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十五話 ひきづり村と沢山の死体




 死んでいたのは福本さんだった。

 先ほどまで学校にいた、私達を見送っていたはずの女性。



 ──だが、吊られた彼女の首は伸びきっている。



 つい先ほど吊ったようには見えない。

 いや、それどころか、亡くなって一日や二日どころではないのだろう。

 すでに、腐敗は進み、死臭が辺りに立ちこめていた。




 そして、彼女の死体には左足がなかった。




 彼女の死体を見上げる。

 五メートルはある天井で、彼女は首を吊っていた。



 否、彼女だけではない。

 そう、彼女だけが吊されているわけではないのだ。


 彼女と並んで天井から吊されているのは、昆虫から小動物と大小さまざまな死骸である。

 それが、まるで赤子をアヤす為のおもちゃや装飾品の様に吊り下げられていた。

 猫は辛うじて首を絞めて吊されている。

 しかし、他の動物や昆虫は、もはや吊せるならば何でも良かったのか、身体に穴をあけて吊していたり、首から下が取れてしまっている昆虫までいた。


 そして、そのどれもが当然のように死んでいた。


 彼女が一人が吊したと考えるには、あまりにも数が多すぎる。

 その上、彼女自身の左足は見あたらないし、辺りに足場になりそうなものもない。


 いや、あえて──そうあえて、不審な物をあげるとするならば。

 小学生用と思われる小さな机。

 それが二つ積み上げられてはいる。

 無論、それだけで天井にとどくような物ではない。



 だが、それでも、ソレはそこにあった。





 机に貼られたシールには柴田結衣と、そして──







「深夜の工場で死んだのって、女の子、ですか?」

 私は思わずそう口に出す。




「・・・・・・えぇ、そうですな」

 そして、返ってきたのは肯定。




 佐伯桃花と書かれたボロボロの机。

 その二つの机にはそれぞれ、枯れた菊の花を飾る瓶が置かれており、地面には掠れてほぼ読みとれない「佐伯桃花が消えますように」と言う真っ赤な文字と新しい「柴田結衣が消えますように」という真っ赤な文字が残されていた。




「・・・・・・えぇ、その子です」





「三年前、そのこが深夜に工場に忍び込んで・・・・・・左足のない【自殺体】で発見されたと聞いとります。それに・・・・・・あぁ、そうやった、福本さん・・・・・・帰って来とらんって聞いとったんです! それなのに、あんなに堂々と学校に! クソ! 堂々としすぎて、そんなはずないと思うて・・・・・・」






「つまり、三年前からジワジワと【呼び込んでいた】わけだ」

 私はポケットに突っ込んでいたノートの切れ端を広げた。








【佐伯桃花の左足を包丁で切ったのは秋本さやか】

 くしゃくしゃに丸められたそれには、確かにそう書かれていた。



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