な闇の中。

だけど、なんとなく来てくれる気がしていた。

あの子が……。

『あはは、やっぱりバレちゃった?』

「……エル」

光の結晶が集まって、一つの少女の形になる。

何故かは知らないけど、なんとなくこの子が来てくれる事がわかっていた。

「ねぇエル……僕が記憶を失う前に、君と僕はどんな関係だったの?」

『わたしと名無し君はね、一緒に遊んだりしたお友達だったの』

「友達?」

『わたしが歌いながらピアノを引いて、君は隣でずーっと聞いてくれてたんだ』

そうなのか……だから、ピアノがあんなに懐かしかったんだ。

『ああ……もう、お別れの時間みたい』

「待ってよエル、僕はまだ君に聞きたい事が……」

『バイバイ、名無し君。次会う時は、君ともっと一緒に居たいなぁ』

「エル!」



「ッ……!」

「旦那様、大丈夫ですか?」

「あ……ソフィーナさん……」

夢から醒めると、そこはまた僕の部屋。

僕は気を失ってベッドへ運ばれたのだろう。

しかし、なんだろう……嫌な予感がした。

「……そうだ、ミレイヌは!?」

「ミレイヌですか?」

まさか。

また。

「ミレイヌは、謹慎処分としました。無断であの部屋に入り、旦那様を苦しませた罰です」

「う……うわあぁあぁ!」

僕は慌ててベッドから飛び起きる。

そうだ。

ミレイヌの部屋に行けば、まだ間に合うかもしれない!

「旦那様、まだ安静にしていなければ……」

「うるさい!ソフィーナさんは少し黙っててよ!」

「旦那様ぁ!」

僕はソフィーナさんを払いのけて、部屋を出る。

「確か、向かいがソフィーナさんで、その隣の隣が……!」

僕はミレイヌの部屋へ急ごうと、廊下を走る。

僕は息を切らせながら、ノックもせず乱暴に扉を開ける。

「……ミレイヌ!まだいるのかい、ミレイヌ!」

鍵もかかっておらず、扉は簡単に開いた。

僕を待ち受けていたのは……ドールが溢れる可愛らしい部屋の中、ベッドの上で眠るように横たわる……ミレイヌだった。

「ミ……ミレイヌ!?」

僕は急いでミレイヌに駆け寄り、体を揺らした。

ミレイヌの反応は無い。

「あ……あ……」

僕は胸に耳をつけてみて、鼓動を確かめる。

無い。

ミレイヌが……死んでる?

そして僕は、はっとする。

「……まさか、アリティアも」

僕はミレイヌの部屋を出て、隣のアリティアの部屋のドアノブに手をかける。

『勝手に入ったら許さないわよ?』

ふとアリティアの言葉が頭をよぎるが、そんな事より何より、確かめたかった。

僕はごくりと息を飲み、部屋の中に入る

「アリティア!!」

シックな家具が置かれた部屋の中に、1人眠るように横たわる……アリティア。

僕は、言葉を失った。

近付いて見ると、アリティアは目を見開いていた。

しかし、その瞳には、光が無い。

「旦那様」

「ひっ!?」

僕はビクリとして、振り向いた。

そこには、いつものように優しい笑顔を作るソフィーナさんがいた。

「何を怯えていらっしゃるのですか、旦那様」

「だ、だって……ミレイヌも、アリティアも……」

「彼女達は、引っ越したのです。部屋に何も無いのも、無理はありません」

「で、でも! 2人とも、確かにそこにいるじゃないですか! ここに! いるじゃないですか!」

「旦那様……」

「えっ……」

僕が次の言葉を紡ぐ前に、ソフィーナさんに抱きしめられる。

「これで、この屋敷には旦那様と私しかいません……。

私は旦那様のモノです……それと同時に、今、旦那様は私だけのモノなのです……」

「ソフィーナ、さん……?」

「愛しています、旦那様……」

「あ……」

何故だ。

言い返さなくちゃいけないはずなのに、柔らかな腕に抱きしめられた僕は魔法にかかったように反論する事ができない。

「さあ、今日はもう部屋に戻って眠りましょう……私の愛しい、旦那様」

「……う、ん」

僕はその声に逆らう事ができず、ぼーっとしたまま自分の部屋へと戻っていった。

聞きたい事は山ほどあったのに、頭が空っぽになったように夢の世界へ誘われてしまった。


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