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眠りについてから
どれくらい時間が経っただろう
ふっと目が覚めると
暖かい何かが隣に感じる
気のせいだろうと寝返りをしようとすると
「なんだよ。芙蓉、気づいてんのに無視か?」
えっ?
誰?男?
あまりにも驚き過ぎた時って
人は固まって動けなくなるって
その時、初めてわかった
声すら発せずに、一瞬で色々な考えが巡り
何が正解なのかわからなくなる
「相変わらずだな。眠いときは何をしても気にしない図太さ、もう少し警戒心持ったほうがいいぞ」
王?らしき人物が額をごつんと軽く小突く
「病気だったんだって?大丈夫なの?」
「う、うん」
「そうか、顔色も今は良さそうだし
また明日来るから、無理するなよ!」
さっとベッドから降りて
手を挙げ部屋を出ていった
葵はその背を黙ってみつめ
大きな息を吐くことしか出来なかった
その時初めて自分が息を止めていたことに気付く
ななな
なんてこと?
こんなときはどうするのが正解なの?
ぎゅうと布団を握りしめ
パニックになった頭を落ち着かせる前に
葵は走りだしていた
「華原ぁ〜!!!!」
華原のいる部屋に
寝巻きのまま、裸足で扉を勢いよく開ける葵だった
「ちょっと!!い、今!!誰か来た!!!」
「ちょっ・・落ち着いてください」
「だ、だって!!こんな時間に部屋に入ってこれる人って!」
「まあ、翡翠さまでしょうね・・」
「やっぱり?」
「金の髪に緑の瞳でした?」
「わかんないよ・・暗かったもん」
「こうしてあなたが無事だということは刺客とかの類ではないでしょう?」
華原は寝巻姿一枚の姿を上から下まで怪我などがないか確認する
ただの確認とわかっていてもじろじろと見られていることに気づいて
恥ずかしくなる葵
「どんな様子でした?」
「体の調子を心配してたみたい、明日またって言ってた」
「バレなかったみたいですね・・」
「・・・」
そう別人だとバレてはなかったみたいだ
本当に王の妃としての身柄りを務めなくてはならない現実に
急に怖くなる
頼れるのは目の前の華原だけ
「もう戻りなさい」
「はい」
そんな心の声が華原にわかるはずもなく
部屋に帰るように促され
心細いが、そうすることも出来ないため
しぶしぶと部屋へと帰った
もうそこから、眠ることなんて出来なかった