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きみに想う ~王の妃~  作者: 間宮沙紀
実家編
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王城にて


「黒の魔法が使われたのは明らかですが、専門士でも力の主の判明までは難しいようです」


銀縁のメガネを指で押し上げるようにして直し王に報告する陸


「お前が目印つけたはずだろ!俺の魔力を利用してまで!それはどうした?」

「あと一息のところで切れました」

「何してんだよ!」


はぁとため息をつき、翡翠色の目で陸を射抜くように見る翡翠だった


「いやいや、僕は"切れた"と言ったんですよ

"逃した"なんて一言もいってない」


翡翠の射抜くような視線は変わらない


「そんなカリカリとしないで下さい。芙蓉さまがいないと飢えた猛獣のようだ。まぁ王はお若いですからねぇ、同じ男としては分からなくもない。そうだ!白蓮さまがどうしても王にお逢いしたいと申しておりましたので、午後よろしくお願いしますね!」

「おい!!どういう事だ?!」


意味深な視線を王に送り、メガネをあげ

陸はサッサと部屋を出ていき、予定通り白蓮と会うことになった


「ごきげんよう。翡翠ジェードさま

今日はわたくしの部屋にお越し頂き、大変光栄でございます」


淑女という名の仮面を被った権力欲の塊のような女

翡翠は初めて会ったときから感じていた気持ち悪さを隠しきれずに

むっつりとした顔が正直に出てしまっていた

庶民として生きてきた翡翠は貴族の女が苦手だった


さっと音もなく翡翠に近づき小声で語りかける陸の姿がある


「顔!直して下さいよ。何をむくれているんですか?

芙蓉さまがいない今、王が何をしても咎める人はいません」

「お前…最低だな」

「最高の褒め言葉ありがとうございます」


普段笑わない奴が微笑みを浮かべるほど恐ろしいと思うことはないと翡翠は思った。

まだ陸の真意が読めない、なぜ今妃候補とお茶などする必要があるのか

それも苦手とする距離を置きたい白蓮相手に


「今日の為に取り寄せたお茶とお菓子ですの。翡翠ジェード様のお口に合えばいいのですが」


お茶の用意をするのは、白蓮付きの侍女たち


綺麗に盛られた赤い実を模した四角い砂糖菓子

花の香りが強い透明のお茶


翡翠は一口だけ口をつけ、一方的に話を続ける白蓮の話を聞かず席を立つ


「まだ業務が残っているため、これで失礼する」


そっけなくも王としての紳士な態度は崩さずにその場を翡翠は立ち去った

翡翠の立ち去る背を見つめ、淑女らしく何も言わず見送る白蓮の口元には笑みが浮かんでいた

その女の微笑みをメガネの男が逃すこともなくより悪巧みをしているかのようなニヤリと笑う様をみて、他の王付きの人達は口に出さずとも震えるほどの恐怖を感じていた


お茶の席を立ち数時間何事もなく普段通りに業務をこなした翡翠だったが

夕方となり今日の業務終了で部屋を後にしようと立ち上がると一瞬の立ちくらみを感じてよろけた


「あー。やっぱりですか」

「なんだよ?陸」

「やっと尻尾を出して来たか」

「おや?気付きませんか?自分の体調の変化に」


一瞬の立ちくらみはすぐに直った。特別変な様子もない


「医師に診せると大事になるので、赤の部隊の薬に詳しいものを呼びましょう」


陸が赤の部隊に手配をし、自室に帰る前に診察をされる翡翠

陸がどこからともなく手に入れたであろう昼間の茶葉も一緒に見せる


「これは、一過性の媚薬ですね。ただ…」

「ただ何だ?」


陸が赤の部隊の物に訊ねると赤の部隊の男は少々口を濁す


「一時的に魔力を抑制される薬でもあり、これは解毒剤を飲むとより魔力抑制が長く続くため解毒はおすすめできません。1番早く直すには一晩我慢するか、本能に従うしか…ありません」


赤の部隊の男を下がらせると翡翠の視線が痛いくらい陸に刺さる


「そんなに熱い目で僕を見ないで下さいよ

僕は今晩お相手など出来ませんよ」

「馬鹿野朗!!お前あの時には分かってたんだろ!分かっていて何故止めない?お前の目的は何だ?」

「王も気付いているでしょう?

あっちから行動に出てきたなら、迎え入れ乗るのが尻尾ならぬ首を掴むチャンスでしょう」

「だからといってお前は毒を盛られるの知っていて俺に飲ませ、そのチャンスをとってこいってか?

オレの貞操を犠牲にしてまで!」

「王になる前は結構遊んでいたでしょう?今更貞操の心配をするようなことはないはず」

「ふざけんなー!!!」

「まさか東の貴族がこんなに馬鹿だと思いませんでしたよ・・例の媚薬だって

予想通りの使い方をしてくる。どんな反応がでるのか、あなたが身をもって体験すれば

あとは証拠を押さえればいいだけのこと・・いいですか!白蓮さまに引きずられないようにお願いますよ!!」

「陸~~!!!!」


部屋を通り越し廊下まで、翡翠の怒鳴る声が響いていた




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