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Vermilion noon ,indigo sunset  火星コロニー「リトプス1」の日常  作者: 蘭鍾馗


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13.赤い空の下で(ヴォロディミル イヴァネーンコの寄稿)

 ヴォロディミル イヴァネーンコです。

 乗り物とか重機とか与圧服とか、その辺の保守点検・整備なんかをやってます。

 オリヴィア先生のご指名では、これはもう断れませんね。


 何書こうかな。


 ◇


 ミカンヤマさんが書いたaliena号の有人初飛行、あれ実は僕も見てたんです。遠くからですけど。

 びっくりしましたね。本当に火星で飛行機飛べるんだ、って。

 ミカンヤマさんの模型飛行機を見て、その場で直感的に「外で飛ばせるものが作れる」って気づいたオプロンさん、天才じゃないかな。すごいと思いましたね。


 あれ、いじりたいな。でもさすがに飛行機の整備は無理か。

 でも、オプロンさんに教わってやってみたい。飛行機の整備。

 とにかく外で動かす機械のことなら何でもやるのが、僕の存在価値みたいなもんですからね。


 ◇


 リトプス1の現在のメンバーは、50人いません。


 まだ試験施工区ですから、そんなに大人数が居住できるだけのスペースも電力もない。そんな限られた人数の中で、いろんなミッションをこなしてコロニー建設を進めていかなきゃなりませんから、みんな自分の専門以外にもいろんな技術や知識を持っている。もちろん体力もね。何というか万能選手の集まりみたいなところがあります。十種競技のアスリートですね。


 コロニーの運用と維持管理のためには、最低でも30人ちょっとの人数が必要なんだとか。これ実はアルフォンソ先生に教わったんですが、こんなこと知ってるくらいですからこの人もただの精神科医じゃない。いろんな知識と技術を持っています。最近は何だか火星代表みたいな感じで地球といろんな折衝をしたりしている。


 本当、すごい人だと思います。冗談のセンス以外は。


 ◇


 僕は多分、コロニーのメンバーの中で一番外に出ている時間が長い。


 外で使う機器の面倒を見ている関係上、どうしてもそうなります。もちろん、放射線の関係があって、外出時間には制限があるのですが、この仕事をしていると、制限いっぱいまで使わざるを得ない。

 与圧服には積算稼働時間を記録して警告する機能がついてますから、ズルはできない。もちろん健康に関わることですから、そんなズルなんかしちゃいけない。オリヴィアさんに怒られますしね。


 そうやって、誰よりも長い時間火星の空を眺めていると、気付くことがあります。


 火星の空、基本赤いんですけど、その色合いは結構変化が大きい。

 これは、火星大気の気圧が大きく変動することと関係があるらしい。気象調査担当のリオコさんがそう言ってました。

  

 火星の空が赤い理由は、大気中にある酸化鉄(ホントは水酸化鉄らしいです)の細かい粒子のせい。でも、この濃度が大気圧の変化で結構変わる。すると、空の色は、時には赤ではなく、うっすらと青みを帯びることすらある。大気圧が低い時期なんかは、青空?なんて思うこともあります。残念ながら真っ青にはならないんですけどね。うっすい青。そして、そういう時期の空は、上を見上げると黒い。そう、地球で高い山に登った時の空に、ちょっと似ています。明るいのに黒い空。


 多分ですけど、オリンポス山に登ると、空は真っ黒にみえるんじゃないかな。


 ◇


 そのオリンポス山、もしかしたら、僕らはこれに本当に登ることになるかもしれない。


 これは大アルバートさんに聞いたんですが、例の「明けない夜」を乗り切るための電源確保の話。

 地球の機構内部では、今の所どうも、コロニー計画は中止ではなく継続の方向で検討されていて、その電源確保の手段として、オリンポス山に太陽光発電設備を設置する案が浮上しているらしい。

 つまり、砂嵐が届かない高度の所に太陽光パネルを設置してしまえばいいじゃん、と。


 でも、そんなことが本当に出来るのか。


 オリンポス山は楯状アスピーデ火山。すごく緩やかな裾野をもった山で、周囲を崖に囲まれています。だから地上からの見た目は本当にパンケーキ。頂上なんか全く見えません。

 幸いなことに、リトプス1のある東麓には崖がなく、溶岩台地の斜面で山とつながっています。傾斜はそれほど大したことはないので、電動車や重機で登ることはそんなに難しくないでしょう。


 問題は距離。それと電源。あと水と酸素と食糧も。


 オリンポス山は巨大火山で、裾野の直径は700kmくらい。頂上までだと半分ですから350km。まあでも砂嵐が届かないところまで高度が稼げればいいので、実際は200kmも行かなくて済むのでは?と思いますが、それでも最低150km位は太陽光パネルや電線なんかと一緒に登らなきゃいけないでしょう。

 で、重機や電動車、工作機械なんかを動かす電源も一緒に持っていかなきゃいけない!


 本当にできるのか?


 でも、機構内部で今、大真面目に検討されているらしいです。喧々囂々の議論になっているとか。

 もちろん、この検討には我らが守護天使殿も関わっています。


 ということは、それなりの勝算があって検討されているはず。

 リオコさん、まだ詳細は教えてくれませんけど。


 一体、どんな方法を使って、そんな遠くて高い所に発電設備を作るのか。

 仮に作れたとして、電線をどうやってそこまで繋げるのか?

 あと、長距離を送電するには途中に変電設備も要るんじゃない?


 なんかもう、技術者の性として、いろいろと考えてしまいますね。


 ◇


 そんなことを考えながら、僕は今日も赤い空の下で、電動車と重機の整備に明け暮れています。

 オプロンさん、aliena号の整備、教えてくださいよ。




 次は………

 コロニー周辺の地上の外構整備を担当している、オオタさんに。

 外回り担当つながりということで、お願いします。

 







 














「Vermilion noon~」は、実は昔「オリンポスに登る」っていうタイトルで考えていた話が下敷きになっています。でも、その時は、わざわざオリンポス山に登る理由付けをうまく出来なかった。なので物語として形にできなかったのですが、今回、「明けない夜」対策ということで、オリンポス山に登る理屈付けが出来てしまった(笑)。

そんなわけで、ヴォロディミル君、君はオリンポスに登ることになると思います。多分。がんばれ。

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