三十三話 ひきづり村ともう一つの異界
ここは、ひきづり村から出る為の山道・・・・・・であるはずだった。
だが、そこから、どれだけ進んでも出ることはできない。
進めば進むほど、見えているはずの山道の先が遠くなる。
近寄れば近寄るほど、更に距離があいていくかのようだ。
こういうものを無限というのだったか。
しかし、逆に山道を背にすると、すぐに村へと辿り着く。
これは村の外にでるのを妨害されている、のではない。
恐らく、これはないのだ。
そう、この先には何もない。
存在しないのである。
ゲームでいうところの【そもそも作られていない】ステージ。
妨害されているのではなく、何もないからその先には行くことができない、ということだろう。
つまりだ。
「やはり、ここは異界・・・・・・ってことですね」
人が見当たらないわけだ。
異界なら、そもそも人間がいるはずがない。
あの落ちてきた腕に気を取られた隙に、異界に取り込まれたのだろう。
否、きっと、玄関が削れた瞬間から、何かを仕組まれていたに違いない。
溜め息がでる。
脳裏に過ぎるのは、行方不明になったという子供たちのこと。
これでは、村のどこを探しても、子供が見つからないはずである。
子供たちも、やはり異界に隔離されていたのだろう。
だが、この異界はかなりお座なりだ。
ステージの造り込みが甘過ぎる。
とりあえず、急拵えで作ってみたという感じである。
異界の核を壊せば、すぐに何とかなりそうなほどには、脆くて小さな異界。
だから、核を壊せば、すぐに現実に戻ることができるだろう。
──だが、それができるのは私だけだ。
私については、ついでやおまけ、なのではないだろうか。
『出たいなら、さっさと出ればいい』という意図が透けて見える。
・・・・・・だとすれば、本命の異界が他にあるのだろう。
そして、そちらには、あぎとくんたちが閉じこめられているはずだ。
「核を壊して現実に戻り、現実から向こうの異界を壊す手段を探す、というのが教科書的なやり方ですよね。いや、うん・・・・・・でも異界を作った【鬼】が同じなら、どこかで異界は繋がっているはず・・・・・・その繋がりを発見できれば、ショートカットできるかもしれない・・・・・・」
思考を巡らせていると、唐突に単語が思い浮かぶ。
【佐伯桃花の左足を包丁で切ったのは秋本さやか】
佐伯桃花。
左足。
自殺。
包丁。
秋本さやか。
霊魂。
鬼。
「佐伯桃花が発見されたのは【工場】だったはず・・・・・・」
そう、校長の死体が発見された、あの食品工場跡地だ。




