18.カルカンのケーキ!(ソフィア コチラスの寄稿)
アリ君何してるの!原稿なんか後でいいから、早く来ないとなくなっちゃうよ。昼にロビーで試食会やるよって皆にメール送ってるんだけど、さては見てなかったな。
あ、食糧生産部 栄養管理士のソフィア コチラスです。アリ君の指名で書かせて頂きます。
この時の試作メニューは「カルカンの大豆クリームケーキ」。大好評でした。
それでは、アリ君の疑問に答えましょう。「スポンジケーキはどうやって作ったの?」って話。実はこれ、小麦じゃないんです。
「エアポテト」ってご存知かしら。イシバシさんやオオタさんならご存知の、あの野菜の仲間。ヒントは「ムカゴ」。
そう、ジネンジョの仲間です!
但し、食べるのは地下の芋ではなくて「ムカゴ」の方。このエアポテト、地下の芋よりムカゴのほうが大きくなるの。
どれくらいかって?握り拳を作ってみて。うん、それくらいです。
これ、芋と同じものが地上に出来るだけなので、ジネンジョと同じく「ネバリ」があります。なので、そのままではスポンジケーキにするのは難しい。ところが、日本にはジネンジョを使ったスポンジケーキがある。その名は「カルカン」。ただし、ジネンジョと同じ分量の米粉が必要だけど。
でも、そもそも小麦粉のスポンジケーキじゃ駄目なの?って疑問は当然あると思います。
火星では屋外に畑が作れないから、基本、屋内のファイトトロンで栽培します。そうすると、小麦や稲のような穀物は、面積当たりの可食部の収穫量が少ないので、今の施設規模では十分な量を生産出来ません。光も葉物野菜などに比べてかなり強い光が必要。
そういうわけで、穀物以外の、水耕栽培に向いた炭水化物源を探した結果、エアポテトに行き着いた。
まあ、これを煮たり蒸したりして食べるだけでもいいんだけど、でもやっぱり、たまには食べたいでしょ?ケーキ。
それで、色々調べて発見したのが日本の「カルカン」のレシピ。まあそれでも米粉が半分必要なんだけど、ケーキに使う分位なら何とか栽培できる。小麦より収量が多くて水耕栽培との相性も良かった。アレルギーやグルテンの問題もないしね。
そんな経緯で出来たカルカンケーキ。小麦粉のスポンジケーキより食感がしっとりしていて、独特の香りがあるけど、ケーキにしてみたら大豆クリームとの相性も悪くなかった。
栄養面でも、ポリフェノールやビタミンC、ビタミンB群、食物繊維が豊富で、コロニーの栄養管理担当としてもおすすめしたい食材です。
オオタさん、ビタミンCよビタミンC。
それにしてもアリ君、実にいい顔して食べるのよね。本当に毎回作り甲斐があるわ。
出来ればクラウディアの結婚式にも間に合わせたかったな。
では次は、土木建設部トンネル部隊長のローランドさんに。正式な名前じゃないのは知ってるけど、みんなそう呼ぶわよね。




