私の夢は……?
一人の男が高い所から私たちを見下ろしながら口を開く。
「ようこそパレット社へ。歓迎いたします。願いを叶えるため、己の力を磨き、自らの手で夢を掴みとっていただきたい」
拍手喝采の中、一人の少女は話している眼鏡男を呆然と見上げる。
「本当に来ちゃった……パレット社に……!」
少女は期待を膨らませる。
ここで、自分の将来の夢が見つかるんだと。
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パレット社に呼ばれる二週間前。
学校の廊下で、一つに結んだ三十代くらいの先生とクラゲのような髪型をした白髪の少女が真剣な表情で立ち話をしている。
「白雲さん。高校受験は大切です。ですから、まずは進学したい高校を探す所から始めましょうね」
「はい……」
それでは。と先生は職員室へ戻っていく。
白雲は名前だけ書いた進路希望調査のプリントを片手に肩を落とす。
「流ーまた進路のこと言われたの?」
先生と白雲の会話を後ろから聞いていた、友人の田中 朝がいつものことのように言いながらやってくる。田中の横に並んで佐藤 夜も白雲の元へやってきて二人は、彼女の肩に腕を置き、名前だけ書かれた進路希望調査のプリントに目をやる。
「うん。人に合わせて進学先を決めちゃ駄目だって先生が」
「あー……たしかに」
田中と佐藤は気まずそうに頷く。
「私はさ、小さい頃から将来の夢とか考えた事ないし、友達と過ごすことができるなら何でもいいんだけどね」
不満そうに頬を膨らませると、佐藤が突然「あ」と声を上げる。
「そういえば知ってる? あの話!」
「知ってる、知ってる! あの話でしょ⁉」
田中は興奮気味に答える。
白雲はキョトンと頭を横に傾ける。
「あの話って?」
佐藤は知らないのと白雲の反応に驚いた。
「あのパレット社が変な企画を出したって話!」
「変な企画?」
「これだよ、これ」
田中が制服のスカートにあるポケットから四つ折りに畳んだ一枚の紙を広げ、白雲に渡す。
「丁度今日の朝、登校中にこのビラが巻かれててさ」
「「我社に色を与えた者は、願いを一つ叶えます」?」
大きく目立つ色で書かれた文章を白雲は読み上げる。
すると、田中は白雲が読んだ文章の下に書いてある文字を指しながら説明しだした。
「そう。なんか、パレット社に凄いと思わせるような何かをひらめいた人は願いを一つだけ何でも叶えてくれるらしいよ」
「何でも?」
田中は大きく頭を縦に振る。
しかし、佐藤は眉をひそめながらビラに顔を近づけた。
「でも、怪しくない? だって、パレット社って裏で国を操っているって黒い噂があるじゃん? しかも恐ろしい噂が流れている会社がすぐ目の前にあるっていう……」
「なんでこんな田舎の町に世界を動かせると言われるほどの力を持った会社があるんだろうね?」
三人で不思議だねと言い合っていると、最終下校時間を告げるチャイム音が廊下に響いた。
「君たち早く帰りなさい」
丁度三人の前を通りかかった白髪交じりのおじいちゃん先生が声をかける。
「はーい」
三人は元気よく返事をして、下駄箱の方へ向かった。
「じゃ、また明日ー!」
校門から出ると、三人はそれぞれの家がある方へ歩き出す。
白雲の家は賑やかな商店街を通り抜けると近道になるため、寄り道しないよう真っすぐ歩いていると、肩掛け鞄を下げながら自転車を漕いでいる男が大きな声で紙を巻き始めた。
「パレット社からお知らせだよー!」
男は白雲を横切り、学校の方へ消え去ってしまった。
白雲は足元に落ちているビラを拾い上げ、人目を気にしながら鞄へビラを突っ込み、足早に家へ向かった。




