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そうだ、話そう

俺とアテーネが王国へ帰ってすぐに、待ち構えていたシャーレットとフレイに尋問された。


初手のシャーレットからの右ストレートで視界がぐらつき、二手目のフレイからの鳩尾パンチ。俺はちゃんと食らって二人に引きずられて居間へと向かった。


手加減してくれ、俺怪我人よ。


さり気なく左腕をプラプラさせてアピールしたものの、「だからどうした?」とでも言いたげな冷たい目をされたので同情を誘う作戦は諦めた。


「さて、まずはどの辺から聞きましょうか。たしか五年前のあなたたち二人の出会いも曖昧に誤魔化してたわよね?今日はたっぷり時間があるの、全部話しなさい」


「へ、へぇ~。・・・話す前に、気分転換に外食でもどお?腹減らないか?」


軽いジョークのつもりで言ったのだが、フレイは涙目になっていた。


そして毎度おなじみ、後悔した時には既に遅し。


フレイが踏み込みつつスナップを効かせた平手打ちを俺にお見舞いした。


いい音が居間に響く。


「わたくしたちは真剣に尋ねているのです。例えマルスくんでも、今ふざけられるのは誠に遺憾です」


痛々しい顔で言うフレイに俺は罪悪感を覚えた。


アテーネは心配そうに俺を見る。


「マルス様・・・もうよろしいのでは?」


「・・・・・・だな。はっきり言ってバレないように気を使うのも疲れた。スッキリしたい」


いい加減隠すのも後ろめたいし、心配してくれてる相手に嘘はつきたくない。


だから俺たちは全てを洗いざらい話した。



どんな仕打ちでも甘んじて受け入れようと体を強ばらせたが、二人は「ようやく話してくれたわね」と柔らかい笑みを浮かべて喜んでくれた。


そして二人はずっと不安だったことや辛かったことなどを語って俺に抱きついてきた。


フレイは泣いていたし、あのシャーレットも泣いていたのだ。


俺は金輪際二人に対して隠し事をしないと心に決めた。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


後日。


俺は王様から直々のお呼び出しをくらった。


記憶を遡ってみるが特にやらかしたことなどは思い当たらない・・・はず。学院生活も自分比では比較的真面目に取り組んでいる。


まさか、娘さんを泣かせた責任を取れ!とか・・・


俺は脳内でネガティブな妄想を繰り広げながらアースガルズ城への道のりを徒歩で向かった。


向かってみると待っていたのは俺の想像を超えた話題だった。


「え?」


シャーレットの私室へ通された俺は彼女と偶然居合わせたフレイ、アテーネ、ナリータと向かい合う形でソファーに座らされた。


なんでナリータがいるのかは後回しだ。下手に突っ込んだら痛い目をみそうだからね。


話を戻そう。


その話題とは目の前のテーブルに置かれた俺宛ての書状に記された内容である。


「なんで驚いてるのよ?国際テロ犯罪者リストS級に指定されてる教祖デスラー・ハウンドを倒したのよ。しかも、あいつは問題児集団邪教の教祖。当然の結果でしょ」


俺はなんとデスラー討伐の功績から、エルバイス家は準男爵位から二階級昇進を果たし、子爵の地位を与えられたのだ。


「うそだろ?俺、子爵になれるのか?」


思わず聞き返す。


だってしょうがないだろ。五千年間の長い年月の間、ずっと準男爵に甘んじていたエルバイス家がやっと王国に認められたんだ。


出世を果たして喜ばない貴族がどこにいる。


「そうよ。あなたの頑張りが報われたの。おめでとうマルス」


はちきれんばかりの笑顔で自分のことのように喜んでくれるシャーレット。


ようやく拝めたデレの部分。思いのほか衝撃が強すぎて俺は顔が赤くなった。


「おめでとうございますマルスくん。ほんとはわたくしも連れてって欲しかったですけど・・・今回だけは見逃してあげますね?」


上目遣いなフレイ。


「マルスくんは凄いね。平民のわたしなんかとはどんどん差が開いちゃう。でもおめでとう」


いつの間にかすっかり敬語が取れたナリータ。これはこれで良いね。


みんなが喜び祝福してくれた。


しかし、一人だけはベクトルの違う喜び方をするどこぞの元女神がいた。


「おべでどうございますぅー!これで・・・これで収入が上がるんですね!やっと優雅な生活を送れます!!」


両手で顔を覆って泣くのはアテーネ。


俺を祝福する気持ちなど一欠片も存在しないこの女に俺は真実を告げてやろうと思い、アテーネに話す。


「寝ぼけたこと言うな。収入なんか増えるわけないだろ」


「え、どうしてですか?」


「増えるのは管理する土地だけだ。そうでしょ、シャーレット?」


「そうよ」


残酷な答えがアテーネを打ち砕く。


「あぁ・・・わたしの極楽生活が・・・マルス様!期待させておいて裏切るなんて!どう落とし前つけてくれるんですか!?」


こいつの顔面に拳を叩き込んでも罰は当たらなくない?一発くらいなら神様も女神様も許してくれると思う。勝手に勘違いしたくせに俺の責任にするとか図々しいにも程がある。


「マルス、急で悪いけどこれからあなたの功績を讃える式典が開かれるの。時間が迫ってるわ。服を選びに行くわよ。ほら、みんなも着替えをしちゃいましょう」


すっかりまとめ役となったシャーレットが行動を促す。


これはこれで彼女の性分に合っていて良いね。


「「「はーい」」」


俺を含めた三人は返事した。


一名足らない。


「嘘です・・・わたしの快適で極楽な夢のような生活が・・・」


未練タラタラで嘆くアテーネは心底悔しそうに床とにらめっこをしている。


しかし、誰も声をかけはしなかった。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


ここは控え室。


王様との対面を控えた俺とその関係者のみ入室が許されたプライベート空間だ。


俺はシャーレットに借りた正装を身に纏い姿見の前に立ちポージングをとる。


うーん、全然似合ってない。服に着られている感じがする。


「似合ってますよマルスくん」


とフレイが言う。


真っ白なシルクのドレスは美形なエルフによく映えた。


「馬子にも衣装ですねマルス様!」


小馬鹿にするのはアテーネ。


顔だけは良いアテーネに薄い黄色ドレスは悔しいが、めちゃくちゃ似合っていて可愛かった。一瞬、彼女が女神なんじゃないかと本気で思ってしまったくらいに。


「マルス、デレデレしないで。これからお父様の前に出るのよ。そのだらしない鼻の下と口元をどうにかなさい」


キツく言い放つのはシャーレット。派手に真っ赤なドレスは彼女の美しさを引き立たせていた。


「マルスくん。お似合いね!今度その服装でデートしましょ!」


青色の薄いドレスで抜群のプロポーションを晒すナリータ。耳と尻尾がいいアクセントになって俺の目には更に可愛く映る。


四人の美女に囲まれ笑顔を向けられる・・・


眼福です。至福の時間です。ほんま生きててよかった。


「マルス・エルバイス準男爵、準備が整いました。皆様もご参列ください」


文官っぽい人が俺たちを呼びに来た。


四人で顔を見合せ頷く。


「んじゃ、行くか」

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