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掴まれた手、逃げられない至近距離
翡翠色の瞳の中に揺れて見えるのは・・
怒り?疑い?
怖い…
「ごめんなさい…」
「お前誰なんだ?なんでこんなに芙蓉に似てる?
芙蓉はどこにいる?こんな、すぐバレるようなことをして何が目的だ?」
「…助けてくれた恩人の頼みで…
騙すつもりだったけど、騙せるとは思ってなかったです。ごめんなさい」
王の瞳には変わらず炎のような揺らぎが見える
さぐるような視線に体が強張る
目を合わせることができない
「で?芙蓉はどこにいるんだ?」
「わかりません」
「首謀者は華原だな?お前に話しを聞いたところで情報は得られなそうだから、
オレから華原に話しをしている」
掴んでいた手を離し
部屋を出て行こうとする王
明らかに力が抜けたように、姿勢を崩した葵に、王は振り返る
「芙蓉が居ない今、芙蓉の実家のこともある
オレと華原が話す間気を抜くな!芙蓉の代わりを務めるつもりなら他にバレるような真似はするなよ!」
それだけを言い残して部屋を去る
おそらく華原の元へ向かったんだろう
なぜ、あんな言われようをされなくてはならないのか
この世界に来て
何もかもが違う環境に置かれて
戸惑わなかったわけではない
何かに打ち込んで気を紛らわせてきた
雨風をしのぐ家も、食べるものにも、衣類にも困らず
必要ないくらい用意してもらい
拾われたことには感謝してるし
身代わりを引き受けることを決めたのは
自分自身…
けど、私は芙蓉姫ではなく
葵という1人の人間だ
今まで耐えてきたものが
涙となり溢れでる
寂しい
怖い
帰りたい
イラつく
葵は大きな枕に顔をうずめた