表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/51

四十三話 ひきづり村と個の意識




「うわ、キッショ!!!!!」

 最後の視界まで共有してしまった私はお腹から声を出した。

「いや、キッショ!!!!!」

 だが、共有した視界だけがキショいわけではない。

 そう、私は私で実にキショい目に会わされている。



 食品工場跡でこちらを振り返った佐伯桃花の死体達。

 まぁ、怖いけど、吊されているしな・・・・・・と思ったのだが、それは甘かった。

 その内の一体が落ちたと思った瞬間に、次々と佐伯桃花の死体達が地面に落下。

 そして、それが、私の背後から押し寄せてきている──というわけである。



 逃げている最中に、あぎとくんの方でも鍵になるものを見つけることができたのか、異界同士の交わりが濃くなり、干渉できるようになった。

 だからこそ、伝言を伝えることができたのだが──



 振り返ると、そこには右足のない少女の大群。

 それが片足で飛びながら追いかけてくる──まさに悪夢のような光景。

 しかも、その少女達は一人残らず同じ顔というおまけ付き。



「さすがにキッショいて!!!」

 コーナーで差を付けて撒きたいが、少女達は片足跳び移動だというのになかなか距離が開かない。

 もしかすると、私の走行速度が遅すぎるのかもしれない。

 異界から帰ったら、ランニングとかした方がいいだろうか。


 再び、眼前に現れたコーナーを曲がりながら、後方に視線をやる。

 当然のように、死体達の顔には全く疲労の色は見えない。

 もしかすると、死体だから疲労などないのかもしれない。

 だが、いくら死体といえども、片足跳びなのだ、誰かは脱落したり、転けても良いと思うのだが、そんな様子は微塵もない。

 しかも、全ての佐伯桃花の脚が寸分違わずに地を蹴るので、彼女が飛ぶ度に辺りには轟音が響いている。

 その音は巨大な一体の獣の足音のようだ。

 なんて、心臓に悪い行進なのだろう。

 しかも、行進しているのは片足の死体の大群なので、余計に心臓に悪い。

 心臓の弱い方はご遠慮ください、なんていうものの筆頭にくるべき光景だ。




「年寄りの心臓止まるでしょ、これ!! あー、やだー!!!」




 再び、コーナーを曲がる。

 佐伯桃花の大群の最後尾が見えた。



「はい!! 一周!! まわりすぎた!!」

 最悪だ。

 とにかく角を曲がりすぎて、ついに一周まわってしまったらしい。

 佐伯桃花を撒きたい一心で何度も角を曲がったら、この有様である。

「私の馬鹿!!」


 その大声に反応し、最後尾にいた佐伯桃花が此方を振り返った。

 佐伯桃花のどろりと濁った瞳と、しっかりと目が合う。

 そして、それに続いて次々と佐伯桃花達が此方に振り返ってゆく。


「無理無理無理無理!!!」


 跳ねるように方向を変えるも、その先にはやはり佐伯桃花がいた。

 避けようとして方向を変えるが、それもまた失敗する。

 というか、四方八方を佐伯桃花に囲まれている。


「ちょっ!! 無理ぃ!!!」

 自分の身体にブレーキをかけようとして失敗した。

 止まることに失敗した身体は、そのまま勢い余って、バランスを崩す。


「あ”!?」


 そして、バランスを崩したせいで、そのまま佐伯桃花にタックルをしてしまった。


 そう、そのままタックルしてしまった。

 霊魂といえど、その姿形は幼い子供のソレに。

 思ったよりも、ずっと小さくて軽い身体が地面に倒れた。


「うわ! ごめん!!」

 反射で謝ってしまった。

 なにせ、姿形は子供だ。

 罪悪感も生まれる。



 だが、声をかけている間に、再び佐伯桃花倒れた。

 そう、再び佐伯桃花倒れたのだ。

 倒れた佐伯桃花ではない、彼女が──次々と。

 そして、全ての佐伯桃花が地面に倒れていく。



 食品工場。

 そこで、靴を落とした時のことを思い出す。

 そう、一つの脚から靴が落ちた瞬間、全ての脚から靴が落ちた。


 今と同じように。


 ──つまり、そう、コレは【個】ではないのだ。

 否、これは【個】をまだ認識できていない。

 まだまだ、未熟すぎて【個】へ切り離しが失敗している。

 もしかすると、切り離すという考え自体がないのかもしれない。


 だとすれば、一つ。

 そう、一つで良い。

 一つを倒せば、全部倒れる。


「・・・・・・いや、もう、日の出が来る!」

 私は追い立てられたネズミのように走り出す。

「さっさと廃神社に行って包丁を回収して、向こうに──」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ