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華原は綺麗な顔をしてるが
ドSに違いない…
そして人に教えるのには向いてない
「私に敬語は使わないでください」
「はい」
「違う!その場合は、はぁいと
いかにも聞いてないという気の抜けた返事をする!」
「はぁ…」
どうやら芙蓉とは、自由な人らしい
一般的な妃では当てはならない性格と行動をする女
振る舞い、返事、考え方
それらは葵とは全く違う人だった
他人になりきるという大変さを、どうにか習得しようと
こうして華原とともに、頑張っているが
中傷的で意味のわからないことばかりのため
葵はもう深く考えるのはやめにし、直感で演じることにしていた
「わかってると思いますが、そろそろ王が戻られる頃です。わたしに出来ることは伝えたつもりです。
あとは姫次第、よろしくお願いします」
芙蓉の、地元名産の甘い香りのするお茶を入れてくれた華原
それを飲んで休憩する葵
王がいつ戻るのかということは
妃たちに明確な日にちなどは入ってこない
そろそろ戻ってきてもおかしくない頃ではある
華原は、王が戻ってくる以上
いくら実家からの従者であっても
男という理由で姫の元に直接姿を
表すことはなくなるらしい
「芙蓉姫の消息は?」
華原は静かに首を横に振る
「そう・・」
葵は、お茶を一口飲んだ
「心細いな…」
葵の頭を優しくぽんと触れる華原
手にはお茶を持ったまま顔を上げる葵
「大丈夫です。あなたは頑張ってました」
整った顔立ちの華原
厳しいところもあるが、基本は優しい
そんな彼に褒められることが
なぜかくすぐったい気持ちになる
お茶に視線を戻した葵の頭をぽんと
もう一度華原の手が触れる
じんわりと温かい気持ちが葵に広がり
言葉にしなくても表情にそれは表れていた
今までいたのは仮の姫の部屋
今夜からは元々芙蓉姫が使っていた部屋に移り
大きめなふかふかのベッドに横になる
王とはどんな人なのだろうか
焼き付け刄的に身につけた
芙蓉姫の身のこなし、この世界の知識など
もし他人であるとバレたら?
どうなるんだろう?
色々と考えすぎてなかなか寝付けなかったが
用意されていた、いい匂いの香に包まれているうちに
徐々に眠気に襲われ
いつの間にか寝てしまっていた