表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

私の夢は……?②

 家に着くと、母に挨拶もせず二階へ駆けあがり、部屋に逃げこむ。


「どうしよう……このビラ貰ってきちゃった」


 ぐちゃぐちゃになったビラを鞄から取り出し、企画の応募要項が書いてある部分を見つめる。


「願いが叶う……もし、これが本当なら私の将来の夢を見つけてくれるかも知れない……!」

(ながれ)ー!」


 下の階から流を呼ぶ母の声が耳に入る。

皺だらけのビラを手で伸ばし、四つ折りにビラを折り畳んでからスカートのポケットに仕舞う。

私は部屋を出て階段を降り、何事も無かったかのように母へ尋ねる。


「どうしたの?」

「どうしたの? じゃないでしょ! 家に帰ってきたらまずは「ただいま」でしょう⁉」


 流はほっと胸をなでおろす。一息ついてから「ただいま」と挨拶をする。


「おかえり。それで、何かあったの?」

「え?」


 思わず肩が跳ね上がる。


「だって流が挨拶もせず、部屋に向かうなんて珍しいじゃない? だから、何か学校であったのかなと思ってね」

「……あのさ」

「なあに?」

「パレット社の企画って知ってる?」


 平常心を装いながら母に尋ねる。


「……あぁ! あれね、願いを叶えてくれるってやつでしょ? それがどうかしたの?」

「私、それに応募してみたいなと思って……いいかな?」

「いいんじゃない? やるだけやってみたら?」

「え、いいの?」


 意外な答えが返ってきたことに驚くと母は笑った。


「ええ。パレット社はお父さんが勤めている会社だし、悪い噂が流れているようだけど、所詮噂よ。だから、流がしたいと思ったのなら、お母さんは止めないわ」

 

 父はこの虹色町(にじいろちょう)にあるパレット社の工場で、特別な電化製品を作っている。パレット社が作る電化製品は特殊で、充電やコンセントを必要としないのだ。詳しいことはわからないが、パレット社が独自に開発した「カラーコア」というエネルギー源を製品に埋め込み、ほぼ永久的に製品が使えるようになっているらしい。その為、電化製品を作っていた他社は競争に負け、いつの間にかパレット社以外の会社は消えていた。

 そして、パレット社は電化製品だけでなく、日用品や食品などこの世に存在する物を全て作るようになったお陰で、パレット社以外の会社は消滅し、全ての人がパレット○○と名のつく、パレット社の息がかかった会社に勤めている。

 父はパレット社の親会社の工場で働いているため、この会社の噂を耳にすることが多いが、どれも眉唾物でひそかにパレット社へ恨みを持つ者が流していたと、数日前父が話していた。


「でも、流。それほどまでに叶えたい願いがあるの?」


 母は知らなかったと言いながら流に問う。


「願い……というか、私、定まった夢がないでしょ?」

「あぁ……」


 深く納得した様子で母は頷く。

実際、流は小さい頃から「将来の夢」というものがなかった。いや、なかったと言うよりも安定した「将来の夢」が無かったと言った方が正しいだろう。

 小さい子がよく言うような、「ケーキ屋さん」や「お花屋さん」など色々な職業に興味があったため、私に「将来の夢」を聞くと毎度変わっているのだ。それは今も同じことで、進学したい学校先もコロコロと変わり続けているため担任の先生を困らせている。


「だから私、願いを叶えてもらうために応募するんじゃなくて、願いを見つけるために行きたいんだ……!」

「そう……」


 母は嬉しそうに微笑んだ。


「ところで流。応募今日までだけど大丈夫?」


 母は募集締め切り日に指を指す。


「本当だ!」


 時刻は十六時。

締め切り時間は今日の17時まで。

携帯でQRコードを読み込むタイプの応募だったため、流は急いで携帯を取り出し必要な情報を入力しなんとか、締め切り時間に間に合わせることが出来た。


 応募する前からこんな調子で先が思いやられるなとため息を溢すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ