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朝を迎え
寝間着から用意された服に
小さな女の子に手伝ってもらいながら着替え終えると
ぼーっと窓の外を眺める
昨夜の男…あれが王か
身代わりということはバレてないはず
だが、明るい場所ではどうだろうか…
葵は憂鬱さと不安しかなかった
今日は王の帰還を祝う祝賀会があるようだ
妃も出ることが決まったという
ため息しか出ない
あっと言う間に時間は過ぎ
祝賀会の時間が近づいてくる
身体をすみずみまで磨かれ
祝賀会に相応しいいつもとは違う装飾が多い服を着せられる
化粧を施されるその様子は
まるで着せ替え人形のようだった
「綺麗ですわ。芙蓉さま」
「ありがとう…」
鏡に写る自分の姿は、まるで別人のようだった
綺麗に結い上げられた髪
煌びやかな宝石のアクセサリー
アラビア風の水色の煌びやかなドレス
城の女官に案内され着いた先の扉を通れば
正面にはいかにもっていうような豪華な王座がある
それに対面するように敷かれた絨毯に
葵を含めての6人の妃席
女官の導きにより
葵は、王の正面に近い端から3番目に座る
身分によって座る席が決まっていると聞いた
まだ王は来ていない
他の妃は、あと1人を除いてみな揃っている
煌びやかな衣装に鮮やかな花のような華やかさを
持った彼女たちは綺麗だ
さすが王の妃というポジションにいるだけある
その場に自分も存在している違和感と緊張感がドキドキ感を増す
わたし・・浮いてないだろうか??
ついに王が現れ
一斉に顔を伏せ迎え入れる妃たち
形式らしい挨拶を述べた後
葵は顔を上げ
昨夜は見れなかった顔をよくよく見る
太陽のような明るい金色の髪
整った目鼻立ち
何よりも目を引くのは
その名を現すにふさわしい
宝石のような緑の瞳の美しさだ
王としての威厳を持ち堂々とする姿
滞りなく祝賀会は開催され
葵の身代わりに誰にも気づかれずその夜を終えた
葵は、部屋の戻るとゆったりとした部屋着になり
ベッドの腰を掛けるとふと先ほど見た
王を思い出す
王にしては若くないか?
青年というよりまるで少年だ
10代後半から20代前半にしか見えない
あれがこの国の王・・
そんなことを考えていると
カツンと靴の音が部屋の外の扉から鳴り響く
はっと息をのむと同時に
ノックの音のすぐ後、扉は開かた
先ほどのいかにも王さまな格好とは違う
ラフな格好で王が現れる
その姿は、先程の姿より若くみえた
葵は何も言わず、王が部屋に入ってくるのを受け入れた
いや何も言えなかったのだ
葵の横に並ぶように王がベットへと座る
「やってらんないよ。あんな煌びやかな席も
みんなの前で王を演じるのもうんざりだ」
ぐっーと背伸びをする翡翠
「お疲れさまでした…翡翠さま」
葵をじっと見つめる翡翠
「どうした?ここで芙蓉まで演じることはないだろ?」
下ろした髪をひとふさ掴んで離す翡翠との近い距離に
体が強張るのがわかった
やばいと思った
芙蓉は昔から王のことを知っているんだった
かしこまった言い方をしてしまったことで
いつもと違うと
不信感を与えてしまったのだと、冷や汗がでる
でも、まだバレてはない
大丈夫・・
「わたしもよ。あんな動きづらい服を着せられて、うんざり…
ねえ、翡翠?」
動揺を隠し、いい感じに砕けた感じに返せたと思った
しかし、王の疑う目は向けられたまま
より距離を詰められ、手頸を掴まれる
「お前…誰だ…?芙蓉じゃないな」