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葵は街に出たいと両親に申し出ると、1人歩きは危ないから絶対ダメだと
2番目の兄、薺と3番目の兄である蘭を一緒に連れて行くようにと準備を整えられた
芙蓉の実家はこのオアシスと呼ばれる街の高い位置にあり、この辺りを昔から仕切っていた名家である。家から街に出るには歩いても30分以上かかる
街にも近くの砂漠から飛んでくる砂が舞うことがあるため、頭をすっぽりと覆うような布を被り
なるべく露出は控えて白を基調としたふわりとしたアラビアンテイストの外出着を着せられた
葵の両脇には兄が歩く
「芙蓉〜なんで街まで歩きなんだよ?」
「そうだよ、馬使えば10分掛からないで行けるのに」
「ゆっくりこのあたりを見てみたいと思ったから」
「だからってよ〜何も歩かなくていいだろうよ」
「暑いわ」
葵の右を歩く薺が自分の顔を扇子で扇いでいた
「なぁ?芙蓉はあの王さまのこと好きなのか?」
左を歩く蘭が葵の肩に手を回して問う
「あんな綺麗な顔したヤツ他にいないもんな〜
オレが女なら確実に惚れてる!」
「兄さん!歩きにくい!」
葵の抗議など受け入れず、蘭はぴったりとくっついて歩きながら
まだ話は続く
「だって、オレ見てたもん。王都へと帰る王さま一向を切ない表情で見送ってる芙蓉を」
「切ない表情でなんて見てないもん!!」
「やっぱ顔だろ?俺も負けてないと思うけどな・・どうよ?俺は」
「蘭!芙蓉をからかうのも程々にな!それ、街の入口だ」
薺に注意されて葵から少し離れる蘭
街の入口には高いヤシの実に似た木が両脇に生え、まるで道を守っているかのように
立派に茂り道を作っている。その道の先の中央に門がある
門から中はぐるりと城壁で囲われて町が形成されているようだった
門から中に入ると
街には王都の城下とはまるで違う景色に、たくさんの人が溢れている
「わあ~!!違う国みたいだぁ~!!!」
きょろきょろとしている葵の服を引っ張る薺
「こら、はぐれるなよ!」
そして
両脇にボディガードかというように兄2人は葵を挟んで歩く
白い石が規則正しく敷き詰められた石の道路
白を基調とした大きな噴水
テントが張られた出店
西洋の服とアラビアな服を着た人たち
見事な刺繍の絨毯が色とりどり、町の壁やベランダから下がっている風景
あたりを見渡し、ため息が出る葵
「すごい、王都と全然違う」
「あぁ、ここは自由自治区だから。別な国みたいなもんだよな」
「自由自治区?」
「ローレインブルー国の領地でありながら王の支配を受けない独自の文化を築いてきたところ。
王都より隣の国に近いから、物流もそっちからのほうが多いし、全体的に隣の国の方が似てる」
確かに王都はどちらかというとヨーロッパの雰囲気に近い
石畳に赤レンガの建物、中世のヨーロッパのようなドレスが一般的であった
この西の自由自治区は、確かにまるで違う
芙蓉や華原の着ている服はアラビアン系だった理由がわかった
「あっ。これお前に似合うな!」
街の一角に開かれた露店で淡いピンク色の髪飾りを手に取り蘭が葵を呼ぶ
葵がくるっと振り向こうとした瞬間、後ろからドンと人がぶつかってきた
振り返る瞬間だったため、不意に掛かった重みで倒れそうになった葵を
薺が抱えるようにして倒れるのを阻止した
ぶつかった相手は何も言わずにその場を立ち去る
「あっぶねぇー!なんだあいつら?派手にぶつかっておいて何も言わずに去るなんて」
「大丈夫、ありがとう薺兄さん」
ぶつかった人が去った方向を睨むようにして見ている薺に葵が声を掛け
成り行きを見ていた蘭も葵に近寄る
「ごめん、俺が呼んだから大丈夫だった?」
過保護すぎる・・
そう葵は心でため息をつく
転んでもいないし、もちろん怪我もしていないが
より2人は葵から離れなくなった
「あれ?兄ちゃん達、オアシスの坊ちゃんたちか?」
「そうだけど、何か?」
機嫌の悪くなった薺は何も答えず、にこやかな外用の表情に切り替えた蘭が
声を掛けてきた露店の店主の話しを聞く
「最近、急激に王都方面からの人が増えてるんだよ。さっきのアレも恐らくそうだ!ここらの街の人間は噂してんだ、彼奴らヤバイものを持ち込む気なんだと!」
「ヤバイものって?」
「具体的に何ってことはオレは知らねぇんだけどよーあれ?あんた姫さんか?王都に行ったんじゃなかったっけ?里帰り?」
「うちの妹に何か用が?」
今まで黙っていた薺が店主をギロっと睨むと
ひっ!っと顔を強張らせながらそれ以上は何も言わずにひっこんだ為、3人もその場を離れた




