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結成!ハーレム同盟

翌日、学院に登校した二人は目的の人物と接触するために隣のクラスへ向かった。


「ナリータって生徒はいるかしら?」


王女様のご登場に教室内は色んな意味で大騒ぎ。


誰もが遠巻きに見るだけで率先して話しかけようとはしなかった。


「わたしですけど・・・」


恐る恐る名乗り出たナリータ。


耳は垂れて、可愛らしい尻尾も元気がない。


「着いてきなさい」


シャーレットはそう一言だけ言って歩き出した。


教室の中からは見えなかったがシャーレットの隣にはエルフ族のフレイが並んでいた。


どちらも学院内どころか世界中でも有名な人物で、益々自分が呼ばれた意味がわからなくなったナリータ。


(どうか、無事に帰れますように)


ナリータは切実に自分の身の安全を願うのであった。




「心配しないでいいわ。ここは人払いしてあるし、あたしの権限で立ち入り禁止に指定したから」


扉を開けて屋上へ出たシャーレットが言う。


「面倒な世間話なんてあたし嫌いだから早速本題に入らせてもらうわね」


ナリータは噂されているシャーレットの王女像とはかけ離れた彼女の態度に驚いていた。


「あなた、先日マルスとデートしたらしいわね?」


「な、なぜそれを知っているのですか?」


鋭い指摘にナリータは目を泳がせた。


「どうだっていいでしょ。そんなことよりあなたはマルスのことが異性として好き。間違いないわね?」


ポッとナリータの頬に朱が差した。


「わ、わたしなんて、お、お、おお、畏れ多いです。身分も違いますし・・・」


あわあわしながらも、それとなく誤魔化しにきたナリータを、「はいそうですか」とみすみす逃すほどシャーレットはお人好しじゃない。


「猫かぶってんじゃないわよ。うざいわ」


オブラートに包むというのを知らない彼女のどストレートな言葉。


本性を見抜かれたナリータは、大きなため息をついた。


この王女様とフレイのお嬢様相手には、外面をいくら取り繕ったところで無意味だど判断したのだ。


「・・・わかりました。これからは素でいきますね」


声のトーンが変わったナリータ。


「最初からそうしてればいいのよ」


フンッと鼻を鳴らして、してやったり顔のシャーレット。


癇に障ったナリータはチッと舌打ちする。


「わぁ、ほんとに猫かぶってたんですね!それを見抜くとは・・・さすがはシャーレットです。同族嫌悪ってやつですか?」


フレイの無自覚な煽りはちゃんと二人の逆鱗に触れた。


「「こんな腹黒女と一緒にしないで!!」」


見事なハモリである。


ハモったことで両者は睨み合う。


フレイは似た者同士だな、と思った。


「で、なんですか。わたしがマルスくんを好きだったら不都合なことがあるのですか?」


「いえ、何もないわね。あたしに止める権利なんてないもの」


「だったらどうして・・・」


「ナリータもここまできたら察していると思うけどあたしとフレイも彼のことが好きなのよ」


「・・・」


「あたしはね、こう見えて繊細なの。あたしと同じ人を好きになった子が悲しんでいる姿は見たくないわ。だから、同盟を組みましょう」


小首を傾げたナリータが復唱する。


「同盟?」


「ええ、そうよ。あたしとフレイとあなたの三人揃ってマルスのお嫁さんになるの。こうすれば誰も悲しまないし、あたしも素をさらけ出せる相手が増えて嬉しいのよ」


シャーレットの衝撃的な提案にナリータは驚き固まった。


ナリータは目を瞑り熟考する。


この美人で家柄も兼ね備えてる二人に果たして自分が勝てるのか。顔なら負けない・・・はずだが、僅差の勝負になるだろう。それ以外では圧倒的に不利なのはナリータだ。ならば、一番安全な策を取るべきか・・・


再び彼女のライムグリーンの瞳がシャーレットを映した時。それはナリータの中で答えが決まった瞬間であった。


「一緒に幸せになるわよ」


シャーレットが差し出した手を、ナリータは自然と握っていた。この手の持ち主の性格とは正反対な温もりが感じられる。


「わかりました。その同盟にわたしも参加します。シャーレット王女、フレイさんよろしくお願いします」


ナリータの言葉を聞くと、ようやくシャーレットの表情が和らいだ。その顔は同性のナリータでさえも思わず見惚れてしまう程に美しかった。


「あたしのことはシャーレットでいいわ」


「わたくしもフレイでいいですよ。仲良くしましょうね!」


学院きっての美少女三人は手を取り合った。


一人の男のために。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


そのまま授業をサボることにした三人。フレイとナリータは乗り気ではなかったが、シャーレットの一言によって抵抗を諦めた。


『安心して、あたしの権力で成績には反映されないわ』


この権力至上主義の女に呆れたが、二人は別にどうしても授業に出席したいわけじゃない。成績のために出ているのであって授業自体は面倒だからだ。


だから二人は形としてシャーレットに無理矢理、と自分を納得させるのであった。



三人で学院を抜け出して近くの喫茶店に入った。


案内されたのは他の席からは死角となり、カーテンまでかけられたプライベート空間。


王女様々な待遇にフレイとナリータは喜んだ。


それぞれが飲みたいものを注文を済ませて、あとは運ばれるのを待つだけ。


「ちなみにマルスのお嫁さんは四人まで許すことにしてるわ。これに関してフレイも了承済みよ」


「四人?もうわたしたちだけで充分彼は満たされると思いますが?」


自他共に認める容姿を持つナリータは二人の容姿も認めた上で疑問を呈した。


「甘いわね。マルスをずっと傍で見てきたあたしが保証する。絶対にあいつはもう一人くらい欲しがるわ。人間のあたし、エルフのフレイ、獣人のナリータ。あとは・・・歳上とか、かしらね?あいつの好みだと」


「・・・好きそうですね、マルスくん」


「でしょ?でも許せるのは四人までね。それ以上望むようだったら、あいつには制裁を加えるわ」


「説教するんですか?」


ナリータが尋ねた。


対してシャーレットは冷たい笑みを浮かべる。その時を想像して彼女は言った。


「説教で許すと思う?臓器でもあたしの怒りは収まらないわよ?」


「へ、へぇー・・・なるほど・・・」


ナリータは本能で思った。


シャーレットだけは絶対に敵に回してはいけない存在であると。


奇しくもマルスの知らないところで四人とのハーレム生活という彼の願いが叶った、と同時に彼の命にも制約が掛けられたのであった。

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