19.我らトンネル部隊(マイケル ローランドの寄稿)
ソフィアさん、声をかけてくれてありがとうございます。
土木建設部地下構造担当のマイケル ローランドです。
「トンネル部隊」というのは渾名ですね。まあ、トンネルはたまにしか掘りませんし。
要はコロニーを建設する地下の溶岩洞窟を整形し、必要であれば拡大し、補強し、コンクリートで下地を作り、内殻を固定するためのアンカーを設置し……といった辺りが仕事です。土木建設部の作業チームの中で、唯一発破を使うこともあって、何となく軍隊みたいな名前で呼ばれるだけですよ。
カルカンケーキ、美味しかったです。うち、甘党多いので、皆喜んでました。
時々開かれるあの試食会、皆、かなり本気で楽しみにしています。
ああいうの、またお願いします。
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我々の仕事は、9割くらい暗闇の中。
「トンネルはたまにしか掘らない」と言いましたが、実は一番最初にやるのがトンネル工事。地上から溶岩洞窟への入口を作る作業です。本当は全部掘割構造にしたいところですが、後でエアロックをつけたりすることを考えると、開口部は最小限に留めておきたい。となればトンネル構造になります。
トンネルを掘って洞窟にたどり着いたら、まずは最初はエコーロケーション装置を積んだドローンを飛ばして、洞窟内の3D地図を作成します。これがないと、その後の作業が出来ません。最初は中の様子もわからないので、いきなり人が入ることは危険だからです。
実はこのドローン、あのミカンヤマ技師とオプロン技師のコンビが作ってくれたもの。本当にいいコンビですよ。頼りになります。
で、内部の地形がわかったら、入口近くにコンクリートを敷いて、ヤードを作ります。その上に、人が入れる気密構造の簡易な建物を建てます。現場事務所ですね。
そこから、少しずつ重機が入れる作業道を作って伸ばしていく。重機の操作は基本的に遠隔で行います。危険ですからね。
そうして、作業道が洞窟の壁に到達したら、少しずつ洞窟に手を加えながら、コロニーの外殻を作っていく。最後は、採光ドームを載せるための天窓を開ける。
時間がかかります。大変な作業です。でも変に急ぐと必ず事故が起きる。慎重に、少しずつです。
そして、外殻が出来上がったら、建設担当チームに引き継いで、今度は内殻を作っていく。
今ある試験施工区のコロニーも、そうやって作られたものです。
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なんだか内輪の苦労話ばっかりしてしまいました。
面白い話のひとつもあれば良かったんですが。
無いんですよ、本当に。
で、次ですよね。
個人的な興味からで申し訳ないんですが、リトプス1にたったひとりだけの生物学者、アリシアさんに。一体どんなことをしているのか、知りたくないですか?皆さん。




