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きみに想う ~王の妃~  作者: 間宮沙紀
寵姫として
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翡翠にはそれからしばらくの間会っていない

白連たち妃も直接的に何か絡んでくることもなく

ただただ日々は過ぎていくばかり


そんな中

翡翠から葵に部屋に来るように誘いがあった

外が日暮れて橙色から深い藍色にあろうとする時間帯

城の廊下が松明で彩りはじめ

揺れる炎が幻想的に見える

女官の案内で扉まで着くと

もうそこの女官の姿はなく

葵は扉をノックすると

王の服ではなくラフな質素な服を着た翡翠の姿がある


「そんな恰好では目立ってダメだな」

「えっ?」


じっと葵の服装をチェックすると葵の手を取り

少年の笑みを浮かべている


「今から街にでる!」


露店で一般的な庶民服を値切って

買い上げた翡翠は

葵に着替えるように服を渡す

葵はカーテンで仕切られた店の奥で

着替えながらカーテン越しに翡翠に話かける


「町を見てみたいって言ってたから・・」


確かにこの前の夜に話した内容かもしれない

本当に連れて来てくれるなんて思ってもいなかった

葵は着替え終わると

カーテンを開け、翡翠に向き合う


「ごめん、これどう着ていいかわからない」


中途半端な着替えで出てきた葵をみて

翡翠は少し視線を逸らす

着替えを手伝ってもらった


「まずは・・ご飯を食べにいこう」


そういいながら翡翠は、店をでて葵の少し前を歩きだした

時刻はもう夜になっており

町の店は夕食や酒を飲む者たちでにぎわっている

見たこともないところが興味深くて

ついついキョロキョロしてしまい

前を歩く翡翠を見失いそうになると

自然に手を引いてくれる翡翠

ただ、はぐれないようにしてくれているだけだとわかっているのに

繋いだ手が何故か恥ずかしく、嬉しかった


「ここの店の肉は美味しいんだ」


翡翠は選んだ店はかしこまった雰囲気ではなく

町に溶け込んだ大きな大衆食堂といったところだろうか

平民が多く、翡翠が王にも関わらず特別扱いもしなければ

一目置くこともしない

陽気な音楽に明るい笑い声がたくさん聞こえる


「居心地がいい場所だね」

「あぁ、もっと仕事が減ればここにも来れるのに・・」


ふと寂しそうな顔の翡翠に気付いたが葵は気づかない振りをした


「どれが美味しいの?」

「これと、これ、あーこれもいいな」

「そんなに食べれる?」

「芙蓉は・・あ。葵は・・」

「ストップ!私は芙蓉よ。どこの女と間違えているか知りませんけど」


つーんとした顔でそっぽを向くと

近くの飲んでいる男たちが笑っている


「兄ちゃん!可愛い彼女連れで他の女の名前出すようじゃ、まだまだだな」


翡翠を王とは気付いていないのだろう

笑いとばしながら、翡翠の背中をバシバシと叩き

酒の入ったジョッキを持ち他の席へと移動していく


「ほら、どこで誰が聞いているかわからないんだから

私は芙蓉よ。間違えないで」


葵は声をひそめながら翡翠に注意すると

翡翠はまいったと額に手を当て


「ごめん。芙蓉」


と謝り、タイミングよく来た注文の品を食べる

葵も城の宮廷の味付けとは違う食事を楽しんだ

満腹になった二人は

夜まで開いている夜市へと向かった


「すごい。食べ物やお土産やゲームまで道に一色線に並んでる」

「ここは、城下で一番の夜市だから」


葵の足がぴたっと一つの露店の前で止まる

装飾品を扱う店に一部文具などもおいてある店


「翡翠、お願いがあるの・・」


葵は上目づかいで翡翠を見つめる


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