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金の髪が歩くたびに、前髪がさらさらと揺れている
眉間にしわを寄せて、険しい表情で廊下を歩く翡翠
「華原~!!!」
華原を見つけ名を叫ぶ
華原は、頭を下げ礼のポーズをとり翡翠を受け入れる
「どうかされましたか?」
「どうかじゃねぇ!あれは、どういうことだ!
芙蓉をどこに隠した??」
翡翠に詰め寄られても無表情で毅然とした態度は変わらない華原は
自身より背の低い翡翠をじっと見つめる
普通なら不敬罪にあたるだろうが、翡翠は気にも留めていなかった
「失踪しました」
「は???」
「行方不明です」
「嘘だろ?なぜ俺にすぐに言わなかった?」
「あなたを信用していないからです」
ばっさりとそういう華原に思い当たる節があるのだろうか
翡翠は大人しくなる
「あなたは・・うちの姫に甘えすぎている。あなたを愛しているからこそ
この魔宮のような城にまで来たのに、あなたはそれを利用していた」
「・・・」
「姫がそれに気づいていないとでも?」
「だから、身代わりを立てたのか?」
「失踪は本当です・・私が隠したわけではない」
「もし芙蓉に何かあったら?!!!」
「我々も探しています。もしかしたら、姫自らが姿を消したのかもしれないと思ってます」
「実家への連絡は?」
「いなくなったことはふせてます」
はぁ~と重いため息をつく翡翠
「俺も探す・・」
「なぜ、姫じゃないとわかったんですか?似てるでしょう?彼女」
「芙蓉は、俺をみて怯えない」
「へー。少しは姫を理解しているのですか・・」
翡翠は頭をぐしゃっとかきむしる
「今はあの身代わりが必要だ」
「そういうところですよ。あなたを信用できないのは」
華原は冷ややかな視線で翡翠を見る
「青の部隊を使う」
「よろしくお願いします」
華原は、翡翠に頭を下げる
そして扉を開けた
早く部屋から帰れという意味だった
その意味をくみ取った翡翠は、足早に部屋を出て行く
姫、芙蓉様は幼き頃から翡翠を愛していた
王となったことを知り、家族の反対を押し切り
自ら望んでこの王宮まで来たのだ
でも翡翠は・・
政治を第一に考えている
愛がないわけではないが、姫は寂しさを感じていたことは事実だ
今回の失踪が吉とでるのか凶と出るのか
身代わりを置いたことが果たして、姫の思惑にどう影響がでるのか
華原は行く末を見守ることしかできない
歯がゆさと、もやもやを胸に秘めているのだった