三十話 ひきづり村と産まれたもの
「クソ!! おい、飲んだくれ!! 高倉さん背負え!!」
獰猛な牙を見せ、あぎとくんが叫ぶ。
その言葉を受けて、高倉さんを背負おうとした私の腕が引かれ、そのままあぎとくんに背負われてしまった。
「高倉さん!」
私が高倉さんの名前を叫ぶ。
「くっそ!!」
耳元で低い罵倒。
いつの間にか戻ってきていたらしい加山さんが私の隣にいた。
加山さんが、私の手から高倉さんを奪うように取り上げる。
そして、高倉さんの身体を担ぎ上げ、振り回すようにして駆け出し始めた。
「おい、テメェらもさっさと走れ!!」
その顔面だけで此方を振り返った加山さんが叫んだ。
あぎとくんがその声を受けて、走り出す。
「無理無理無理無理、というか、でかすぎんでしょうが!! 怪異系の世界に怪獣出すのはさぁ、ずるでしょ!! そんなん、私達の方に巨大ロボットがないと釣り合いとれないって!!」
私が叫んだ瞬間、左足が爆発した。
いや、破裂した。
そして、破裂した左足から、腕が濁流のように流れてくる。
寄生虫。
以前、本家から依頼されて、連絡を取れなくなった子供を探索したことがある。
まずはその子供が一人暮らししていた部屋へと向かい、調査をした。
その時、冷蔵庫に大きな生肉の塊が残っていたのだ。
──その生肉は、動いていた。
そう、あの生肉には夥しい数の──
「あ”ー、もう、やだぁ!!!」
私は自分の足で走ろうと暴れ、あぎとくんに掴みなおされた。
それどころか、軽々と上に放られ、私はあぎとくんの背中にしがみつく。
「舌噛むから、口閉じて!!!」
返事をする暇もなく、四足歩行となったあぎとくんが駆ける。
「あ”ぁ!?」
遙か上空から堕ちてくる腕を指を、あぎとくんがステップを踏むように避けていく。
そして、そのまま驚愕の表情を浮かべる加山さんを抜いて、更に前へと駆け抜ける。
左足との距離が開いていく。
だというのに、なぜか嫌な気配が消えない。
その嫌な気配の元を探すように、視線を上げる。
腕の付け根のその先。
上空。
そこには渦巻くように手が寄せ集まっていた。
まるで、何匹もの蛇がとぐろを巻いているかのようだ。
そして、それがゆっくりと大きくなっていく。
いや、違う。
とぐろが大きくなっているのではない。
あれは、あのとぐろを巻いた腕の固まりは、此方に向かって──
「腕が空から落ちてきてるー!!!!!」
蚊でも叩くような、羽虫を払うような、世界を破壊するような一撃だった。
私はあぎとくんごと、空中に投げ出される。
そして、破壊された地面が、瓦礫が視界を遮って──




