11/11
あとがき
あとがき
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
『夏空 〜一夏の想いで〜』は、ひとりの高校生と、夏の間だけこの町に現れた旅芸人の少女との出会いを描いた物語でした。
誰かに心を動かされる瞬間は、時に何よりも鮮烈で、そして儚い。
だからこそ、その一瞬は消えずに残り、のちの自分を動かす力になる――。
そんな思いを、温泉町の夏の空気と重ねながら書きました。
圭人にとって瑠璃は、ただの「転校生」でも「舞台の役者」でもなく、
自分の中に眠っていたものを呼び覚ましてくれた存在でした。
恋という言葉で括るには、あまりに未熟で、あまりに純粋な感情。
けれどその心の揺らぎが、彼を未来へ歩かせる原動力となったのだと思います。
夏は終わり、花火の音も遠ざかりました。
それでも、心に灯った火や、風に混じる声は消えない。
たとえ再会の約束が果たされなくとも、その想いは彼の中で生き続けていくはずです。
――読んでくださったあなたの胸にも、
少しでもあの夏の風が届いていたら、これほど嬉しいことはありません。
ありがとうございました。