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何日かたって。トントン。
「サナさん、いっしょに山菜とりにいかない?ね、いいでしょ?ね?」
ノック音のしたげんかんをあけてみると、立っていたのはにこにこ顔のミレイちゃん。
「山菜とり?」
「毎年この季節に、村のみんなで山に山菜とりに行くんですよ」
レイさんが説明してくれた。
「サナさんもいっしょにどお?きっと楽しいよー!きゃはははっ」
「・・・じゃあ、いってみようかな」
というわけで、レイさん、ミレイちゃんと、そしてそっぽをむいてるロクトくんとつれだって、村の広場まで来てみると。
「うわあ、たくさん集まってる・・・」
三十人、いや、四十人くらい?レイさんはわたしの事情は話してくれたって言ってたから、この村の人たちはもうわたしの正体を知ってると思うけど・・・。
「緊張しなくても大丈夫ですよ。あなたが悪いことをするつもりでここに来たわけじゃないことは、みなさんわかってると思いますから。面とむかって悪く言う人はいないでしょう」
「はい・・・」
でも、心の中でどう思われてるかは、別の問題だよなあ・・・ちらちらとこちらを見る人々の目が、やっぱりどうしても気になっちゃう。
ミレイちゃんたちはしきりと村の女の人たちに話しかけられていた。
「山はあぶないから、くれぐれも気を付けてね。ミレイちゃん、ロクトくん」
「ぜったいにだれか大人の近くにいるんだよ」
「・・・よけいなおせわだよ」
そっけない返事をしたロクトくん、またミレイちゃんにこづかれちゃった。
「みなさんずいぶん心配してくれてるんですね、あの二人のこと」
「聞いた話では、昔この村で大きな災害があってね。そのとき村を立て直す中心になってくれたのが、若いころのあのふたごのお父さまだったそうです。あの子たちのお父さまもふくめてみんなががんばってくれたから、この村は立ち直った。・・・前にも話したように、そのお父さまは少し前に事故で亡くなってしまいましたが」
「そっか、それでみなさんで大切にめんどうみてるんですね」
まもなく集まったひと一人一人に、せなかにせおうかごが配られた。
「さあ、山菜とり、しゅっぱーつ!きゃはははっ」
・・・というわけで、みんなでぞろぞろ歩きはじめたわけだけれど。
当たり前なんだけど、ただひたすら森、森、森。木、木、木。特別大きな目立つ木があるわけでもないし、つまり道の目印になりそうなものがなんにもない。
なんか、ずっとおんなじところをぐるぐるしてるようなかんじがする・・・へたをしたら道にまよいそう。そんな山の中を、村の人たちはときどきひょいとせなかのかごに山菜を入れながら、とまどうことなく進んでいく。すごい、やっぱりなれてるんだろうな・・・。
とにかく、レイさんたちからはなれないようについていかなきゃ。