表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/49

二十三話 ひきづり村と霊魂たち




「鬼だと?」

 加山さんがいの一番に噛みついてきた。

 とにかく私たちに敵対したいし、霊能力者の粗をつつかなければ、その気が済まないのだろう。

「鬼なら怪異だろうが!! テメェらの仕事だ!!」

 こうしてみると唸る熊そのものだ。

 頭部を狙ってきそうな凶悪さがある。




「いや、鬼は鬼でも、怪異の方の鬼ではない。そもそも、日本でいうところの【鬼】じゃあないんですよ、これは・・・・・・」




 鬼。

 鬼文化。

 それは元は隠からきたといわれる、こともある。

 いくつもの時代が過ぎた為に、その由来が沢山あるということだ。



 その説の一つが中国からやってきた概念と交わった、というものである。



 そもそも、中国の【鬼】とは【死んだ人間】のことなのだ。

 日本で言うところの幽霊である。

 中国では死んだ者は鬼になるのだ。

 そしてその鬼は二つの性質、善い鬼と悪い鬼に分けられる。

 善い鬼は神に近い性質となり、悪い鬼は人に徒なす性質となるのだ。

 そう、そこには確かな区別があるのである。

 区別はあるのだが、それでも中国の考えでは、全ての死人は鬼となるとされていた。



 ──そう【これ】はそういうものなのだ。



 そもそもが、霊魂、いや中国の鬼に近い性質──だったはずのもの。

 ただの死人、ただの幽霊、ただの鬼──だったはずのもの。

 それは【日本】という国では、その大半が上手く形を取ることができず、いずれ自然に消えていくはずのものだった。


 それが【核】という名の【起爆剤】を得てしまったのだろう。

 いや【何者か】に与えられてしまったのだ。

 その結果【鬼】が寄せ集まって、全く違う【何か別のモノ】になろうとしている。



 ──ただの【霊魂】だったはずのものが【怪異】になろうとしているのだ。



 ・・・・・・きっとここまで形を作るために、いくつかの【きっかけ】があったのだろう。

 いや、あったというよりも、それが【きっかけ】を作ったというべきか。

 そして、その【きっかけ】を補強し、更に追加しながら、それは【怪異】としての自分に名前が与えられるのを待っているのだ。



 左足を持って帰る子供。

 左足を残して失踪する子供。

 かつて、左足を切り取られて【自殺】した子供。


 子供というのは、霊魂や怪異からの影響を受けやすい。

 それと同時に、霊魂や怪異への影響を与えやすい存在だ。

 だから、子供を餌にして、材料にして、より力を得るのは賢い選択だろう。

 その事件が、噂が、人々に囁かれ、畏れられ、より力を蓄えることとなったに違いない。


 ──子供たちも校長も、いや、もしかすれば村全体が「もしかしたら、あの子の祟りなのでは」と一人の姿を思い描いた。


 同情か、恐怖か、悔恨か。

 知ったことではないが、ソレはそこに漬け込んだ。

 いや、ソレは最初からそうなるように、誘導さえしていたのかもしれない。

 そうして、ソレは力を付けていき、ついに大人の校長にすら影響を出して、殺した。


 ──かつて、亡くなった少女の死をなぞるように。


 ・・・・・・いや、恐らく、その少女もソレの核を担う一つではあるのだろう。

 だが、これは一つの【鬼】という存在ではなく、集合体だ。

 殺した校長も取り込んで、更に力を増し、また一人大人を殺した。

 ソレの一つが新田さんに恨みがあったのか、それともただ目に付いただけかは分からない。



 だが、やはりまた【左足】に纏わる物語を紡ぐように、殺された。



 左足。

 左足。

 成る程、怪異譚を作りやすそうな題材じゃないか。

 わざとらしい程に。



「・・・・・・じゃあ、僕らが見た校長や、わをんちゃんが見た新田さんって」

「幽霊だよ、勿論」

 あぎとくんの疑問に、私は答える。

 幽霊かどうかなんて、そんなものは愚問である。

「死んだ人間が現れたなら、勿論それは偽物か幽霊に違いないでしょ」

「まぁ・・・・・・だろうね」




「今この村はその【鬼】の影響で「幽霊が出やすい」土地になっているんですよ。まぁ、元々いい土地じゃあなかったみたいですけどね。そこに【左足】のコレですよ。いや、【左足】を使う何か・・・・・・【鬼】の登場です。

 そりゃあ、出やすくもなりますよね。

 そして、ソレが更にその幽霊達を呼び込んで、取り込んで、人間に手を出している。食事をして、物語を作りだし、何者かになるための準備を重ねている。





 きっともうすぐ産まれますよ、名前を得た化け物、が」





 霊能力者が失敗するはずだ。

 ここには【怪異】など存在しないのだから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ