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芙蓉の実家行きはあっと言う間に滞りなく進み、ついに城を立つ日が来た
馬車に乗せられ
華原も一緒に実家へと帰ることになっている
翡翠も一緒だが、同じ馬車ではなく
護衛付きで馬での移動だ
芙蓉の実家は、王都から離れた
国の外れであり、馬車では移動に1日を要する距離にある
芙蓉が城を離れ、実家に戻ることとなり
妃争いも2通りの見解が出ていた
1つは、妃を降りるのではないか
1つは、愛するが故に安全を考えて城から出しゆくゆくは正妃となるであろうということ
馬車に揺られながら、窓の外を葵は眺めていた
馬車の中には雫もいる
ぼんやりと外を眺め口数が少ない葵に
雫も特に何をいうこともなく向かえ合わせに座っている
「ごめんね。雫さん
娘さんまだ小さいのに離ればなれになるなんて」
「夫がいるし、何かあったなら、転移魔法で飛んでいけるから心配しないで」
葵が実家にいる期間は決められてない
外の景色が王都から離れると自然豊かになっていき
実家に近くなれば、乾いた風が強めに吹いている
天気はやや曇りがちで今の葵のモヤモヤとした心を表しているようだった
「なぜ翡翠は城から出てほしいのかな?」
「葵ちゃんの安全第一を考えてのことじゃない?」
「側にいたいって言ったのに・・」
「あら、葵ちゃんは王様のこと好きなのね」
「好き??」
葵は自覚していなかった
これは恋心なんだろうか
雫に言われてもピンとこない
まもなく着くという知らせで窓を開けて外を見ると
街道からポツンと取り残されたような村が見える
椰子の木に似た大きな背丈の木
石造りの白い家々
乾いた風に音をたてるようにしてなびく草花
アラビア風な王都の人とは違う服を身に纏っている人たち
これが、芙蓉姫の実家…
これから自分はどうしたらいいのだろう
ガタンと大きく馬車が揺れ
到着を告げられ、雫にリードされて馬車を降りる
目の前には大きなお屋敷
出迎えには沢山の人が立っている
翡翠の側に並んで立つと
大急ぎで駆け寄ってくる人物がいた
「芙蓉〜〜!!」
肩につくくらいのストレートの茶色の髪を後ろに1本に結び、背が高く細身の体型
がしっと葵の身体を抱きしめるようにして抱きついた
「大丈夫だったか?お前も狙われたって!」
戸惑う葵を気にすることなく
抱きついたまま早口で話すこの男性
その男性の後から来た、白髪が混じった
品のあるおじさまといった雰囲気の男性が
同じようにして葵に近く
「芙蓉〜!こら!芹!オレの芙蓉から離れろ!」
芙蓉を巡ってのごちゃごちゃに巻きこまれ困惑していた葵だが
そんな男2人をスパンと勢いよく叩く女性が現れたことにより、その場を助けられた
「こら!あんた達。王の前でみっともないことしないで!
身内が大変失礼な姿を晒しました、申し訳ございません」
男2人を叱りつけた後に翡翠に向かって礼を取る女性
「いや、いいんだ。こんな事態になりこちらが謝らなくてはならない」
ふと女性は華原のいる棺を見て、寂しそうな表情を見せた
「わざわざ、この辺鄙な地まで王がお越し下さったのです。入り口ではなく、奥へどうぞ」
女性は翡翠やお付きのものたちを案内し
やや後方から、さっき囲まれた男たちと雫と葵が後をついて行く
「あんな男さえいなければ、芙蓉がここから出て行くこともなかったんだがな」
「まぁ、その話だけは親父と一緒だな
なぁ、芙蓉?あいつのどこがそんなにいいんだ?」
父と兄は葵の両脇を歩き、兄の芹は葵の肩に手をまわしている
以前に華原から芙蓉姫の家族構成について聞いたことがある
確か…父、母、兄3人に弟1人
兄達は妹である芙蓉を大変可愛がり、父もまた1人娘を可愛がっていると
迎えに来たのは、おそらく父と1番上の兄だろう
父と兄の間に挟まれ、しどろもどろとなっていると、今度は2番目と3番目の兄が合流する
「あっ、芙蓉じゃん。なんか王都に行って垢抜けたか?」
「王さま付きで帰って来たんだって?」
一気に大勢に囲まれ、緊張した葵に
一歩前を歩いている翡翠が後ろを振り返り
手を引いて自分のほうへと引き寄せる
葵は突然の翡翠の行動にびっくりし、何の反応もできず
腰を抱かれる形で包まれる
父と兄達が翡翠を睨んでるし
母は「仲良くしているのね」って微笑んでいた
葵は翡翠の考えていることがさっぱりわからないまま
母の誘導により、広い客間に通された




