表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/47

三十五話 ひきづり村と下準備



<side:犬神あぎと>


「彼女の部屋を探させていただきましょ」

 高倉護がついに決意を固めたようにそう言った。



「あ? 逆に、そんな怪しい場所に、まぁだ行ってなかったのかよ!?」

 そんな高倉護の言葉に、一番早く反応したのは加山和雄である。

 怒り狂った熊のような男に、吼えかけられた高倉護はビクリと一瞬身体を震わせる。

 しかし、犬神あぎとの身体に巻き付けた腕に力を入れ、逆に加山和雄を睨みつけてみせた。

「仕方なかでしょう! 拒否されとったんですよ、拒否! まさか、無理矢理、女の子の部屋に入って調べるわけにもいかんでしょうが!」

「現実の方で探しておけば、こんなとこになってないだろうが!!」

 怒りからか、加山和雄の手にも力が入り、犬神あぎとの肩が嫌な音を立てる。

「おい、肩」

 犬神あぎとが顔を歪め、加山和雄の方を振り返るが、興奮しているせいか、彼の耳には全く聞こえていないようだ。


「そもそも、こっちだってねぇ、明日には・・・・・・いや、なんなら今日だって、すぐ近くまで行っとったんですよ!! やけど、佐々木さんが来襲してて、ソレどころじゃなかったんです!! 仕方ないじゃないですか!!」

「あ”ぁ!? 佐々木ぃ!? あのババアにビビって、入れなかったってことかよ!? テメェがチキンなせいで、手遅れになったってことじゃねぇか!!」

「な、誰がチキンですか!? あなたは本当に失礼な人ですね!! あっちはねぇ、子供の足を持っていたんですよ!! 子供の足!!

 というか、ソレを言うなら、そもそも駐在所に行ったときに、貴方が全て話してくれていれば、わざわざこんなに時間をかけずに済んだんじゃないですか! そもそも、話を聞きに行っただけで、あんなにも怒り狂って私たちを追い出すことないでしょうが!! 貴方にだって非があるのに、全部私のせいみたいに言うのは辞めてくださいよ!!」

「あんだと!? テメェ、黙って聞いてれば、生意気な口をききやがって!!」

「はぁ!? ちょっ、頭を掴まないでください!! 本当に野蛮な人だな!!」

 加山和雄と高倉護が唾を飛ばしながら、吼え合いを始めた。


 犬神あぎとの身体の一部を掴みながら、である。

 つまり、犬神あぎとはその喧嘩に強制的に巻き込まれていた。

 さらに犬神あぎとを掴む二人の手にも、徐々に力が籠もっていく。

 彼のその鋭い牙が生えた口が、ひくりひくりと神経質に動いた。



「・・・・・・僕を掴みながら喧嘩を続けるなら、このまま腕の海に落とす」

 犬神あぎとがそう言いながら、上から落ちてきた腕を鬱陶しそうに払い除ける。

 その額には太い血管が浮かび、脈打っていた。

「今コレは、ただ増殖して自分を広げていく事に執心している。だから、それ以外の事には興味を示していない。

 けどな、満足行くまで増殖し終わったら、次は餌の時間だ。俺たちはさぞかし、いい養分になるだろうよ」

 二人は文句を言いたそうに犬神あぎとを睨み上げていたが、付け加えられた言葉で完全に沈黙した。


「ぉうぁあおぅあぁああ」

 どこからかまた嬰児の声が上がる。

 近いような遠いようなその声は村中に響きわたり、反響し続けていた。



「柴田結衣ちゃんの家に行こう。わをんちゃんが今どこにいるとしても【全てを終わらせるための下準備】をしているはずだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ