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四十六話 あぎとくんとわをんちゃん




「あの霊魂達、何がしたかったのかな」

 あぎとくんがボロボロの姿で、ふてくされながら呟いた。

「何者かになったところで、一体何になるって言うんだよ」

 事務所にあるの扉から一番離れたいつものソファー、そこで寝転がったあぎとくんの表情は珍しいことに、一目で不快感を感じられるほどには歪んでいる。

 いつもは付き合いの長い人間(と怪異)くらいにしか、喜怒哀楽を察知することができない表情筋をしているのに、今日は随分と滑らかで大きく動くものだ。

 一瞬、そう感心を覚える。



 だが、今のあぎとくんの身体は湿布や包帯に覆われ、左腕に関しては二倍三倍近くになるほど、厳重に巻かれて固定されている──つまり、全身打撲に左腕の骨折の重傷である。

 痛み止めももらっているのだが、続けて飲むには時間をあけなくてはいけない。

 つまり、常に痛み止めの恩恵を受け続けているわけではないのだ。

 そして、前に飲んだのは数時間前のはず。

 ・・・・・・もしかすると、これは不快などではなく、痛み止めの効果が切れて耐えている顔なのだろうか。


 だとすれば、あぎとくんの表情筋が仕事を始めたのは、ただ痛みを耐えているからであり、そこまでしてようやく不機嫌に見える程度に顔を歪ませることができたということになる。

 ・・・・・・そうなると、逆に痛みでもないと、表情筋が全く動かないということになってしまう。

 すごいな。

 武将のそれじゃん。

 特殊な訓練を受けている人間しか、辿り着けないはずの境地にいるじゃん。

 なんで、そんないらないスキルを手に入れちゃったのかな。


 いや、うん。

 霊魂ね。

 そう、霊魂が何をしたかったかって話だった。


「・・・・・・うーん、霊能力者の柴田結衣ちゃんと、核の霊魂だった佐伯桃花ちゃんは、秋本さやかちゃんたちへの復讐でもしたかったんじゃないですか。聞く限り、良好な関係とは言えなかったみたいですし。まぁ、二人の話は結局聞けなかったから、分からないけど」


 復讐、そう、復讐というのが、一番シンプルで、二人にとっては答えに近いのではないだろうか。

 そこに殺意が有ったのか、無かったのかはしらない。

 加害性があったか、ただ自分の身を守るためだったかも分からない。

 それは私やあぎとくんではなく、政府の専門機関が調べて判断することだろう。



 佐伯桃花はもう霊魂の残骸だったうえに、他の霊魂たちも無理矢理に佐伯桃花にしてしまっていたので、思考や記憶が混線して会話どころじゃなかった。

 それに、会話しようとしても、あんな風に無理矢理イジられたのでは、信憑性のあるやり取りはできないだろう。

 確かに全員が佐伯桃花ではあったが、その全員が佐伯桃花とはほど遠い物になっていた。

 きっと、佐伯桃花も、佐伯桃花になった他の霊魂も、もう何も分からなくなっていたのだろう。

 だからこそ、左足しかない──いや左足の逸話を持つ怪異になるはずだった【鬼】は、途中から腕だの目だの口だのへと、滅茶苦茶に形を変えてしまったわけだ。



 挙げ句の果てには、ただ大きく強くなって復讐したいという強い気持ち──恐らく核の佐伯桃花と力を与えている柴田結衣のその気持ちだけが残った。

 そうして【鬼】はただ身体を大きくし、増殖していったのだろう。

 大きいは強い。

 実に子供らしい発想だ。



 だが、核ではないその他の佐伯桃花は違う。

 大きくなりたいのではなく、誰かに助けを求めていた。

 しかし、左足だけでは、誰にも助けてもらえない。

 だから、誰かに助けて欲しいその一心で、誰かを捕らえる腕になり、誰かを探す目になり、誰かに乞う口になったのだろう。

 まぁ、その口から出たのは赤子のような泣き声だったらしいので、やはり中途半端にしかその意図は伝わっていなかったようだが。



 ──そして、霊魂を操る霊能力者の柴田結衣。

 彼女にはそもそも、会うこともできなかった。

 異界から戻ってきた後、すぐにまた事情聴取が始まったし、後始末でバタバタしていた上、それが終わった頃に「柴田結衣はもうひきづり村にはいない」とだけ高倉さんに言われてしまったのだ。

 結局、写真の一枚すら見せてもらっていないので、その外見すらも分からないままである。

 まぁ、あぎとくん曰く、高倉さんは柴田結衣の監視員らしいし、不安定か攻撃的であるだろう彼女と、他の霊能力者を会わせるわけにはいかなかったのだろう。

 しかも、再びやらかした監視対象と未だに保護されていない能力者。

 それが、政府の施設外でする顔合わせだ。

 何が起こるか、分かったものではないといのは同感である。



「・・・・・・まぁ、復讐よりも「例え霊魂でも佐伯桃花ちゃんを幸せにしたくて、何者でもない者達の無何有郷をつくってみたかった」とか「かつて同じ境遇だった佐伯桃花ちゃんとお友達になったから、一緒にいたかっただけだったのに暴走してしまった」なんて方がロマンチックで夢があるし、私はそう思っておこうかな」

 夢があり、そして、その方が罪が軽そうだ。

 たとえ、秋本さやかたちが何かをした結果、それが返ってきたのだとしても、仕返しをしたのは無意識や無犯罪的であったべきだ。

 じゃないと、柴田結衣が罪に問われてしまう。


「夢ねぇ・・・・・・罪は罪だよ、わをんちゃん」

 その甘い思考をあぎとくんがやんわりと、しかし、しっかりと否定してきた。

「やったことはやったこと、してしまったことは決してなくならないさ。理由も経緯も関係ない。結果は結果なんだよ」



 息を吐く。

 あぎとくんと同じく霊能力者だからか、いじめられていたことへの同情からか、少し柴田結衣に寄った考えをしてしまっていたようだ。

 まさか、あんなに幼かったあぎとくんに、正論で諫められる日がくるとは、感慨深いものである。


「・・・・・・その通りだね」

 その言葉に同意し、柴田結衣への同情心のようなものを消し去るために軽く頭を振る。


 あぎとくんはソレを見て頷くと、マグカップに手を伸ばした。

 マグカップの中身はもちろん蜜柑ジュースであり、最近少しずつ試しているちょっとお高い飲み比べセットの瓶入りのジュースだ。

 もちろん、リンボーダンス新婚世界旅行中の男性からの贈り物である。


 最近、なぜか第二段が贈られてきた。

 入っている種類が違うが、それもやはり、国内販売製造の蜜柑ジュース飲み比べセット。

 まさか、第二段も蜜柑ジュースとは思わなかった。

 今回こそ、世界旅行土産かなにかかと思ったのだ。

 まぁ、あぎとくんは喜んでいたのでよしとしよう。

 こちらからも贈り物をしたいが、世界旅行中に届いても困るだろうと思い、帰宅してから送るつもりだった。

 だが、第二段を贈られたので、目星を付けていた焼き菓子のセットではどうも釣り合いがとれない。

 もっと数のあるセットにすべきか、それとも、もっと高価なお店の物に変えるべきか、それとも、何か他のものを足して贈るべきか。

 悩み所である。



 そして、私の目の前にもマグカップがある。

 まぁ、自分が置いた物の訳だが。

 それは幼いあぎとくんがプレゼントしてくれた、太陽のイラストつきの愛用マグカップだ。

 そしてそこに入っているのは、いつもの緑茶ではない。

 こちらもリンボーダンス新婚世界旅行中の男性からの頂き物の珈琲だ。

 いつもはお客様にのみ、淹れている物である。

 なにせ私はいつも緑茶を飲んでいたし、あぎとくんは蜜柑ジュースを飲んでいた。

 なので飲もうと思わず、長らくお客様用だったのだが、ご近所の山田さんから聞いた話だと、何かのうんこの珈琲は高級なものらしい。

 なかなか手に入らない一品なのだと聞けば、興味も沸く。

 ということで、たまには珈琲にもチャレンジしてみようと思い、自分用に淹れてみたのだ。

 現金ともいう。

 だが、高級とか珍しいと聞くと、やはり興味が出てしまうものなのである。

 そこは人間も怪異も変わらない。


 くん、鼻を鳴らして匂いを吸い込む。

 いい匂いがした。

 喫茶店の匂いだ。

 とても動物のうんこが関わっている飲み物とは思えない。


 恐る恐る、一口だけ飲んでみる。


 大人の味だ。

 そう、苦くて・・・・・・苦いなコレ。

 口一杯に苦みが広がり、その苦みは全く引いていかない。



「・・・・・・うん」

 牛乳をたっぷり入れて、カフェオレ・・・・・・いや、コーヒー牛乳にしよう。

 私には珈琲は早すぎた。

 あと、百年、いや、千年後にまた試してみよう。


 ソファーから立ち上がり、マグカップを手にキッチンへと向かう。


 ・・・・・・あぁ、そうだ。

 ひきづり村に連れて行かれた日に作ろうとしていた、あの豆乳ドーナツにも、いつか再チャレンジしたい。

 結局、生地が駄目になっていたので、捨ててしまったのだが、本当に勿体ないことをしてしまった。


 そのままキッチンの奥に進み、冷蔵庫を開ける。

 ドアポケットから牛乳パックを取り出し、耳元で軽く振ってみた。

 大丈夫だ、まだまだ牛乳は残っているようだ。

 だが、豆乳の方は豆乳ドーナツを作るとき、ずいぶんと使ってしまったので、作り直すならまた買わないといけないだろう。

 冷蔵庫の中を軽く見渡して確認し、冷蔵庫に身体を当ててドアを閉じる。



 そして、牛乳パックとマグカップを持ったまま、流し台に向かって行き、そのまま停止した。



 珈琲はマグカップに並々と注がれている。

 そして、まだまだ口内の苦みは引いていかない。

 この口内にあと一口でも、あの苦みと衝撃を入れようとは思えない。

 つまりは、このマグカップの中身をちょっと・・・・・・いや、最低でも半分程はどこかに移動させて、牛乳を注がなくてはいけないという事だ。

 勿論、私の口内以外で。


 私はあんまり冒険とかいうものが似合わない女なのかもしれない。

 女、いや、怪異か。

 冒険とか似合わない怪異だ、私は。

 慣れない珈琲なんて飲むべきじゃなかった。

 飲むにしても、少量にしておくべきだった。

 高価だとか珍しいと聞いて「じゃあ、贅沢に楽しんじゃお」などと考えて、並々とマグカップに注ぐなんて馬鹿な真似をしてしまったものだ。



「・・・・・・わをんちゃんさぁ」

 顔をくしゃくしゃにしていると背後から静かな声がした。

「わをんちゃん、嫌になった?」


「うん、珈琲って思ったよりも苦いんだね。苦いのはちょっと嫌かも」

 私はそれに素直に答え、そのまま食器棚に向かう。

 洗い物が増えるが仕方がない。

 カップに分けることにしよう。


 食器棚から来客用のカップを二つ取り出し、マグカップの中の珈琲を注ぐ。

 うん、とりあえず三分の一だ。

 ここに牛乳を入れて、味見してみよう。



「・・・・・・いや、そうじゃなくてさぁ」

 その声色が、あぎとくんにしては、かなり弱々しいことに気が付いて振り返る。

 あぎとくんがソファーに寝転がった体勢のまま、眉根を寄せて此方を見ていた。

 どうやら、本当に落ち込んでいる様だ。

 珍しい。

 思わず、瞳を丸くしてしまう。



「僕が弱すぎて嫌になったか、って聞いたの」

 それはなんだか拗ねているような、悲しんでいるかのような声色である。

 本当に珍しい。

 いつもなら「僕が嫌になったんだよね? 一緒に死のう」と言うだろうに、こんなに弱々しく、なおかつ私を殺そうとしないなんて。


 それに──


「私があぎとくんを嫌いになる?」

 私はその言葉にも驚いてしまった。

 あのあぎとくんである。

 私と一緒に死にたくて「嫌いになったんだ」なんて言って心中しようとすることはあっても、ただの恐れや不安から「嫌いになったんだ」なんて言うとは思わなかったのだ。

「どうして? そんなことあるわけないでしょ?」

 だから、本当に吃驚して聞き直す。


「・・・・・・いや、今回も全く何もできなかったし」

 あぎとくんは叱られた子供のような顔をしている。

 どうして、そんな顔をするのだろう。

 本当に、今日はよく表情筋が動く日だ。

 きっと、今のあぎとくんの表情筋ならば、初対面の人だってその感情を読みとることができるだろう。


「いやいや、高倉さんと加山さんを守ってくれたし、異界で柴田結衣ちゃんの家に行って、鍵も探してくれたでしょう。それに、私に沢山情報を伝えてくれて、今回もあぎとくんのおかげで助かったよ」

「いや、全然守れてなかったし」

「守ってた、守ってた」

 宥めても、あぎとくんに突っぱねられる。

 どうやら、私が思っていたよりも、ずっとあぎとくんは凹んで弱っていたらしい。

 怪我をしているから、その痛みで表情筋が仕事をしているのだと思ったが、落ち込みすぎてついに表情筋が動いたのかもしれない。


 手に持っていた牛乳パックを冷蔵庫に戻し、マグカップはそのままに足早にあぎとくんの元へと向かう。

 そして、その足元まで辿り着くと、床に膝をついて屈み、ソファーに寝転がるあぎとくんの首に腕を回して抱きしめた。


「言ってたでしょ? 私はこれでも怪異だから、人間より力があるのは当然なんだって。でも、人間がキチンと【怪異】を【認識】してくれないことには、始まらないし終わらせられないからさぁ。こちらこそ、あぎとくんが危ないところにもついて来てくれるの、本当に申し訳ないと思ってるし、ずっとずっと助かってるんだよ?」

 あぎとくんは未だに表情を晴らさない。

 これはかなり拗ねている。

 まぁ、異界で別行動もしたしなぁ。

 そして、また、私がピンチを助けるみたいな形になってしまった。

 多分、あぎとくんは私のピンチってやつに颯爽と駆けつけ、私を助けたいのだろう。

 とても、子供らしい発想であり、愛らしい願望だ。


「・・・・・・それに、あぎとくんがいなきゃ、私はただの【野良怪異】だしね。あぎとくんが【所有怪異】にしてくれたおかげで、人間社会で生活するには色々と便利だし、楽しいんだよ。そういう意味でも、この生活も、あぎとくんに頼らないと、私だけではどうにもできないことばっかりだよ」

「・・・・・・でも、所有になる怪異なんて、滅多にいないって聞いたし・・・・・・本当に嫌なんじゃないの」

 じとりと湿度のあるあぎとくんの瞳が私を穿つ。

 どうやら、それにも悩んでいたらしい。

 そう耳にしたのはどこで誰からなのか、問いつめてみたかったけど、それは後回しにしよう。

 この流れに乗せて、あぎとくんの考えを言ってもらって、不安を消すことを優先した方が良さそうだ。



「まぁ、なかなか所有妖怪なんていないから、不安になるよね。誰から聞いたのかはわからないけど、そんなことを聞いたら、それが真実で、それしかないと思っちゃうよね。でも、少なくても私はあぎとくんの所有怪異になれてよかったし、満足してるよ。まぁ、所有者があぎとくんじゃなかったら、私だって今頃は「所有怪異なんてごめんだ~」なんて言ってるかもだけどね」

 あぎとくんの頭を撫でる。

 あぎとくんの瞳が細められた。

 昔からの癖だ。

 撫でるとき、あぎとくんは目を細める。


 そう、昔からだ。

 私よりもずっとずっと小さな背丈の頃は、お互いに立ったままでも撫でれていた。

 なのに、今はあぎとくんが真っ直ぐに立っていてはできない行為になってしまった。

 人間の成長は早いものだ。


「・・・・・・でもね、ソレを聞かなきゃいけないのは私の方かも」

「何で?」

 間をおかずにあぎとくんが微睡んでいたはずの瞳がはカッと見開き、問いつめてきた。

 その瞳は血走っている。

 さらに、骨折していない方の手がガシリと私の肩を強く掴んだ。

 嘘は許さない、という凄まじい圧を感じる。

 あぎとくんの虎の尾を踏んでしまったかもしれない。

 だが、ここで下手に誤魔化すと余計に大変なことになる、というのが私の経験則だ。



「・・・・・・いやぁ、そもそも私は終わりの象徴、そういう怪異でしょ? 私と居れば、終わりに近づきすぎるかもしれないなぁ・・・・・・って」

 私はあぎとくんの瞳を真っ直ぐに見つめられずに、ゆっくりと目線を下げていく。

 あぎとくんと一緒に居ればいるほどにそう感じる。

 早くあぎとくんから離れなくては取り返しが付かなくなりそう、そういう予感。

 せめて私が空亡なんて、終わりの象徴でなければ、こういう不安を感じることもなかったかもしれない。

 だが、空亡でなければあぎとくんのストッパーとして推薦はされなかっただろう。

 ままならないものである。


「時々、あぎとくんの為にも、もうお終いにした方がいいのかもしれないと思っちゃったり・・・・・・する、かもしれないかな」

 朝に磨いたばかりの床を見ながら小さく呟く。

 それが、私の本音で、不安だ。


「勝手に終わりにしようとしないでくれ!!」

 あぎとくんが叫んで、勢いよく体を起こした。

 そのまま、襟首を掴まれた私はバランスを崩して、あぎとくんの上に倒れ込む。

 全身を包帯で巻かれたあぎとくんの上に。



「ちょ! ご、ゴメン!! 痛かったよね! 離れる!!」

「離れなくていい! 離れないでくれ! そんなことは、もう覚悟できてるんだよ、こっちは!! もうずっと前から!! だから、いいの!!」

 怪我をしたあぎとくんの上に倒れ、起きあがろうともがく私は、けれども、あぎとくんに自身に引っ張られて起きあがれない。

 そして、痛いほどに抱きしめられた。



 息が詰まる。



「そんなことはそうでもいい!! 別に、わをんちゃんになら、全部終わらせられても良い!!」



 終わり、終わらせられる。

 それは何をだろう。

 あぎとくんとの関係か、あぎとくんの命か。

 私は──




「わをんちゃんは、わをんちゃんの愛で僕を殺してやる位思ってればいいんだよ!!!」




 思考を巡らせていた脳が停止した。




「ねぇ・・・・・・わをんちゃん」

 完全に固まった私にあぎとくんが優しく呼びかけてきた。

 甘ったるい声に顔を上げると、優しい瞳と目が合った。

 まるでそう、私という怪異の全て受け止めようとでもするかの様な優しい瞳だ。


「わをんちゃんはさ、僕のこと好き? 好きって言ってくれ。それだけで、僕は百回死でも百回生き返ってみせるから」




「私は・・・・・・」




「私が・・・・・・君を好きかだって? あぎとくん」

 そんなことは決まっている。

 眉が下がる。

 困惑も不安もある。

 でも、勿論。



「私はね、君の瞳を覗くといつだって常初花を愛でる気持ちになるんだよ、ずっとずっと昔から、ずっとずっと未来でもね」



 あぎとくんにそんなことを言われて、嬉しくないわけがなかった。

 思わず口角が上がっていくのが分かる。

 そんな情けない照れた顔を見せたくなくて、あぎとくんの胸に顔を押しつけて顔を隠す。





「仲がよろしいようで、何よりです」

 急に聞こえた第三者の声。

 勢いよく、そちらを見れば、扉を背にした男性が部屋の中に立っていた。

「お久しぶりです。その件はお世話になりました」

 男性は手に持ったハンカチで何度も何度も額を抑え、汗を拭っている。



 そこに居たのは高倉護、その人だった。



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