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葵はため息をついていた
ぼーっと鍋の中を見ているが心ここにあらずな様子だった
「なんでまたここにいる?」
「教えてくれるまで何度も来ます・・」
魔女はそれ以上葵に声をかけることはなく
薬草の仕分けを行っていた
「私は疫病神だ・・ねぇ魔女さん、私はどうしたらいいのでしょう?」
「なにもせずにいるだけなら帰りなさい」
「いるだけで迷惑かぁ・・」
「・・・」
「守られる理由がない、守られるだけは嫌」
「だから魔法を学びたいと?」
「そうです..」
葵は顔をあげ、魔女の髪で隠れている目を見ように視線を合わせる
「魔法だけじゃない、この世界のこと、この国のことをもっと知りたい
この目で見て、この手で触れて、頭で理解したい。守られるのは性に合わない」
魔女に出された琥珀色のお茶をぐいっと飲み干す葵
カップを置く
あれ、この香り知ってる・・?
なんだっけ・・・???
飲み干してすぐに感じる違和感
ぐっとこみ上げる気持ち悪さ
あ、これやばいやつだ・・
葵は目を閉じてぐらっと体が揺れ、そのまま横たわった
「いい目…さて、お姫さんが一体どこまで出来る・・?」
魔女は腰を伸ばし
髪を引っ張るとかつらがとれ、豊かな長い黒髪のポニーテールをさらっと揺らす
老婆マスクをはきとると
黒曜石のようなきれいな黒い瞳があらわれる
葵は薄れていく意識の中で、その麗しい姿を見て
その言葉を聞いていた
ぴたんぴたんと規則的な水か滴るような音がする
目を開けて飛び込んできたのは、薄暗い洞窟のような石造りの場所
遠くに炎の揺らぎが見える
冷たい、寒い、薄汚れている、そんなところに横たわっていた
「起きたか」
高めに長い黒髪をポニーテールにした
妖艶な雰囲気を持つ女性が葵に声をかける
その瞳は黒く冷たさを感じるが、とても綺麗なその容姿と体つきに
葵は目が奪われていた
「綺麗・・」
思わずそんな言葉が葵から出ていた
短剣を向けられ、殺されてもおかしくない
葵に短剣を向ける瞳は本気だ
それを感じ取ってなお
その状況での第一声が相手を褒める言葉だったことに
葵自身驚きだった
その女性の瞳が少し揺れる
「お前、馬鹿だな。自分の状況わかってんの?」
「ここはどこです?あなた誰?」
「誰だと思う?」
「へ・・??」
こんな綺麗な人見たことない
葵が首をかしげると
「この世を知りたいのだろう?お姫さん」
そういった言葉は西の魔女の声で口調そのままだった
「え???ええ???」
「ついてきな!」
「は、はっはい!」
葵は言われるまま、女についていった
置かれている状況が何も読めないまま
頭がパンクしそうだった




