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割り勘

俺たちはメーガンさんのアドバイスに従い公園を散策した後、公園を出た先にある王都のメインストリートで、ずらっと並ぶ露店をひやかしながら歩いていた。


そろそろお腹が空いてくる頃。


「ナリータ、この店寄ってこう」


「はい!」


この店はメーガンさんに教わった、王都の女性に大人気らしい有名パスタ店らしい。


白を基調とした内装に、所々に置いてある派手すぎない花瓶がいい味を出す。とてもオシャンティーな店だった。


「ご注文お伺い致します」


店員さんがメニュー表を持って注文を聞きにくる。


「うーん、このおお!丸エビの地上界パスタにしようかな。ナリータは?」


「マルスくんと同じもので」


「かしこまりました」


店員さんは丁寧にお辞儀をすると厨房へと下がっていった。




「お待たせいたしました。こちら、おお!丸エビの地上界パスタになります」


店員さんが運んできたトレーに乗るのは出来たてで湯気が立つパスタが盛り付けられた大皿。トマト色のクリーミーなソースがかかったパスタの中央にはドデカイ海老っぽいなにかが鎮座する。


匂いはいい。


「パスタ・・・ですか?それではいただきます」


パスタ初体験のナリータは行儀良く手を合わせて、パスタを口に運んだ。


ゆっくりと咀嚼し飲み込む。


俺は彼女の反応を固唾を飲んで見守る。


「わたしパスタなんてオシャレな食べ物は初めてですが・・・凄く美味しいですね!」


フォークでカチャカチャと音を立てながら麺を巻いて口に運ぶナリータはご満悦な様子だ。


メーガンさんありがとうございます。


「そっかなら良かったよ。・・・あ、ナリータは知らないのか。これはねフライパンで麺とソースを絡めて作る料理なんだよ。それと、カチャカチャと音を鳴らしたらダメな食べ物なんだ」


少し心に余裕が生まれた俺は、ニヤリと笑ってナリータを見た。


「なっ!マルスくんだってカチャカチャ鳴ってるじゃないですか!」


「お、俺の方が鳴ってる音、小さいから!」


「わたしの方が!」


俺は慎重に麺を巻く。


すると・・・


「しまった!ゆっくりしすぎて麺が・・・」


「ふふっ、マルスくんは不器用ですね」


そんな彼女も・・・


「あっ」


「ナリータも不器用だな」


「女性に不器用なんて失礼ですよ!」


「ははっ、ごめんごめん」


とお互いのちょっとした負けず嫌いが合わさって軽く言い合いになったが、それすらもお互い楽しんで賑やかな食事となった。


「「ごちそうさまでした!」」


いざ、会計の時。


ここは男を見せるべくナリータより先に立ち上がってカウンターへと歩く。


「俺が出すよ」


俺が一歩前に出た。


しかし、ナリータも一歩前に出て俺の隣に並んだ。


「いえ、わたしも払いますよ。割り勘にしましょう」


全額支払って男気を見せようとする俺をナリータは制した。


「え?こういう時って男が支払うもんじゃないの?」


「ふふっ、世間一般ではそうなのかもしれませんが、わたしは二人で過ごした思い出を共有したいので物を買う時は二人でお金を出し合いたいのです」


これは目の錯覚だろうか。


ナリータから眩い光背が放たれている。


どっかの元女神には感じなかったものだ。


「では、割り勘で」


「はい!」




それからはゆっくりと王都の街並みを観光した。


綺麗な建物に豪華なアースガルズ城。アースガルズ王国一の規模を誇る市場で屋台の食べ歩きをしたり、国立美術館で絵画の鑑賞をしたりした。


時折り、お互いの視線が交差しては、また慌てて逸らす。なんかこう、じれったくてもどかしい感じがして甘酸っぱい。


これが青春ってやつなのか・・・


俺の隣で楽しそうに笑うナリータを見て心が温かくなると同時に、前世でイケメン達は日常的にこの気持ちを味わっていたのか、と妬ましく思うのであった。


時の流れを忘れるくらいにデートを楽しんだ。


気づけば日は傾き始め王都の街を茜色に染めていた。


「マルスくん、今日はありがとうございました。こんなに楽しかったのは生まれて初めてです。パスタも凄く美味しかったです!」


「こちらこそありがとう、俺も楽しかった。ナリータさえ良ければまた行こう」


待ち合わせ場所の公園に戻った俺とナリータはベンチに座って今日のデートについての話題に花を咲かせていた。


ひとしきり話した俺と彼女の間に少しの沈黙が流れる。


お互いが話題を探すから生まれたこの時間。


案外悪くない。


どちらが先に次の話題を見つけるかの勝負。


制したのはナリータであった。


「マルスくん・・・わたし・・・まだあなたと一緒に・・・いたいなぁ・・・?」


俺に身を寄せ上目遣いで見上げてくる。


あまりの可愛さに思わず俺は目を逸らしてしまった。


おいおい、冷静になれよマルス。散々ゲームのお姫様に”計算され尽くした角度”とか言ったのはお前だろ!


自分で自分を叱責して邪念を振り払う。


「あ、明日からまた学校あるしさ!もうそろそろ帰ろっか?」


俺は彼女の肩をそっと変に思われないよう加減して押し返して間を作る。


そうだ、男は紳士であるべき。初めてのデートで手を出すなんて絶対に浮気する奴って思われるぞ!


「・・・ちっ」


「へ?」


今、どこからか舌打ちが聞こえたような・・・


「ふぇ?どうかしました?」


「いや、なんでもないよ。気のせいだったみたいだ」


初めてのデートで自分が思うより疲労が溜まっていたのか、幻聴が聞こえたらしいね。


「じゃあ、ナリータ。また学院でね」


「はい!また遊びましょう!」


俺は彼女の姿が見えなくなるまで手を振った。


こうしてデートを終えた俺はラウンズ武具店に帰った。


初めての経験に気を張っていたせいか、一日の疲れがどっと襲ってきた俺は、夕食を食べずにそのままベッドにダイブして眠りについたのであった。

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