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夜になり
翡翠が来ると分かっていて寝る訳にもいかず
葵は机に向かっていると
部屋のノックする音が聴こえる
「はい」
返事とともに翡翠が部屋に入ってくる
ソファーに座る姿を見ると
表情に疲れが見える
「すみません。呼びだしてしまって…」
「あぁ、そんな噂になっていたなんて知らなかったから…何かしてんの?」
机に広げたものを見て翡翠は笑う
「子ども向けの読み書きの本?」
「私は今、自分らしく生きていこうと思いはじめているの!
芙蓉姫がどんな人なのか、王がどんな人なのか自分の目でそれらを知りたいと思ってる」
「ぷっ」
翡翠は腕で顔を隠すようにして笑いだす
「なんで笑うのよ?」
葵は笑いだす翡翠の意味がわからない
「だからこうして夜に呼び出したの?」
「へ??」
「俺を知りたいから?誘ったってこと?」
翡翠は立ち上がり葵の前に立つ
背の低い葵は翡翠を見上げる形になり
翡翠が葵の耳に触れ、顔を近づけてくる
葵は、思わず後ろに下がろうとすると
翡翠が顔を隠さずに笑いだす
「あはは」
翡翠は机のところにある椅子に座る
「華原から寵姫としての誘いだと聞いたんだけど、予想以上に面白い!」
「はぁ?華原から?寵姫としてのお誘い?そんなわけない!!」
華原め!
どんな言づけしたというんだ?
葵が怒っていると翡翠は柔らかく笑う
「抱かれたいわけじゃないと・・」
「当たり前よ!」
葵はぎゅっと自分を守るように抱きしめる
「私はただ噂が心配だっただけ・・」
笑い顔から、ふと疲れた表情をみせる翡翠
「芙蓉姫の手がかりは?まだ?」
「調べてるけど、手がかりは何も掴めてない」
それから葵と翡翠は色々な話しをした
芙蓉との出会い、城の外の世界、葵の世界について
気づけば眠らないまま夜が明けようとしている
朝日が射して赤く空を染め始める頃に
翡翠は葵の部屋を去っていった
葵は眠りたかったが
眠りにつく前に女官が部屋を訪れ着替えをし
完全に陽が昇った後に華原の元へと向かった
「華原!どういうことよ?私から誘ったような言づけを頼んだ覚えはないけど」
「これは、芙蓉さま。
昨夜は久々の王の起こしで熱い夜を過ごされたのですか?目が充血されてますよ?」
冗談も真顔でいう華原に葵は無性に腹が立った
「もういい」
そう言って帰ろうとする葵を華原が呼び止める
「芙蓉さまの聡明な判断で噂は消えるでしょう」
確かに、王は部屋で一夜を過ごした
芙蓉としての役目は果たしている
だけど
何かが葵の中に引っかかるものが残る
これが何かを知ってしまうのが怖くて
深く考えてはいけないように思えて
葵は部屋へと戻った
窓際に座ると
外のきれいに整えられた庭園が見える
ふらっと誘われるように葵は外へと向かった
さすが城の庭というべきか
誰かの手で綺麗に手入れをされた庭には
季節にあった花々が咲いている
普段、花になど興味を示すことのない葵だが
ふと引き寄せられるような花の香りに誘われ
しゃがみこんで花に手を伸ばす
近くにいる庭師らしき少年に断りを入れてから
その香り高い花を一輪部屋へと持ち帰って
窓際の机に一輪飾った
力強く、綺麗に咲く花・・
「わたしもこのくらい強くいなければ・・」
昨夜ほとんど眠れなかった葵はそのまま
机に顔を伏せて眠っていた




