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私の夢は……?③

 応募し終え、ソファーでくつろいでいると玄関が開く音がした。

母は夕飯の準備をしていたが、手を止め玄関の方へ向かう。

流も母の後を追う。


「ただいまー」


 父が玄関で靴を脱いでいる。


「おかえり。今日は早かったのね」

「ああ、予定より早く仕事が終わってな」

 

 母が父の鞄を手に取り、リビングへ足を向ける。


「おかえり、お父さん」

「ただいま、(ながれ)


 流が母の横に並んで父に挨拶をすると、硬い手で柔らかく真っ白な髪を撫でた。

三人ともリビングに着くと、母は夕飯の用意をしながら父に質問を投げる。


「ねえ、あなた。パレット社の企画について詳しく知っていたりしない?」

「企画?」

「ほら、最近話題になっている……」


 丁度良いタイミングで、テレビにパレット社が企画した「我社に色を与えた者は、願い一つ叶えます」、通称「我色(わがいろ)」と呼ばれ出した企画の内容についてニュースキャスターが語りだした。

 父はそれを見て、母が何を指しているのか理解したらしい。


「……! あぁ、あれか!」


 ひらめいた顔をしていたが、次第に申し訳なさそうな顔を見せる。


「俺も詳しいことは分からないんだ。何せ、次期社長が発案した企画でな。俺たちのような下っ端社員にはその話が回ってこないんだ」

「そうなんだ」


 流は残念そうに視線を落とした。


「何かあったのか?」

「実は流がその企画に応募したの」


 料理をテーブルに運びながら流の代わりに母が答える。

すると、父は大袈裟(おおげさ)に「あ!」と大きな声を出す。


「一つだけ知っているぞ! あの企画の定員は三十人って!」

「三十人だけ!?」


 流は驚いた。

テレビで、「我色」に応募した人数が推定、百万を超えていると予想していたからだ。

ビラの応募要項に定員の数は記載されていなかった。

世間で話題になっている企画だから、大規模なイベントになるだろう。と、流は予想していたので、あまりの定員の少なさにショックを受ける。


「噂によると、当選者をパレット社寮に住まわせるみたいで部屋の数に限りがあるから……みたいなことを聞いたぞ」

「ん? お父さん、それってつまり、長期期間のイベントってこと?」

「まさか流知らずに応募したの……⁉」


 母は目を丸くして流を見た。

流はぎこちなく頭を縦に振ると、母は額に手を置いて天を仰ぐ。

やらかした。

流はすぐにビラの応募要項が書いてある部分を一文字ずつ、文字を取りこぼさないよう細心の注意を払って読む。


「「なお、この企画は長期期間実施予定のため、この企画にかかる全ての費用を弊社が負担いたします。ただし、未成年者が当選し本企画へ参加を希望する場合、保護者の了承を得た上で参加可能となります。また、参加者は弊社の寮を使っていただくため、自宅からの参加は不可能となります」……⁉」


 大切な所を見逃していたなんて。

母のリアクションに合点がいくと共に、自分の注意力の無さに絶望する。


「ま、まぁ! まだ、流が当選したとは決まっていないだろ⁉」


 暗い空気を壊そうと父が二人に声をかける。


「お父さん、その言い方だと私は落選するってこと……?」

「ち、違うんだ! だからな、その、つまりーー」


 弁明しようと、うな垂れる流へ必死に話しかける。

その様子を見ていた母は笑い出した。


「どうしたの、突然?」


 急に笑い出した母を不思議そうにみつめる。

母は込み上げてくる笑いを抑えながら、流と父を見た。


「だって、お父さんが必死に流を説得している姿を見て……つい」


 また母は笑い出す。

母の姿を見ていると、なんだかおもしろくて笑いがこぼれる。

それは父も同じだった。

三人で大笑いをし、一息つくと母はご飯を食べようと言って席につく。


 なんとかなるだろう。そんな気がした。

流は深く考えることを止め、白米を口に入れた。


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