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八話 ひきづり村と松本大和




「じゃあ、松本大和くんとその家族は病院ですよね、話は聞けそうにないんですか」

「えぇ、事件当時の話どころか、日常会話もまともにできないと駐在さん・・・・・・いえ、加山くんのお父さんもこぼされていました」

 再びローテーブルを囲うことになった私達は、再び作戦会議を始めていた。

 仕方がない、だって秋本さんの話は聞けないらしいし。


「はぁ、母親以外もそうなんだ」

「母親以外もそうらしいです」

「まぁ、自宅の前に左足が立ち続けたうえに、燃える左足に襲われて火傷したらそうもなるか」

 あぎとくんが猫のように欠伸をして、頬杖をつく。

 眠いらしい。


「・・・・・・もし噂が本当なら、大和くんはまだ付きまとわれてるみたいだし、余計にでしょうね」

 暇なのか、あぎとくんが私が飲んでいた蜜柑ジュースをつつきだした。

 ひっくり返りそうになったところを慌てて両手で掴み、少し離れたところに置き直す。

 中身は吸えるほどに残ってはいないが、数滴零れるくらいは残っているかもしれないので念のためである。

「・・・・・・もう、あぎとくん、危ないでしょ」

 私がそう注意して、その指を掴むと次は私の掌をつつきだした。

「くすぐったいって」

「・・・・・・可哀想にねぇ」

 そして、何の感情も籠もっていない同情の言葉を口にした。

 それは私に対してか、大和くんに対してかは分からない。



『【秋本さやか】が無事な筈はないんです』という言葉の真意については、誤魔化されたままだ。

 色々と思うことはあるが、此方としてもさっさと事態を解決したい。

 下手につっこんで、解決しなくてはいけない問題を増やすことはないはずだ。

 ショートカットでいこう。

 解決しなくてはいけないことだけに集中し、その他は捨てる。

 私は手間のかかるグットエンドよりも、速度重視解決のノーマルエンドを選ぶタイプなのだ。



「・・・・・・じゃあ、加山くんのお父さんにその事も含めて聞くしかないかな」

 あぎとくんが力なく呟く。

 諦めが滲む声色である。

 仕方ないな、といった感じの。

「えぇ、貴方たち以外の霊能力者もそうしとりました」

 高倉さんが何度か頷き、付け加える。

 霊能力者ねぇ、その人が調べ上げた資料が残っていたら良かったのに。

 依頼時にも、依頼を受けた今でさえも、出された資料には添付されていなかった。

 その資料は怪異によって消されたのだろうか、ひきづり村によって消されたのだろうか。

 どちらの可能性もあるし、否定できないのが痛いところである。


「・・・・・・あと、佐々木くんだっけ?」

「佐々木隆也くんですね」

 私が尋ねると高倉さんがフルネームで答えてくれた。

 あぎとくんが私を見て、私もあぎとくんを見る。

 そして、二人で高倉さんを見た。


「彼は保護当時は茫然自失で、一ヶ月はまともに会話できなかった、んですよね? 確か」

「今の彼に当時の記憶はあるんですか?」

 私の言葉を付け加えるように、あぎとくんが問いかける。

「ないようです」

 それに高倉さんが言い慣れた言葉をなぞるように答えた。


 何度も聞かれているのだろう。

 霊能力者なりマスコミなりに。


「そして、彼の親御さん・・・・・・母子家庭なのでお母様だけですが・・・・・・なかなか癖のある方ですので、得られる情報もないでしょうし、接触するのはあまりお勧めできません」

 クイッと、彼の指が自身の眼鏡を押す。

 そして、少しだけ遠くを見つめながら、また汗を拭き始めた。



「・・・・・・なんせ、あなた方の前に個々人が雇った霊能力者の三組は村を出るまで、彼女に追い回されとりましたしなぁ・・・・・・」




 とんでもねぇな。

 いや、それって、解決のために動いている霊能力者を追い込んでいたってことだよね?

 いや、本当にとんでもねぇな。


 ・・・・・・まぁ、色々と言いたいことはあるが、霊能力者が三組もいて、真相にたどり着けなかったのか。

 ・・・・・・そんなに難しいのだろうか、この案件。

 この村、そこまで嫌な怪異の気配は感じないんだけどな。

 むしろ、本当に怪異がいるかどうかすら怪しい。

 それくらいに気配が薄いのである。


 もしかして、その三組の霊能力者は被害者の親に追い回されすぎて、何もできなかったなんてオチじゃないだろうな。

 でも、いくら妨害があったとしても、並の霊能力者が手間取る程度の怪異が居るようには思えない。

 もしかしたら偽物だったり、自称霊能力者の詐欺師なんじゃないだろうか。


 ・・・・・・いや、まぁ、高倉さんの表情をみる限り、保護者からのとんでもない妨害もあったのだろう。

 寧ろ、追い回されたせいで、調査ができなかったんじゃないだろうな。

 だから、資料もない、とかかもしれない。

 あと、高倉さんの顔色を見るに、彼も霊能力者と同じくらいには絡まれているんじゃないだろうか。

 この話を始めた瞬間から、顔が疲れ切っている。


 もう、一気に嫌になってきた。

 いや、最初から嫌ではあったのだが。



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