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この日の夜は
王が葵の部屋に来るという知らせが入った
翡翠の姿を確認した後、翡翠に頭を下げ、葵に向かって
にこっとした笑みを浮かべ雫は部屋を出ていった
翡翠とは華原の事件後初の顔合わせだった
今回の事件のことで
色々仕事も溜まっていることが多いのだろう、全体的に翡翠に疲れが見えた
「雫さんって、あの体型で子持ちなんでしょ?
信じられないくらい、スタイルいいよね?」
「あー確かに
産休明けだ。仕事でなかなか家に帰してあげられないのは悪いと思ってる」
翡翠だって毎日の仕事の他に今回の事件を追っているんだ
誰がどうして華原をこのような目に合わせたのか・・
今すぐにでも聞きたい衝動をこらえ、別の話題を振ることで心を一度落ち着かせるも拳に力が入る
翡翠が頭をうなだれるようにして謝る
「ごめん、俺がもっとしっかりしていれば
雫にも葵にも…華原のことだって」
葵は翡翠の目の前に立ち
座っている翡翠の目線を合わせるように屈み込み顔を両手で包み込む
「王さまがそんな弱気では誰もついてきませんよ」
頬をぎゅっと引っ張り離す
「いてっ」
翡翠は頬を撫でた
「私、今回のことを許さない
もし私が関係したことで華原の死があったとするなら。私は私の役割を責任もって成し遂げる
私が出来ることは何でもするし協力もする。泣いてるだけではどうにもならない!だから教えて。何が起きているのか」
「芙蓉と似てるけど、やっぱり違う・・」
葵に聞こえないような小さな声で翡翠はつぶやく
「私も何かの役に立つ??」
じっと真剣なまなざしで翡翠と目を合わせる葵
「抱きしめていい?」
「はいー?」
目の前の対面に座る葵を
座っていた椅子を下りて正面からぎゅっと抱きしめる翡翠
小柄な葵はすっぽりと翡翠に抱きしめられ
されるがまま状態でいる
「ありがとう」
そう言って離れる翡翠に
どきまきとする葵
え?なんでハグ??
翡翠はなんてことないように離れていく
それが寂しそうで離れがたいと思ってしまい
今度は葵から翡翠に後ろから抱き着いた
「ごめんね、色々ありがとう。こうして来てくれてうれしい」
翡翠は葵から離れて向き合う
ポンポンと頭をなでる
その手つきも表情も心配と優しさを感じられる
その気持ちが嬉しくて
「葵ちゃんは強いわね・・」
雫に言われた言葉を思い出す
私は…強くなんてない
心細さを埋めるために、何かに没頭したかっただけ
こうして優しくしてくれる翡翠の顔を見て
自分に敵意がないと分かった上で
ぐちゃぐゃな気持ちを落ち着かせようとする
打算的な女…
「もう少しここにいられる?」
ふいにそんなことを口にしていた
部屋を出ようとする後ろ姿の翡翠の上着の裾をぎゅっと掴んで
潤んだ瞳で行かないでとおねだりをする葵に
ぼそりと翡翠が呟く
「天然小悪魔・・」
翡翠は自身の額に手を当て
部屋を出ていくことをやめた
「あのさ、別に一緒に寝てとは言ってないんだけど」
翡翠は2人が寝ても十分な大きさのベッドに横になっている
「離れたくないって言ったでしょ?」
「う・・言ったけど、一緒に寝るとは言ってない!
私ソファーで寝るから!!」
「ほら!いいから」
ベッドから起き上がり移動しようとすると
ぐいっと翡翠に引っ張られ、ベッドになだれ込む葵
「何もしないよ、してほいなら別だけど」
「・・っ!!ここから先に来ないでよ!」
枕でガードもとい壁を作り、翡翠と距離をとり
結局一緒のベッドに入った葵
「おやすみ」
翡翠は寝息をたてすぐに寝たようだった
なんて寝つき早いの?
ドキドキしてるのは私だけ?
「ごめん、本当は一人になるのが怖かったの・・」
寝息を立てる翡翠のほうを見て葵は小さく声をかけた
そして、葵は寝返りをうち、翡翠に背を向けるのだった




