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Vermilion noon ,indigo sunset  火星コロニー「リトプス1」の日常  作者: 蘭鍾馗


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19/40

19.我らトンネル部隊(マイケル ローランドの寄稿)

 ソフィアさん、声をかけてくれてありがとうございます。

 土木建設部地下構造担当のマイケル ローランドです。


「トンネル部隊」というのは渾名ですね。まあ、トンネルはたまにしか掘りませんし。

 要はコロニーを建設する地下の溶岩洞窟を整形し、必要であれば拡大し、補強し、コンクリートで下地を作り、内殻を固定するためのアンカーを設置し……といった辺りが仕事です。土木建設部の作業チームの中で、唯一発破を使うこともあって、何となく軍隊みたいな名前で呼ばれるだけですよ。


 カルカンケーキ、美味しかったです。うち、甘党多いので、皆喜んでました。

 時々開かれるあの試食会、皆、かなり本気で楽しみにしています。

 ああいうの、またお願いします。


 ◇


 我々の仕事は、9割くらい暗闇の中。


 「トンネルはたまにしか掘らない」と言いましたが、実は一番最初にやるのがトンネル工事。地上から溶岩洞窟への入口を作る作業です。本当は全部掘割構造にしたいところですが、後でエアロックをつけたりすることを考えると、開口部は最小限に留めておきたい。となればトンネル構造になります。


 トンネルを掘って洞窟にたどり着いたら、まずは最初はエコーロケーション装置を積んだドローンを飛ばして、洞窟内の3D地図を作成します。これがないと、その後の作業が出来ません。最初は中の様子もわからないので、いきなり人が入ることは危険だからです。


 実はこのドローン、あのミカンヤマ技師とオプロン技師のコンビが作ってくれたもの。本当にいいコンビですよ。頼りになります。


 で、内部の地形がわかったら、入口近くにコンクリートを敷いて、ヤードを作ります。その上に、人が入れる気密構造の簡易な建物を建てます。現場事務所ですね。

 そこから、少しずつ重機が入れる作業道を作って伸ばしていく。重機の操作は基本的に遠隔で行います。危険ですからね。


 そうして、作業道が洞窟の壁に到達したら、少しずつ洞窟に手を加えながら、コロニーの外殻を作っていく。最後は、採光ドームを載せるための天窓を開ける。


 時間がかかります。大変な作業です。でも変に急ぐと必ず事故が起きる。慎重に、少しずつです。

 そして、外殻が出来上がったら、建設担当チームに引き継いで、今度は内殻を作っていく。

 今ある試験施工区のコロニーも、そうやって作られたものです。


 ◇


 なんだか内輪の苦労話ばっかりしてしまいました。

 面白い話のひとつもあれば良かったんですが。


 無いんですよ、本当に。


 で、次ですよね。

 

 個人的な興味からで申し訳ないんですが、リトプス1にたったひとりだけの生物学者、アリシアさんに。一体どんなことをしているのか、知りたくないですか?皆さん。


 

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