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きみに想う ~王の妃~  作者: 間宮沙紀
実家編
27/42

26

トントンと部屋をノックする音がする

母が部屋を出て行ってから

そのまま座っていた葵が

扉を開けに立つ瞬間に、扉はもう開いていた


誰だろ?雫さんかな?


さらっとした茶色の髪

背丈は葵より少し大きいが小柄で

可愛らしい顔つきにふわっとした雰囲気を持ち

葵…芙蓉にそっくりな顔


「僕は芙蓉の弟の菖蒲(しょうぶ)です」



菖蒲はくすりと笑い葵の手を引き、ベットに座らせて自分も隣に座る


「僕、王族とか貴族とかキライだからお出迎えに行かなかったけど、すごいことになったみたいだね。

芹兄さんが王さまにキレたって…あなたは芙蓉じゃないんでしょう?」


葵の顔を覗き込むようにして左手を葵の前に持ってきているため顔の距離が近い。

葵は逃げられない体勢になる


「こんなに似ている他人っているんだね」

「菖蒲さんだって、お姉さんの芙蓉姫にそっくりじゃない!」

「あっはは」


突然腹を抱えるようにして笑いだした菖蒲に葵はボーゼンと菖蒲を見つめる


「僕の色仕掛けに反応しない人って家族以外初めて見た!あんた色気ないねぇー!」


まだ腹をかかえて笑う菖蒲

葵は菖蒲の顔をつまんだ


「姉に色仕掛けしてもしょうがないと思うけと?」

「にゃひいって、あんたふーよひゃない」

「姉をからかうなん早いのよ!」

「いててっ」


葵は自然と笑っていた、菖蒲の無邪気なペースにすっかり気を許していた


「ねぇ?名前はなんて言うの?」

「葵」


寝そべって天井を向いていた菖蒲がくるっと体の向きを変えて一緒に寝そべっている葵を見る


「あんた、芙蓉に似てるよ。顔も中身も」

「そう?」

「僕今日、ここで寝るね。おやすみ」

「え??ここで?」


布団の中に入ると同時に菖蒲は即寝してしまった


馬車に揺られ移動し、緊張もあったせいで疲れていたのか

菖蒲とのじゃれあいにより、さっきまでの心の重さも抜けて

結局葵もそのまま一緒に眠りについてしまった




朝になると


「何してんだー!」


という男の絶叫に近い叫び声とともに目覚めた


「えっ?え」


何が起きたのかと判断する間にも

絡みつく腕により起きることが出来ない

横にはぴったりとくっついた菖蒲の姿


「菖蒲!なんでお前ここにいるんだよ!」

「夜這いしたからに決まってんじゃん

芹兄さんこそ、朝から女の部屋を覗きに来た時点でおかしいと思うけど?」

「お前と一緒にすんな、俺はただ可愛い妹の顔を見に来ただけだ!いい加減離れろ!菖蒲!」


絡みつく菖蒲の間に入り話そうとする芹

芹の絶叫によって、父も起きて来た


「朝から騒がしいんだよ、おまえたちは」

「親父!菖蒲が芙蓉に絡みついていたんだぞ」

「羨ましい…父さんなんてもう10年以上一緒に寝てないのに」

「違ぇよ!バカ親父!問題はそこじゃねー!」


間に入った芹がぎゅっと抱き潰すようにして葵に触れる


「もう…やめてー。朝から一体何なのよ!」


葵が叫ぶと、騒いでいた男たちがシーンとなる


「やっぱり、芙蓉だ」


思いのままに叫んでしまった葵に対し、柔らい笑みで笑う父に

より強く抱きしめる芹、大笑いする菖蒲の姿に

芙蓉ではない自分を受け入れてくれた

やさしさと照れと温かさが葵を包むような雰囲気だった


「さて、母さんが朝ごはんの準備をしていたから行こう」


父に連れられて広間のような大きな部屋に向かうと、しっかりと整えられた翡翠の姿がある


「おはよう。早く席に着きなさい」


ぴったりと付いていた芹兄さんが離れ、葵は翡翠の隣に座る


「あの…」

「何?」

「翡翠が帰る前に話したいことがあるの」

「俺も。今日の昼には王都に戻らなくてはならないから、終わったら部屋で会おう」


カチャカチャとなる食器の音に、芙蓉家族たちの賑やかな声、温かい家庭料理

食べ終えた後、家族につきまとわれる前に葵は翡翠の部屋へとむかった


「昨日はごめんなさい」


翡翠と向き合い開口一番に葵は頭を下げて謝った


「なんで葵が謝るの?話しってそれだけ?」

「ち、違う。後先を考えずに自分のことしか考えてなかったことが悔しいの。

翡翠は色々考えてここに連れて来てくれたのでしょう?」


命を狙われている危険から、華原の死のショックを和らげる為、家族としての安心できる場所として

実家の問題については時期を見て慎重に行動しなくてはならないと以前に聞いたことがある。それすらも政治に関わってしまうから、それなのに今回無理をしてまで王である翡翠が実家まで付いて来てくれた理由は…


大事に想ってくれているからでしょう?

それは・・芙蓉を好いているから


「ありがとう」


じっと翡翠を見つめお礼を述べる葵に翡翠は何か言いたげな表情を一瞬だけ浮かべるも

すぐに表情は戻った


「それと、お願いがあります。雫さんは連れて帰って」

「雫は葵の護衛だ。危険がここにないとはいえないから…」

「自分の身は自分で守る、それにここには家族がいる。私の味方は多いから大丈夫よ」


「ごめん」


視線をそらし、一言そう呟く翡翠に

葵はこれ以上何を話していいかわからなかった


"ごめん" その意味はなに?


葵が部屋を去った後、翡翠に呼ばれた雫が部屋に入る

窓の外を見つめ、壁に寄り掛かる翡翠に声をかける


「翡翠さま?雫です」


数秒後に振り返り返事をする翡翠


「何をお考えです?心配なら手元に置いておくべきじゃありませんか?」

「・・雫、王都に戻るぞ」

「まだ油断出来ない状況で葵ちゃんの側を離れていいのですか?」

「どこにいたって今の状況では危険に変わりない。その危険を潰すのが俺の役割だ。その葵が雫を連れて帰れというならば・・変わりに雫には、危険を早く潰すことに力を貸してもらう」

「強い人ですよ、葵ちゃんは。けど強さを保つには弱い部分を隠し自分を深く押し込めている」

「俺には約束がある」

「うわっ!独占欲強っ!!」


小指を見て雫が驚きの表情をする

その約束の魔法は結ばれている相手になにかあればわかる仕組みとともに

相手も自分との信頼関係がないと結ぶことができない魔法だからだ


ふんと雫から顔をそらし、また窓の外を見る翡翠


「王さま!!言葉にしないと伝わないこともありますよ!!」


雫の言葉は翡翠に届いていたが、反応を返すことはしなかった


窓から見える景色は霧雨、砂漠に近いこの地では珍しい現象であり、葵の魔力であるこの現象の中

翡翠一行は昼には葵だけを残し、王都へと戻っていった


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