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客間には100人が一度に入れるような大きな部屋で
豪華なテーブルとソファー
南国特有の木がセンス良く飾ってあった
「ようこそお越し下さいました、翡翠さま」
「堅苦しい挨拶は抜きにしましょう、お久しぶりです。一度お会いしたことがあります。奥様」
「あの、男の子がこんなにも美青年になるなんてね〜びっくりよ。我が娘があなたに恋をする気持ちも分かるわ〜」
芙蓉と翡翠は幼い頃からの知り合いということは聞いている
母とも面識があったのか、砕けたような柔らかい雰囲気で話しをしている
「おい!お前!その男が芙蓉をたぶらかしたせいで、芙蓉が危険な目にあってるんだそ!」
「うるさいわ!あなた!」
バチンと音を立てて父の太ももを叩く母に黙る父
どうやらこの家の実権を握っているのは母らしい
「今回のこと、私が至らぬばかりにこのような事態になり申し訳ございませんでした。」
王としての品のある口調はそのままに
王としての威厳は捨て、立ち上がり深々と両親に頭を下げる翡翠
「華原のことは、城からの報告で聞いています
あの子のことは…王のせいではないと分かってます。息子と変わりなくここで育った華原の死を聞いて、心に穴があいたような気分ですわ。わざわざ、この地まで連れて帰って来てくれたことに感謝致します」
ぽろっと涙を流しながら頭を下げる母の姿に葵もつられて涙が流れた
「1日の移動でお疲れでしょう。今日はゆっくりとお休み下さい」
到着した時間はすでに夜だった
話しもそこそこに休むようにと準備を始めた母に翡翠が口を開く
「もう1つ謝らなくてはいけないことがあります」
「芙蓉のこと…」
翡翠が言わんとしていることを察した葵は翡翠の話しを遮った
「私からもお話があります!」
翡翠が葵を止めようとするが、葵は目で翡翠を止めて正直に自分の気持ちを今打ち明けようとする
「私は、芙蓉じゃありません!」
はっきりと言ったその言葉で
周りにいた、両親、兄達が動きを止めて葵を驚きの表情で見る
雫は、不安気な表情で葵を見つめ
王付きの護衛もびっくりしたように葵を見ている
「私は、芙蓉ではありません。
華原に頼まれて身代わりを頼まれた、別人です」
両親は黙ったまま話しを聞いている
翡翠も止めようとしても止まらない葵の様子を伺っているようだった
「私は、この国ではない別のところから来て倒れていたところを華原に拾われました。身代わりを頼まれて芙蓉姫になりすましていましたが、王にはすぐにバレてしまいました。今回の華原のことについて、こうして私が身代わりをしていることによって引き起こした可能性だってあるはずです!だから、私がこのまま芙蓉姫を名乗ることはできません。そして、ご実家で護られるなんてこと出来ません。ごめんなさい」
あたりはシーンと静まり返っていた
「芙蓉じゃない?華原に頼まれた?
一体何を言ってるんだ?じゃあオレの芙蓉はどこにいるっていうんだ?」
父が立ち上がって、翡翠に問う
「全力で探してますが、行方不明です」
「行方不明?」
母は顔面蒼白になり、父は翡翠に殴り掛かる寸前で2番目の薺と3番目の蘭が止めに入っている
護衛が翡翠の前に出たが、翡翠は護衛らを払い自ら父親の前に出て膝をついた
「芙蓉の行方不明も俺の過失です。申し訳ありませんでした」
今まで黙っていた長兄の芹が他の目を抜けて翡翠の前に立つ
「芙蓉は、お前のことが好きだから王都まで行ったんだ。お前は?芙蓉のことどう思ってる?」
「幼い頃は苦手でした、王になって出逢ってからは…何度も助けられました。
好きです。芙蓉のことが…大事です」
芹の長い足が翡翠の脇腹を強く蹴る
「ジェイドさま!」
周りの護衛が近寄ろうとするのを手で制して
芹にまっすぐに向き合う翡翠
「好きな女1人護れなくて、何が王だよ
なにが偉大なジェイドさまだ!!」
芹の暴走を母が止めに入る
葵は翡翠の側に身を守るようにして家族の前に立つ
「俺は王としての器もまだまだで、好きな女も護れない最低な男です。
これ以上、第2の芙蓉を作りたくない!お願いです。葵を預かって下さい」
土下座をし床に頭をつける翡翠
注目は一気に葵に向かって流れる
「こんなに芙蓉に似ているのに別人なの?」
母が葵に近づき頬を撫でる
「わかりました。この子は預かりましょう
そして夜も遅い、用意していた部屋に案内しますわ」
翡翠を立たせて、葵を連れ2人別の部屋へと通された
葵は翡翠に掛ける言葉が見つからなかった
自分の言いたいことだけをみんなの前で打ち明けてしまった
翡翠ならもっと上手く説明出来たはずだ
自分の行動に気をつけようと決めたはずなのに
結局、周りをかき乱すだけ…
自己嫌悪に陥っていると
1度部屋を出た芙蓉の母が葵に声を掛ける




