閑話:菓子屋
アルバートが聞いた噂の内容です。
閑話扱いで良いのか悩みましたが、「おうちが一番」や「寄る辺なき身」には入れずらかったので、このような形を取りました。
週末に備えて少し張り切って菓子を買ったアルバートは、会計を済ませ袋詰めされるのを待っていた。
菓子ケース横はちょっとした喫茶スペースになっており、アルバートの位置からは声だけが聞こえてくる。
「……魔女と言えば、あれはちょうど10年ほど前だったかね」
『魔女』の言葉に思わず耳が反応していた。
「あたしゃ見たんだよ!跡取りがお亡くなりになったって公布される前日の早朝に、お邸からすごい勢いで魔女の森に向かう領主の馬車を!あれは奪還に向かったに違いない!」
「あれ、でもお亡くなりになったって公布されたってことは?」
「間に合わなかったんだろうさ!」
「恐ろしいこと……」
「忌々しい事さね」
カーッと頭に血が上るのが分かった。
渡された紙袋を奪うように受け取り、扉から飛び出しながら鞄に仕舞う。
頭の中を駆け巡るのは『10年前』と『魔女』と『領主の跡取り』。
ずっと見ないふりをして奥底に仕舞いこんでいた疑問に、光が当たる。
(僕は誰の子ども?)
学校に上がると、学友たちには当たり前に親が居た。
アルバートはDとの約束で、学校では『魔女』の話をしない。
でも、養い親はDである事は間違いなくて。
では、生みの親は?
今まで聞いた事が無かった。
そして疑問に思っても、聞けずにいた。
いつもの調子ではぐらかされる事が分かっていたから。
しかし今聞いた事は……
『10年前』と『魔女』と『領主の跡取り』
(僕は、誰?)
逸る心を抱えて少年は街を走り抜けた。
個人的には「あたしゃ見たんだよ!」のフレーズは浅香〇代・風でイメージしています。
誤字・脱字・意味の読み取りずらい表現など、ございましたらお知らせいただけると助かります。




