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一向が見えなくなった後、屋敷内の小さな部屋で両親はソファーに座り
葵は対面に座るようにして話をしていた
「お願いがあります」
葵の真剣な様子に2人も真面目な顔で話を聞いている
「私は芙蓉姫ではないけれど、外では芙蓉姫を名乗ることをお許し下さい」
「どうしてなの?」
「今、私は狙われている身です。その理由が分からない限りは正体を明かすべきではないと思います。
私が芙蓉であるのは家族にも王にも迷惑にならない最善策だと今は…そう考えます」
「そんなかしこまらくても、私たちはあなたの味方よ?」
「そうだ・・いつまでいてもかまわない」
父と母の顔は、やはり優しさに満ちている
「ありがとうございます・・
これは建前で・・芙蓉姫ではないと知っても・・娘として接してもらったことが
本当にうれしかったんです!
ただ私があなたたちを父母と呼びたかっただけ・・呼んでもいいですか?
お父さん、お母さんと・・」
母は葵の隣に座り直し葵を抱き寄せる
「俺たちは・・
芙蓉に似ているからとお前を芙蓉の代わりとしているのではないぞ。芙蓉が行方不明と聞いてもピンとはきてない。俺の娘だから何か理由があるのだろう、そこに娘のような困った娘が現れたのだ、親として面倒を見るのは当たり前だろう。それに我が子として育ててきた華原がお前を護ろうとしたんだ。親ならなおさら守ろうとするのは当たり前だろ?」
「お父さん、お母さんと呼んでもいいのですか?」
父も隣にきて葵を抱きしめる
「当たり前でしょう」
「当たり前だろ」
葵は2人に挟まれて涙が滲んでいた
自分を受け入れられてもらえたこと
それもうれしいことだが、芙蓉の代わりではないという言葉が身に沁みてうれしかった。
これまで気を張って芙蓉を演じてきた日々に芙蓉ではないと身を明かした雫や翡翠に対してもどこか身代わりであるという罪悪感のような気持ちを持っていたが
この世界に来て初めて、葵という存在が受け入れられた気がしたのだ
この世界で、また新たな自分になれそうだと思う葵だった




