29
「確かに、このあたりの奴じゃない人が多いな」
アラビア風衣装に対し、街にはちらほらと洋装の人がいる
「いつもはこんなじゃないの?」
「うん。いても数人くらいなんだが…」
3人で歩いていると
角になっている道から突然女の人が勢いよく飛び出してくると目の前でグシャっと倒れた
すりむけたのか膝や手には血が滲んでいた
「大丈夫ですか?」
葵が倒れた女に近づき助けようとすると直ぐに立ち上がり、青い顔をしたまま3人の脇を通り抜け
今倒れたことが嘘のように走り去って行った
「何だあれ?」
「今の女の人、これ落として行ったんだけど」
葵が道から拾いあげたのは小銭入れだった
「届けてくるね、走れば間に合うかも」
「おい!こら!芙蓉!!」
走り出した葵を追いかけるようにして走る兄2人
古い建物に入って行った女に追いついた葵だが中には入らず、入口でピタッと止まる
「おい!芙蓉!いきなり走りだすな!どう見ても怪しい奴の後を追うな!」
薺が葵に注意をすると、中から声が聞こえてくる
「あっ…」
「は…っ…んっ」
ため息混じりの複数の女の吐息に入口の窓に映し出される半裸の男女のもつれ合う姿
蘭が葵の手から小銭入れを取り、建物の入口にそっと置き
薺が葵の手を引いてその場を離れた
街で馬を借りて薺と2人乗りをして屋敷まで強制的に戻された葵
「何してんだ、お前は!無鉄砲にも程がある!」
薺から正座をさせられ説教が入る
「いや、だってまさか…あんな現場に遭遇するとは思わなかったから」
「いや、だって…じゃない!
明らかに怪しい女の後を追うことは、自分から危険に飛び込むようなもんだ!」
「薺!親父に報告してきた!あと…なぜかもうこのことが芹兄の耳に入ってるらしい」
「早すぎだろ!どんな情報網持ってるんだよ!あの兄!」
薺が額に手をあて目を閉じ、蘭が苦笑いをする
「薺!蘭ー!」
「ほら来た!!」
蘭が素早く薺を盾にするようにして我が身を守り、芹から身を隠す
「何故お前たちがついていながら、芙蓉がそんなイヤラシイ場所に行く羽目になった?」
「不可抗力だよ、兄さん」
「芙蓉!お前は部屋に行ってなさい!」
「はい…」
薺の後ろで気配を消す蘭にチラっと視線で助けを求められる葵だが、ため息をついて諦め芹の説教を聞く様子の薺に、早く部屋へ行けと目で諭され、葵は部屋に戻った




