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呪いの一族と一般人

欠片集め3

作者: 守明香織

お久しぶりです。10章後編が投稿できるまでまだ時間がかかりそうなので、以前執筆途中でお蔵入りにした「壮太郎の誕生日」の話を投稿します。長いため、何回かに分けての投稿となります。読まなくても問題ないように本編は書いていくつもりですので、気が向いたら読んでいただけますと幸いです。



*** 欠片5 誕生日と待ち合わせ ***



「いい天気でよかったね!」

 

 優しい色合いの薄青い空と冬の柔らかな太陽の光。

 やはり、めでたい日は天気が良いと気分まで晴れやかになる。

 

 車の助手席でニコニコ笑顔を浮かべる()(より)とは反対に、運転席にいる(あお)()は面倒臭そうな顔で溜め息を吐いた。


「誕生日を祝うって、何か意味があるのか? ただ生まれた日なだけだろう」


「碧真君。これから(そう)()(ろう)さんの誕生日パーティーだっていうのに、情緒のなさ全開でぶった斬るのはやめない?」

 

 二〇二〇年十二月二十一日、今日は壮太郎の誕生日だ。


 (あつ)()()()に誘われて、壮太郎への日頃の感謝を込めて一緒に誕生日祝いをしようと計画を立てていた。サプライズではなく、事前に壮太郎本人と(から)()()に了承をとっている。


 壮太郎は夕方から(じょう)と遊びに行く予定がある為、時間が空いているのは昼のみ。唐獅子が料理を用意するので、日和達はケーキや飲み物を買う係だ。


 日和の策略(?)で碧真を参加させる事はできたのだが、やはり乗り気ではないのかテンションは低い。今は十時なので、朝が苦手な碧真としてはまだ早い時間ということもあるのだろう。


 駐車場に車を()めて、碧真と日和は待ち合わせ場所である駅へ向かう。


 クリスマスが近いということもあり、駅前の広場には巨大ツリーが飾られ、街路樹やベンチにもイルミネーションのための装飾が施されている。ツリー周辺には出店らしきものが複数あり、クリスマスに関連する雑貨等の販売が行われていた。


 今日は月曜日なので平日ではあるが、都市の主要な駅ということもあり、多くの人が行き交っていた。


「人多いね。篤那さんと俐都君、見つかるかな?」

「いたぞ」

「えっ!? 見つけるの早すぎない!?」

 

 驚いて振り返った後、日和は碧真の視線の先を見て固まった。

 

 駅ビルのショーウィンドウの前で、両手を頭の上で合わせてピンと背筋を伸ばして立つ篤那がいた。

 

「帰るか」

「碧真君、待って。見捨てる判断も早すぎるよ!」


「あんな変な奴に関わりたくない」


「もしかしたら何か理由があるかもしれないよ? この場を浄化してるとか、神様と対話してるとか!」


「より嫌すぎるだろう」


「でも、篤那さんが変な行動をしてたら、俐都君が止めるでしょ? だから、あれにも何か意味が……。あれ? 俐都君がいないね。どこか行ってるのかな?」


「小さいから、いても見えないだろうけどな」


「私と同じくらいだから、そんなに小さくないでしょ。とりあえず、私が篤那さんに声をかけてくるよ。買い物の時間も減っちゃうし」


 日和が一人で行こうとすると、碧真は渋々とついてきた。近づいていくと、篤那がカッと目を開く。日和達を見た篤那は、何故かドヤ顔をした。


「やはり思ったとおりだな。俺には待ち合わせスポットの才能がある!」

「えっ?」


「こう人が多くては出会えないかもしれない。俺が待ち合わせスポットの電波塔として(いっ)(せい)(ふう)()したら、日和とツンデレ君も俺の存在に気づいてくれると思ったんだ! 良いアイディアだろう?」


「変人として目立ってただけだろうが」


 キラキラとした目で語る篤那には申し訳ないが、日和も碧真と同意見だ。

 篤那はハタと何かに気づいた顔をする。どうしたのかと思っていると、篤那は深く考えるような表情や腕組みをして、碧真の足をじっと見つめ始めた。


「……ツンデレ君は美脚の可能性があるな。ちょっとズボンを脱いでみてくれるか?」


「はあ? おい、ふざけるな!」


 篤那が屈んで、碧真のズボンを掴もうと手を伸ばす。碧真が後ろへ下がって避けたので、手を繋いでいた日和も引っ張られてしまう。急に体勢が崩れ、日和は大きくよろける。近くに人がいたのか、ぶつかってしまった。


「すみません! ……あ! 俐都君」

「よう。だいぶ元気になったみたいだな」

「おかげさまで」


「んで? 何やってんだよ。篤那」


「ツンデレ君の美脚審査をしようとしたんだ! 美脚の原石かもしれない! 俺達で協力して磨いていこう!」


「お前、まだそんなふざけたこと言ってたのかよ。いい加減にしろよ」


 どうやら、俐都には通じる話らしい。碧真はイライラした様子で俐都を睨みつけて舌打ちをした。


「何でこの天然野郎を野放しにしたんだよ。ちゃんと見張っておけ」


「仕方ねえだろ。こいつが先に一人で行っちまったんだから。それに、こいつは俺が見張ってても、変な行動はするからな」


「と、とりあえず、全員揃ったし。買い物に行こう? 遅くなっちゃいけないし。ね?」


 碧真は今にも帰りたそうな不機嫌な様子だ。雰囲気を変えようと日和が提案すると、篤那が頷いた。


「そうだぞ。俐都とツンデレ君、いつまでも遊んでいてはダメだ。しっかりと任務をこなさなければな」


「「お前が言うな!!」」


(なんか、前途多難な気がする……)


 無事に仲良く誕生日パーティーができるのか、日和は早くも不安を感じた。




*** 欠片6 待ち合わせ前。思い出の味とパーティーグッズ ***



「思ったより早く着いたな」


 改札から出た俐都は、携帯で時間を確認して呟く。碧真と日和と会う約束をしている時間まで、あと一時間ほどの余裕があった。


 人と約束がある時、俐都達はなるべく早めに行動するようにしていた。理由は、篤那の好奇心による奇行のせいで、予定通りに行かないことが多いためだ。今日は篤那が眠そうにしていて奇行が少なかったおかげで、スムーズに駅に到着することができた。


「もう店は開いているみてえだし、ケーキ屋の下見でもしておくか?」

「……俐都。寒い。喉が乾いた。あそこに行こう」


 篤那が指を差したのは、某有名カフェチェーン店だった。

 今日はいつもより寒いからか、篤那はガタガタと震えている。休憩と暖を取るために寄るのもいいだろう。


 俐都は頷き、二人でカフェに入る。月曜日ということもあり、店内には出勤前の会社員らしき人達が並んでいた。


「篤那、何頼むか決まったか?」

「ホリデー期間限定のフラペチーノに決めたぞ!」


「そんなにガタガタ震えているくせに、冷たいのを頼もうとするな! 温かいのにしろよ」

「これは今しか飲めない。俺は今という時間を大切に生きていきたいんだ!」

「今を大事にするなら、何よりまず暖を取れよ」


「俐都があとでギュッて抱きしめて温めてくれるから大丈夫だ」

「ありもしない妄想を確定事項みたいに言うんじゃねえ」


「むう。それなら、あとで日和で暖を取ろう。抱きしめたら温かくて柔らかいし、いい匂いもする。お得な三点セットだな」


「問題しかねえ発言はやめろ! それに、そんなことをすれば、あのクソガキに本気で殺意を向けられるぞ」


「大丈夫だ。俺の腕は二つある。ツンデレ君ごと抱きしめればいい」


「ドヤ顔で言ってるが、絶対に平和的な解決はしねえし、より殺意が増すだけだ。それより、限定のやつが飲みたいなら、同じやつのホットもあるみてえだぞ」


「! それなら、ホットにする」


 頼む物が決まったところで、タイミングよく注文の番になる。二人分会計したあと、目の届くところに座るように篤那に言って、俐都は受け取りの列に並んだ。そわそわと落ち着かない篤那に「大人しくしろ」と目で訴える。無事に飲み物を受け取り、篤那が座っている席へと向かった。


「! うまい!」

 

 篤那は一口飲んだあと、パアッと顔を輝かせる。俐都も篤那と対面の席に座り、自分の飲み物に口をつけた。甘い香りとじんわりと体を通っていく温かさに、ホッと気が緩む。


「久しぶりに飲むと甘いな」

「俐都はいつものキャラメルか。本当にキャラメルが好きだな」

「まあな」


 俐都にとって、キャラメルは思い出の味だ。


 幼い頃に両親と電車に乗って出かけた時。母親がキャラメルの箱を取り出し、一粒ずつ手渡して、三人で食べた。家族で笑い合って美味しいものを食べた幸福な思い出。当時の温かさがキャラメルの甘さと一緒にジワリと胸に広がるのだ。


「俐都。そういえば、唐獅子はクラッカーを準備しているのか?」


「用意してねえだろう。唐獅子さんは、料理と部屋の飾り付けで忙しいからな」


 唐獅子はネットスーパーか、人外や人外と縁がある人間達が運営する秘密の商店街で食材や日用品を入手しているようだ。俐都も何度か唐獅子に人外の店に連れて行ってもらったことがあるが、普通のクラッカーが売られているところは見たことがなかった。


(まあ、部屋の飾り付けをするくらいだから、ネット通販で買っている可能性もあるのか?)


「それなら、俺達で買いに行こう! パーティーにクラッカーは必需品だ!」


 確かにクラッカーがあれば、よりパーティーの雰囲気は出る。

 壮太郎も唐獅子も、そういうのは嫌いではない筈だ。クラッカーがあるかわからないのなら、俐都達が買って持って行って、そこで使うか使わないか判断するのもいいだろう。


 俐都は携帯を取り出し、パーティーグッズを売っている店が近くにあるかネットで検索する。今がクリスマス時期ということもあってか、駅ビルの中にパーティー向けの特設コーナーがあるようだ。そこなら、クラッカーもあるだろう。


「近いし、時間もあるから行ってみるか」


 休憩後、俐都は篤那と一緒に売り場へ向かう。

 赤と緑のクリスマスカラーに溢れた売り場を見た篤那が子供のように目を輝かせた。


「俐都! サンタの服があるぞ! トナカイも!」

「いや、クラッカーを探せよ」


『篤君、これなんかいいじゃないか?』


 俐都の守り神、()(うん)(てん)(りゅう)(こうの)(みこと)が差し出した物を篤那が受け取る。パッケージを見た後、篤那は深く頷いた。 

 

「ミニスカサンタか。俐都に似合いそうだな」

「ぶざけたこと言ってんじゃねえよ」


「だが、壮太郎も喜びそうじゃないか? 今年最後の大爆笑を巻き起こせる。俐都は壮太郎を笑わせたくないのか?」


「俺がそれを着た場合、壮太郎さんは心の中で爆笑しながら、表面では大丈夫かと気遣って、黒歴史に仕立て上げる方を選ぶだろうからな」


「そうなのか? 壮太郎への理解が深いな。爆笑を生み出せないのは残念だが、日和に着てもらおう。萌が生まれるかもしれない」


「やめろ。それ立派なセクハラだからな」


「だが、それだと消去法で、ツンデレ君に着てもらうしかなくなる。……ツンデレ君は美脚だろうか?」


「知らねえし、まず勝手に人を選択肢に入れるなよ。クラッカーを買いたいなら、それは置いてけ」


「わかった」


 クラッカーの方が欲しいからか、篤那は手に持っている商品を素直に棚へ戻そうとする。流光が慌てて止めるように手を差し入れた。


『待てよ! せっかくだから、どっちも買えばいいだろう。俐都ちゃんのサンタ衣装、篤君も見たいだろう?』


(からかって遊ぶつもりなんだろうが、買っても着ねえからな! ふざけたこと言うなよ!)


『俐都ちゃんだって、幼稚園のお遊戯では着てただろう? あれ可愛かったから、もう一回見たいんだよぉ』


(成人男性が、いつまでも園児並の可愛さを持ち合わせていると思うなよ。どう考えても大事故だろ。それに、小さい頃だって、クリスマス用の帽子を被っただけで、ミニスカ衣装なんざ着てねえよ! 記憶捏造すんな!!)


 まだごねようとする流光を無視して、俐都はクラッカーを探す。先にクラッカーを見つけた篤那が早足で棚へと近づいた。


「俐都、バズーカがある。これにしよう」

「やめろ。前に宿でやって怒られたのを忘れたのか?」

「忘れていない。あれは楽しい思い出だったな」

「俺は楽しくねえ思い出なんだが!?」


 深夜の二時。篤那は俐都に内緒で買っていたバズーカクラッカーを理由もなくぶっ放した。飛び起きた俐都に待っていたのは、宿からの苦情と周りへの謝罪だった。


「壮太郎の家は防音仕様だから、ご近所さんトラブルも起きない。ド派手な祝砲をぶっ放そう!」


「部屋の外に被害が出なくても、中にいる俺達には爆音で聞こえんだよ! とにかく、普通のにしろ。散らからないやつでな」


「あ。パリピポメガネがあるぞ!」

「パリピポって何だよ! そして、それは鼻メガネだ! おい! クラッカーはどうしたんだよ!?」


 篤那は好奇心のままに売り場の中を移動する。ようやくクラッカーを購入するためにレジに並んだ時には、待ち合わせの時間まであと五分になっていた。


「会計してたら、約束の時間に間に合わねえな。日和達に連絡しとくか」

「俐都、それは不要だ。ここは俺に任せて先に行くんだ!」


「いや、先って何だよ……って、おい! 篤那!」


 篤那はキメ顔のまま、颯爽と列から離れてエスカレーターへ向かう。レジにいる店員に「次の方」と呼ばれてしまい、俐都は会計に向かうしかなかった。


(篤那もとっくの昔に成人しているし。奇行は多い……というか、大半が奇行だが……。まあ、何とかなるか?)


 絶対におかしなことになるだろうと予想がつき、俐都は深くため息を吐いた。



この話をお蔵入りにした理由は、『書きたい部分が多くて、短編の文字量じゃなくなってしまったから』です。序盤だけで一万字を超えて、「こりゃ長すぎて読者の方が読むのが嫌になるぞ( ꒪Д꒪;)。よし、書くのやめよう!」となりました。

壮太郎の誕生日を書いた『欠片集め』の短編は、10章後編の執筆具合を見ながら分けて投稿したいと考えているので、現時点で次の投稿がいつになるかは未定です(現時点では投稿があと3〜4回分くらいの予定ですが、編集で削ったり加筆することもあるので、最終的に何回投稿になるかは不明です)。

また読んでくださる方は、次の『欠片集め4』でお会いしましょう。

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