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告白!え・・・嘘コク?

あれから更に一週間が経過した。


ワイドくんが俺と話しているのを見て少しづつだけど俺にこれまでの対応を謝り、交流を持ってくれるクラスメイトが増えたきた。


彼らにはきっかけが必要だったのだ。よくよく考えてみれば俺の所属するクラスには王女のシャーレット・アースガルズに加えて、同じ四英傑の跡取りフレイ・サーペントがいる。


下手に彼女らの周辺に危害を加える愚かな行為を行えば、それ相応の報いが待っているのは火を見るより明らか。


よって、モーガンの作戦は最初の一週間でほぼほぼ効力を失ってしまったのである。


そんなモーガンと校門前でばったり出くわした。すれ違いざまに見たあいつの顔は傑作だったね。まるで苦虫を噛み潰したような、それはもう悔しさ全開の表情だった。


だから俺はモーガンに見えるようにわざとしたり顔をしてやった。するとあいつは更に顔を歪め、その場で地団駄を踏みかけてた。


そんな具合に気分も晴れたことで今日も一日が始まる。


ある程度学院生活にも慣れて、どこか退屈さを感じ始めた矢先。


それは突然やってきた。


いつものように下駄箱を開けた俺。


すると靴の上に手紙が入っていた。


ゴクリと生唾を飲み込み手紙の内容を確かめる。


『放課後、校舎裏で待ってます』


と簡潔に記されていた。


ラブレターだった、うん。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


綺麗な栗色のロングヘアーにアイドル並みの容貌。そして服の上からわかるほどの豊満な胸にくびれた腰。頭にはぴょこんと二本のケモ耳を生やす彼女。


誰がどう見ても美少女で入学早々学院内にファンクラブまで創設されたとか。


ライムグリーンの瞳は涙で潤み、頬は上気して赤い。髪は肩の上で切り揃えてあり、異世界基準では短めらしい。


華奢な身体つきで腕はほんの些細な衝撃で折れてしまうかと危惧してしまうほどの細さ。僕としては心配の面が勝つのだが、周囲の男共は違ってそれが庇護欲を刺激されるみたいだ。


漏れなく俺も庇護欲刺激されまくり。


そんな獣人族の彼女から俺は今。


誰もいない放課後の夕日が差す校舎裏で。


告白されていた。


クラスも違えば種族も違う彼女とはこれっぽちも接点はないはずなのに。


「え?君、今なんて?」


鈍感系主人公の如く聞き返す。


「で、ですから!わたし、ナリータ・ホルムンはマルス・エルバイスくんのことが好きです!どうかわたしとお付き合いを!!」


もじもじしながらも彼女の視線は真っ直ぐ俺を射抜く。その目からは並々ならぬ決意が窺えた。


しっかりするんだマルス!お前にはシャーレットとフレイがいるだろ?こんな見ず知らずの・・・可愛い女の子・・・めちゃくちゃ好みの女の子にホイホイと堕ちてどうするつもりだ!


心の中での葛藤の末に俺が出した答えとは────


「はい、ぜひよろしくお願いします!」


マルス・エルバイス十五歳。欲望に忠実な元引きこもり転生者である。



ってのは冗談。異世界風ジョークだ。


「ま、まずはさ、お互いのことよく知らないし。友達からってのはどうかな?」


これまたハーレム系主人公の如く、彼らがヒロインたちをキープする際に使用する台詞をそっくりそのまま選択する。


ここで選択肢を誤れば他のヒロイン候補(シャーレット、フレイ)の攻略に影響を及ぼす可能性が大だ。


俺はハーレムがあまり好きではない。


女の子は好きだけど。


だから自分の中でルールを設けた。


最終的には四人に絞れば、同時進行は何人でもOK!と。


ナリータは顎に手を当て、しばし考える仕草を見せると納得したように頷いた。


「では!それでお願いします!わたし頑張りますからね!!」


ぺこりとお辞儀をすると、彼女は去っていった。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


翌日、俺は登校してからも昨日の出来事を思い出して全く授業に身が入らなかった。


途中で教師に注意されたり。


剣術の授業でペアを組んだシャーレットに呆れられ、魔力禁止の授業で木刀に魔力を込めた彼女にボコボコにされたり。


そして本日は偶然が重なった結果、俺は一人で昼食をとるぼっち飯だ。


シャーレットは王宮で他国の王族と会談があるらしく今日は欠席。フレイは今日だけクラスの女子と食べるとのこと。そしてアテーネはどこで菌を貰ってきたのか、昨晩から熱にうなされて欠席だ。


馬鹿は風邪ひかないは嘘だと知った。


いや、あいつの場合は馬鹿というか性悪女か。


とまぁ、なんにせよ今日は一人での昼食となる。


ははっ、前世の中学時代後半を思い出すよ。あの頃の俺は常にひとりぼっちだった。特に揉め事は起こしてないけど、どこかクラス内で浮いた存在でクラスメイトからは煙たがられていた。


大丈夫、もうあの頃の俺じゃない。努力はできる範囲でやってきたんだ。力は嘘をつかない。


悲しい過去を思い出し自分を慰める。昼休憩の残り時間も迫っているので屋上へ行く為に席を立とうとする。


すると俺の耳に、後ろの席で仲良く食事をとっていた女子生徒二人組の会話が入った。


『ねぇ、知ってる?最近女子生徒の間で嘘コクってのが流行ってるらしいわ』


『嘘コク?つまり男子生徒を呼び出して告白してOK貰っても、嘘でした!ってネタばらしするアレ?』


『そうそう!』


『男子が可哀想じゃない?』


『別にいいでしょ。冗談すら通じない器の小さい男なんて願い下げだわ』


彼女たちはまだ会話の途中だが、盗み聞きを辞めた俺は急いで隣のクラスにいるナリータに会いにいった。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「すいません。ナリータさんっていますか?」


出入口から顔を覗かせて呼んでみる。


彼女は教室の隅で友達と思わしきクラスメイトたちと談笑していた。


「マ、マルスくん!?な、何かうちのクラスに御用が?」


俺だと知るやいなや、すっ飛んできたナリータ。


前髪を手櫛で微調整している。


俺は女の子の、この仕草が好きだ。


ギャルゲーでも頻繁にこの仕草するヒロインたちがいたんだよ。普段はツンツンなのに主人公(俺)を前にすると、しおらしくなってモジモジしだすんだ。


「いやさ、よかったら一緒に昼食でもどうかなって。先約がいるなら仕方ないけど諦めるよ」


ナリータは俺の提案を聞くとすぐに友達の輪の中に戻った。そしてなにか一言二言会話すると、ニヤニヤした友達に背中を押されたり肩を軽く小突かれながらも、笑顔で弁当を持ちこちらへやってきた。


「ぜひよろしくお願いします!」


ナリータの了承を得たので、俺たちは屋上へと向かった。


空はあいにくの雨模様だが、屋上に設置されている屋根付きベンチに二人して腰を下ろした。


俺は晴れよりも雨の方が好きだ。


暑いのが苦手なのもあるが、雨音とこの静けさが心を癒してくれる。


的なことを前世で友達に言ったら「お前ひねくれてるなー」と返されたので口には出さない。


「ねぇ、ナリータ」


「なんですか?」


「そのー、今日はあまり天気が良くないね?」


手始めに軽くジャブをいれる。


悩んだら天気の話題を出しとけば場は持つでしょ、は俺が提唱している説だ。


実行するのは今日が初めてだけど。


「そうですね。せっかくなので晴れてくれてたら嬉しいんですけど・・・わたしは雨も好きですよ?なんかこう・・・落ち着くんです」


そう言ってはにかむナリータ。


この子はヒロイン力が凄まじいね。あのなんちゃって元女神に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ。


「雨いいよね、俺も好きだよ」


「マルスくんもですか?マルスくんと共通の好きなものができて嬉しいです」


こんな感じで場は和む。


そろそろかな。


「で、話は変わるんだけど。ナリータは嘘コクって知ってる?」


トークスキルに乏しい俺は本題に入る。


「嘘コクですか・・・あ!最近流行ってるみたいですね」


よし、上手く誘導に成功。


「ナリータはさ、どう思う?」


「うーん、そうですね・・・わたしはいけないことだと思います。人の気持ちを踏みにじるなんて最低な行いです!!」


はい、合格です。


「そっか」


「ふふっ、もしかしてわたしの告白もそれだと疑ってるんですか?」


「あははは、ごめんな。ちょっとだけ疑った。でもそれは無駄な心配だったみたいだな」


「当たり前です。わたしのマルスくんへの想いは本物ですよ!」


「え、あ、ありがと」


ナリータのストレートな言葉に、年齢=ちな童を発動してキョドってしまう。


マルス、ここは重要な分岐点だぞ。ギャルゲーをやり尽くしたお前なら、この後取るべき行動を間違えるなよ?


自分に語りかけると、ヒロイン候補攻略に向け俺は勝負に出た。


「ナリータ、よかったら明日どこかに遊びに行かない?」


スマートに努めて言ったが、内心ではドッキドキである。


なんせ人生初めてのデートだ。


それも自分から誘っての。


「っ・・・!!不束者ですが、よろしくお願いします!!!」


ナリータは声が上ずりながらもはっきりと答えてくれた。


彼女の返答を受けてから心の中で俺は祈った。


どうか、シャーレットとフレイにバレませんように・・・と。

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